現在、大阪市内では原子力発電所を稼動させるべきかどうかを問う住民投票を実現しようと署名活動が行われています。 なぜ原発のない大阪市で問うのか、そして政治家ではなく市民が決めるべきなのかどうかを考えます。 今月9日から大阪市内各地で署名活動が展開されています。 市民団体が訴えているのは「関西電力の原子力発電所を稼働させるかどうか市民投票で決めさせてほしい」ということです。 【署名集めをする男性】 「原子力発電所が要るか要らないかを自分らで決めようという署名集めをやっているんですけど。住民投票のね」
法律の定めにより、大阪市内の有権者の2%、4万2000あまりの署名が来月9日までの1カ月間で集まると、その要求が市長を通して市議会に届けられます。 そして市議会で条例が可決されると、福井県にある関西電力の原子力発電所を動かすのか止めるのか、電力の大消費地である大阪の市民が投票するのです。 【みんなで決めよう「原発」国民投票・今井一事務局長】 「これは大阪市民の問題なんだと。福井の人たちの問題であると同時に自分たちの問題でもあるんだということを自覚してもらえるなと思って。自分も含めてあまりにも自覚が薄かったと思っています。主権者である私たちが自分たちでよく話し合って、そして最終決定を下して責任も自分たちでとると。そのためには市民投票というツールというか手段がいちばんうってつけだと思ってこの直接請求をやろうという風に考えたわけです」 これに対し原子力発電への依存度低下を目指し、関西電力への脱原発の株主提案権の行使を選挙で掲げ民意を得たという橋下市長。 今回の市民投票に向けた動きには冷静な様子です。 【大阪市・橋下徹市長】 「住民の皆さんがされることについて僕がとやかく言うことではないですけど。住民投票を否定する訳じゃないので、住民の皆さんの活動は活動でしっかりやって頂ければと思います」。 一方で諸外国では市民や国民が選挙以外の直接投票で物事を決めるのは珍しくありません。 福島の事故を受けてイタリアでは原発の再開の是非を問う国民投票が行われました。 日本でもこれまで自治体の合併や公共事業の是非を問う住民投票は行われてきました。 原発についても地元自治体で建設計画を問うものはありましたが、稼働の是非を問う投票は実現すれば初めてとなります。 今回、原発に関する署名集めを行っている人の多くがこれまで政治活動などに関わったことのない人たちです。 【岩崎芽依子さん】 「しんどいのはしんどいです。この市民投票(の署名集め)をやっているっていうことを知らない人もいたりとか。まずそこからの説明で、そこをちゃんと聞いてくれる人と聞いてくれない人にまず分かれてくるということもあるので、その辺で時間が足りないですよね」。 中央区の主婦・岩崎芽依子さん(30)。 小さな子を持つ母として福島の事故の後にエネルギー問題に関心を持ち、活動に参加しました。 地元の人が行き交う区役所前などで署名集めに励んでいます。 【署名した人】 「勝手に決められるよりは自分らで意見出してっていうのは確かにするべきやと思ったので」 「自分たちの意思とかもちょっと聞いて欲しいなと思って」。 ところが法律で正式に規定された「法定署名」であるため、一人一人に氏名、住所、生年月日を書いてもらう必要があり印鑑か拇印も必ず要ります。 さらに今回の活動の認知度も高くはなく街の人の反応も様々です。
【街の人】 「市民がやったってそりゃダメでしょ。それこそ市会とか府会とか国会議員。我々が選出した人がちゃんとやってくれたら良い訳であって」 「(大阪)市民限定というのは、はてなという感じがするけどね。やっぱり日本全国で捉えるべき問題じゃないかなとは思うけどね、原発に関してはね」 大阪市中央区で手打ちそば店を営む蔦谷健介さん(38)も署名集めに参加している一人です。 エネルギー問題への関心は以前から持っていましたが、福島の事故を受けもっと多くの人と共に考えたいと思うようになりました。 店を訪れる客に署名を依頼し、コツコツと1日平均10人分を集めています。 【蔦谷さん】 「(市民)投票があるよっていうのが分かれば、みんながもうちょっと考えるかもしれない。 なければ多分考えないかもしれないしね。皆がもう少し考えようっていう。多分考えてない人も多分、沢山。まあ無党派層みたいなもんで」、 蔦谷さんは仕事がら街頭で署名を集める機会は多くはありません。 しかしこの日は応援に駆け付けた俳優の山本太郎さんと共に街行く人に声をかけます。 【蔦谷さん】 「いつもよりは(署名の集まりが)いいですね、やっぱり。いつもの僕よりは。勝ち負けもあるけど、やっぱり皆の意識を高めたいっていう思いがありますよね。やっぱりこんな大事なことなので、皆が反応してほしいな」 市民団体が構える事務所では毎晩、その日の署名集めの成果を報告し、翌日以降の作戦を話し合う会議が開かれています。 集まった署名はこれまでにおよそ1万7000。 大阪では市民の関心が高くはないのかと感じさせられる日々です。 市民投票の実施には4万2,000あまりの署名集めが絶対条件です。 この年末年始が正念場だと考えています。
【今井一事務局長】 「原子力発電所については問題が大きすぎます。主権者一人一人で良く考えて良く話し合って市民投票で決着をつけるべきだと思っています」。 大事なことは自分たちで決める。 原発の是非を大都市で問うというかつてない取り組みは、実施されるのでしょうか。