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米金融当局、ボルカー・ルール規制案を公表


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 米金融規制当局は11日、銀行によるリスクの高いプロプライエタリー(自己勘定)取引の禁止などを定める「ボルカー・ルール」の施行規則案を公表した。一般意見を来年1月13日まで募る。

Bloomberg News

「ボルカー・ルール」という名前の元となったボルカー元FRB議長

 ボルカー・ルールの下では、銀行は2012年7月21日までに自己勘定取引が禁止され、取引執行のため外国関連会社を使うことも禁じられる。禁止された自己勘定取引を行っている投資会社のポジションを清算するため、2年間の移行期間が設けられる。

 昨年議会を通過したドッド・フランク法(金融規制改革法)では、自己勘定取引によって銀行自身と金融システム全体をリスクにさらすことを防止する方針が決まった。これを受けて規制当局は過去数カ月間、規則の詳細を作成していた。規則はヘッジファンドやプライベートエクィティ(PE)ファンドとの関係の大半も制限している。

 しかし、施行規則案では一部のケースについて、こうした自己勘定取引禁止を免除している。例えば、引受業務や値付け業務、そしてリスクヘッジがそれだ。規則案は298ページに及ぶ複雑なもので、規制当局は383項目の質問を掲載、関係業界や一般市民にコメントを来年1月13日までに寄せるよう求めている。

 これに対し、銀行業界団体は、発表された規則案は履行するのに時間がかかるし困難だと述べ、業界の収益性を低下させると批判している。

 例えば米国銀行協会(ABA)のフランク・キーティング会長は「この規則案はあまりに膨大で複雑であり、実施不可能で、顧客サービスと国際競争の能力を一層損なう」と批判し、「規則案は顧客にサービスする銀行の能力を損なう恐れが極めて大きく、銀行収益の多様性が打撃を受け、その結果リスク源を減じるどころかかえって拡大するだろう」と警告した。

 また証券業・金融市場協会(SIFMA)のティム・ライアン会長は「規則案の制限の結果、市場の流動性は減じ、投資は抑制され、信用のアベイラビリティーは制限され、企業の資本コストは上昇するだろう」とし、「それは経済成長と雇用創出を封じ込める累積効果をもたらす」と警告している。

 しかし、ボルカー・ルールの支持団体からは、規制が生ぬるいと全く対照的な批判が出ている。銀行取引規制強化を求める団体「金融改革を求める米国人」のリサ・ドナー事務局長は「今回の規制案は、ボルカー・ルールが達成できる、あるいは達成すべき内容に到達していない」とし、例外規定が余りに多いと指摘。これは「銀行慣行と銀行文化を変革するどころか、銀行に行動の自由を与えるほうに傾いている」と批判した。

 施行規則案は連邦準備理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、そして通貨監督局(OCC)によって公表された。証券取引委員会(SEC)は12日、規則案を検討する見通し。商品先物取引委員会(CFTC)は後日、同様の規則案を公表する見通しだ。

 ドッド・フランク法では銀行の活動制限が盛り込まれ、提唱したポール・ボルカー元FRB議長の名前をとってボルカー・ルールと命名された。同法の審議の過程で、ボルカー氏は銀行の自己勘定取引事業の過度のリスク志向が金融システム全体を脅かす恐れがあると主張した。同ルールの施行規則案では、自己勘定取引は期間60日以下の取引と定義されている。もっと短期の大半の取引について銀行は、こうした取引の正当性を規制当局に説得する負担がかかる。

 規制案は簡単に利益を上げることを狙った取引を禁止しているが、ヘッジ取引を免除したことは、ボルカー・ルールが防止を狙った銀行のリスク行為を認めるものだと批判が出ている。これは、銀行が例えばリセッション(景気後退)リスクなど、ポートフォリオリスクを広く定義する可能性があるためだ。規制当局は、徹底した順守プログラムによって、銀行がヘッジの名に隠れた自己勘定取引をしないようになるだろうと述べている。

 銀行の自己勘定取引デスクはヘッジファンドのように行動し、株式、商品などの資産でリスクの高い取引をしていた。政府監査院(GAO)7月の報告によれば、2006年6月から10年12月までの13四半期間の銀行持ち株会社大手6社の自己勘定取引収入は156億ドル。しかし、金融危機の際には同取引は158億ドルの損失を出し、それまで4年半の利益が吹き飛んだ。

 ボルカー・ルールは既に、大手米銀で大きな変化を引き起こしている。幾つかの銀行は自己資金で取引するトレーディングデスクを閉鎖したし、同ルールの適用されない中小会社に転職したトレーダーも少なくない。

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