「子どもたちの映像を見て、救われました」――これはYouTubeに投稿されたある動画に対してのコメントだ。
その動画に映っているのは幼い兄妹のじゃれあう姿。コメントは、マタニティブルーの最中で「未来に希望が持てない」と感じていた女性からのものだった。子どもたちの屈託のない笑顔が、一人の女性を前向きな気持ちにさせた。
きっかけは「おなら」
冒頭の動画を投稿したのは、都内でIT系企業に勤務する川間慎太郎さんだ。5歳と3歳の子どもを持つ「イクメン」で、現在では子どもの動画を週に2、3本程度YouTubeに投稿し、育児動画ブログにまとめている。時系列に並ぶ動画は、まさにアルバムだ。
「もともとは、他人に見せようとして動画を撮り始めたわけではなかった」と川間さんは話す。
第一子が生まれた当時、川間さんは仕事が忙しく、子どもの寝顔しか見られない有様で、仕方がないので妻に日中の子どもの様子を動画に撮ってもらっていた。
生後半年経ったある日、子どもがおならをした動画を妻が撮ってきた。見てみると、とても面白いと感じたので、「ちょっとこの動画をネットで公開してみよう」とやってみた――それが動画投稿の始まりだった。
この時公開した「おならしてニッコリ」という動画は、すでに100万回以上再生されている。
カメラはリビングの真ん中に
家のリビングの真ん中にカメラを置いてあるという川間さん。常に手の届くところにカメラを置いておく。「シャッターチャンスを逃したくないんです」。すべては、子どものとっておきの瞬間を残すための努力だ。
夫婦で協力することもある。最近この歌を歌っているな、と気づいたら、夫婦で情報を共有しておく。子どもが自然に歌いだすのを見計らって、その時そばにいるほうが動画に収めるのだ。
子どもの動きは予測ができない。いいものを狙って撮れるとはかぎらないので、とにかく撮りまくるしかないのだという。
「Cute」――コメントの半数が外国から
そこまでして動画を投稿するのは、「自分の子供を見て『癒される』「(兄妹の)仲が良くていいね』といわれると嬉しくなってしまう」からだと話す川間さん。海外からのコメントが全体の約半数で、「Cute」「lol」(笑いを表すスラング)などの文字が並ぶ。逆に、現実の友人にはほとんど見せていないのだとか。
視聴者からの反応がいいのは兄妹が一緒に遊んでいるものや、妹がアップで映っているものだという、また、「トーマス」「プラレール」などのワードが入っていると、ほかの動画の関連動画として表示されやすくなるようで、再生回数が増えるのだという。「トーマスレッツゴー大冒険DXの練習」という動画も、100万再生を超えてしまった。
子どもが小さい時期は、本当に短いから
川間さんは、この動画ブログの存在を子どもには教えていないし、これからも教える気はないのだという。
「子どものためと言うより、自分が忘れっぽいので(YouTubeへの投稿を)やっています。子どもが小さい時期というのは本当に短いですから…」
子どもがもう少し大きくなったら、今までの投稿はそのままにしつつ、新規の投稿はやめてしまおうと思っているそうだ。「いつか子どもが気づいた時、『こんなに世話してやったんだよ』と言ってもいいんですけれどね」。川間さんはそう言って破顔した。
(相馬留美)