昨年12月21日、日本の格付け会社の最大手である「格付投資情報センター(R&I)」が、日本の国債を最上位の「AAA」から「AA+」へ一段格下げしたことが話題になった。
これはあくまでも「警鐘を鳴らした」程度のことだというが、経済評論家の須田慎一郎氏は、2015年にも危機が訪れるのではないかと予測する。
「国債の買い手である銀行や郵便局、保険会社など大手機関投資家の買い余力が限界に近づいているのです。彼らが買えなくなれば国債価格は暴落し、金利は上昇し、日本は早晩、債務不履行――つまり破綻を迎えることになる。その限界は15年、16年にも訪れるのではないかと考えられます」
では、もし実際に財政破綻するとどうなるのか。第一生命経済研究所の永濱利廣氏がこう説明する。
「1997年に経済危機を迎えた韓国のケースを見ると、まず金利と物価が上昇し、通貨の下落、日本でいえば円安が起きます」
物価が上昇するということは、相対的に手持ちのお金の価値が下がるということ。つまり、インフレだ。だが意外なことに、インフレは必ずしも悲観的ではないという。
「円安になれば輸出産業の競争力は増すので株価が上がり、企業業績も上がります。となると当然、雇用も増え、最終的には給料も増えるという流れになると考えられます」(前出・永濱氏)
円安やインフレにより打撃を受けるのは、資産を多く持つ富裕層であり、むしろ資産が少ない若者たち現役世代にとって円安は追い風になる可能性すらある。経済評論家の山崎元氏は、「若者よ、恐れるなかれ」と、その理由を説明する。
「財政が破綻したからといって、国がなくなるわけではない。それに、インフレで得をする人と損をする人がいるとすれば、若い人は得をするほうです。今あるお金の価値が下がるわけだから、すでにお金をたくさん持っているよりも、破綻後に現金を稼ぐことができる人のほうが将来的には“ブルジョア”だということです」
もちろん、そこに至るまでには「超円高&デフレ」から、「超円安&インフレ」へと急激に移行する転換期がある。財政破綻直後は、失業率が大幅に悪化し物価は上昇、給料もすぐには増えない。永濱氏によれば、1990年代後半の韓国のデータを参考にすると、これらの数字がある程度安定するには1年半程度かかる見込みだという。この“地獄の季節”を乗り切れた若者が、国家破綻後にブルジョアになれるということだ。
(取材/頓所直人、木場隆仁)
■日本が財政破綻すると貯金、仕事、生活はどうなるのか?Xデー・シミュレーション。週刊プレイボーイ3・4合併号『超円高&デフレ→超円安&インフレ 地獄の転換期はこう生き抜け!』