首都圏の多くの小学生が修学旅行で訪れる栃木県日光市に対し、観光名所での放射線量検査や宿の食材の産地公表などを求める動きが出ている。どうしたら保護者らの「安心」を得られるか、同市や学校関係者は頭を悩ませている。
昨年末、感度の高いシンチレーション式の放射線測定器を携えた横浜市教育委員会の担当者が、日光東照宮の境内を、測定のために訪れた。
1泊2日で華厳の滝、戦場ケ原、足尾銅山など、日光市内の観光名所を回った。測定の結果、「年間1ミリシーベルト未満という横浜市の基準に照らし、2〜3日の滞在では問題ないレベル」との結論を出した。
だが、表情は晴れない。「安全と安心は次元が違う。悩ましいところだ」
横浜市立小学校の8割が修学旅行で日光を訪れる。市教委が日光に出向いたのは、11月に「横浜市の修学旅行を考える会」という市民団体から要望書を受け取ったからだ。訪問先の放射線測定結果や宿で出される食材の産地の公表に加え、「修学旅行先の決定は安全確認を条件とする」ことなどを求めていた。
文部科学省が8月に作成した放射線量の分布マップでは、日光市の一部地域で1平方メートルあたり10万〜30万ベクレルの放射性セシウムが地表に蓄積されたとしている。東京電力福島第一原発事故後、子どもの生活環境での放射線量に敏感になる首都圏の保護者は少なくない。
同会代表の生野悦子さん(38)は、小学5年の息子が今年の修学旅行で日光を訪れる予定という。宿泊施設の食材について日光市からの回答が不十分だった、と考えている。「データが少なく、判断材料にならない。家庭で線量が高そうな地域の食材を避ける努力をしているのに、半ば強制的な2〜3日の修学旅行で台無しになってしまう」と話す。