「増税できれば税収減ってもいい」が財務省、高橋洋一氏が暴露

 元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏は24日、「日本経済復活の会」で講演し、財務省の増税志向は権限拡大欲から来ることを暴露。わが国の財政は破たんしようがなく、日銀引き受けは例年通り30兆円規模でやれることを説明した。

財務官僚の行動原理を説明する高橋氏(2011.11.24、高橋清隆撮影)

 高橋氏は野田政権を「増税一直線内閣」と断定。「財務省内の増税好き官僚は、デフレ好きで円高好きが普通だ」と分析した。景気が低迷している限り、税率引き上げの口実がつくれるからだ。

 一般国民には本末転倒に映る。増税すれば景気が低迷し、税収が減るからだ。しかし、財務官僚の最大の関心事は権限の拡大だという。最も好むのは消費税だが、この標準税率を上げれば例外措置が出てくる。どの業界に軽減税率の恩典を与えるかどうかは財務省の胸三寸というわけである。

 「この方式では例外扱いを受けたい産業界が陳情に来て業界への権限が強まるし、他省庁も裁量が増えて喜ぶ。だから財務官僚は、増税できれば税収なんか減ってもいいと思っている」と高橋氏は明かす。

 わが国は20年近くデフレが続く。緊縮財政を繰り返した結果である。巨額の財政赤字がその理由にされてきたが、国債に対する保険であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の利率はわずか1.1%の低水準。ギリシャの91.17やポルトガルの10.7、スペインの4.85と比べても驚異的な信用度だ。「これ以上国債を発行したら、円の信認が失われる」との言説がデマであることが分かる。

 「わたしは『財政破たんだ』『国家破たんだ』という人に聞くんです。『あと何年くらいでつぶれるんですか』と。数量的な議論のできない人は『ああ、うそです』でおしまい。『もうすぐに危ない』という人には「CDS1.1%ですから、ぜひ受けてみられたらいいですね」と言います」

 高橋氏によれば、財務省は2002年ごろにムーディーズが日本国債をボツナワより低く格下げしたとき、財務省もさすがに怒って抗議文を出した。そのとき財務省は、「先進国で自国通貨建て国債はデフォルトリスクがない」と主張したという。「わたしはこのときの言い分を持ち出して、『じゃあデフォルトはないでしょう』と返します」と高橋氏。

 東日本大震災の復興財源については、12兆円あまりを所得税の増税や法人税の減税幅縮小などで賄おうとしているが、高橋氏は日銀引き受けを主張。毎年10〜20兆円程度引き受けてもらっていると証言した。日銀は常に80〜100兆円の国債を持っていて、その年償還になる分を同額買い入れないと、金融引き締めになるからだ。

 「理財局の担当者が日銀に電話して、『ちょっと増やして』とやれば増えます。『分かってんだろ』『分かりました』とあうんの呼吸でね。財務省と日銀とは主従の関係なんです。『日銀引き受けは禁じ手』と言われるとグサッとくる。わたしは毎年やってましたから」と吐露した。

 今年度の予算総則には30兆円が明記されて国会を通っている。うち、12兆円が日銀に引き受けられ、まだ18兆円残る。高橋氏はこれを復興債の償還財源に充てよと主張する。

 「これを日銀に引き受けさせれば、復興も進むし、デフレも円高も解消する。人の弱みにつけ込んで増税など、最低だ」と両断した。

 高橋氏は小泉政権下で竹中平蔵経済財政担当相の補佐官となり、安倍内閣で内閣参事官を経て2008年に退官。『さらば財務省!』で省内の慣行を暴露するとともに政府紙幣の発行を主張。窃盗容疑で取り押さえられた後は政府紙幣を口にしなくなった。

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