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銀輪の死角:「自転車は歩道」東京都の方針に疑問の声

 警察庁が「自転車は車道」通達を出したのに対し、東京都は車の交通量などを理由に自転車に歩道を走らせる姿勢を継続している。しかし、都の方針には、危険にさらされる歩行者だけでなく、自転車利用者からも疑問の声が上がっている。【馬場直子】

 ■歩行者

 東京都文京区の都道白山通り。片側4車線で交通量が多く、周囲に東京大や高校が並び学生らが行き交う。歩道は中央に白線が引かれ、自転車と歩行者の通行を分けているが、あまり守られていない。

 近くに住む元大学教授の男性(70)は持病のため酸素ボンベをキャリーバッグのように引いて歩く。歩道で自転車に引っかけられることも多い。特にすり鉢状の底になる春日町交差点は猛スピードで下ってくる自転車が怖い。

 後ろから自転車に衝突されたこともある。「何をするんだ」と怒鳴ると、自転車の男性は「あの『標識』が見えないのか」と返した。路面標示には「自転車は車道寄りへ」と書かれ、歩道上での自転車の通行路を指定していた。歩行者がいなければ「状況に応じた安全な速度」で走れるものの基本は徐行だ。

 元教授は「できれば自転車レーンを設置してほしい」と訴える。都の方針については「最悪だ。自転車は車道が原則なのに、歩道走行が当たり前と勘違いさせる」と憤る。

 ■自転車利用者

 千葉県松戸市の村上典弘さん(35)は墨田区の会社まで片道16キロを自転車で通う。1時間弱、もっぱら車道を走る。歩道は通勤・通学時間帯に歩行者であふれ、車道の方が早くて便利だ。

 ただ、途中の国道16号は路肩の排水溝のふたで走りにくく、駐停車を避けるため少しでも右に出ると車のクラクションが鳴る。数年前、突然左折した車に突っ込んだこともあったが、幸いけがはなかった。「現状で『ママチャリ』(買い物などで使う自転車)は怖くて走れないだろう」と思う。自分も緊張感を持つが、それでも車道上の走行空間整備を最優先してほしい。「車道を走りやすく整備したら、自転車に乗る人はもっと増えるはずだ」

2012年1月6日

 

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