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沖縄は反戦平和の解放区か 安藤慶太
2012/01/03 13:07更新
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記事本文
今回はまず米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価書を沖縄防衛局が沖縄県に届けた問題について取り上げたい。昨年12月28日のことだ。沖縄県庁を防衛局の担当者が訪れ、辺野古移設に向けた環境影響評価書を提出したのだが、その搬入方法が段ボールで搬入したこと、またそれが未明の出来事だった点が盛んに問題にされたのだった。
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記事本文の続き ■そもそもの問題は
未明の搬入劇に「暗闇の奇襲」「常軌を逸した行動だ」「奇異だ」「正々堂々としていない」「卑劣」「姑息」などと書面を届けた沖縄防衛局は散々に叩かれている。
メディアのそうした取り上げぶりを見て「防衛省がまた馬鹿なことをやったのか」「何も明け方に届けなくてもいいのに」と思う人もいるかもしれない。
だが私には非難されるほどの非が防衛局にあったとは思えないのである。
それは、そもそも県庁に陣取り、実力行使で搬入を阻止を企てる反対派がいたからである。非難する人々はこういう人たちに目を向けず、全く咎めないのである。そちらの妨害は全く問題にされず、防衛局の行動だけが悪者に仕立て上げられているのだ。
■はじめに妨害ありき
米軍基地問題をめぐってのそもそも論をいえば、鳩山由紀夫元首相の脳天気な発言の数々、防衛局長の「これから犯す」発言など、政府与党の対応に大いに問題があったことは確かである。この欄でも鳩山発言は散々叩いたこともある。
だが、それはあくまで沖縄への米軍基地の駐留存続を前提にした批判であって「米軍は沖縄から出て行け!」といった主張に与した批判ではない。
《本来、政府職員が持参して提出すべきものを配送業者に委ね、これが失敗すると、通常の業務時間外の未明(午前4時過ぎ)に県庁守衛室に運び込む……。(中略)
反対派住民の抗議行動による混乱を避けたい、というのが政府の言い分である。仲井真弘多知事は評価書提出は行政手続きであるとして認める意向を表明していた。しかし、そのやり方はとても正常とは言い難く、拙劣に過ぎる。普天間問題の解決を目指す政府の誠実さ、真剣さを問う声が上がるのは当然だろう》(毎日新聞社説より)
私だってこういうやり方が正常だとは思わない。しかしなぜ、この社説は反対派の妨害については全く目を向けないのだろう。防衛局ばかりをなぜ批判対象としてフレームアップするのだろう。フェアな見方ではないと私は思う。
《那覇市中心部の県庁前には、午前7時すぎから続々と市民が集まり、赤色の紙に黒字で「怒」と書かれたカードを掲げた。評価書の到着を阻止しようと正面玄関や通用口にまで陣取り、荷物が搬入されるたびに運送業者を取り囲み、中身を確認しようともみ合いになる一幕も…》
荷物が搬入されるたびに運送業者を取り囲み、もみ合いになる一幕も、とある。阻止活動なるものが、相当激しく行われていたようだ。
■県庁にも同調圧力
気がかりなのは沖縄県庁の庁舎管理である。テレビ映像を見ていると、押しかけた反対派は、やりたい放題である。事実上、県は彼らを庁舎内で十分に制止できていない。県庁がまるでプロ市民の解放区のようになっていて、そのすさまじい同調圧力には、県も手をつけられない印象をもった。
県知事まで反対派に取り囲まれ、運ばれた書類を受理するのか、否かと野次られながら詰め寄られていた。言質を取ろうと回答を何度も何度も迫り、そこにマスコミも群がっている。ステレオタイプの情報が発信される背景にはこうした事情も関係あるようだ。。
■これは「いじめ」である
先の社説は政府が未明に提出した点を捉まえて「拙劣に過ぎる」と批判していた。「政府の誠実さ、真剣さが問われる」ともしていた。ならば政府はどう提出すれば彼らは納得したのだろうか。
恐らく、どんなやり方をしても所詮は同じことだったに違いない。
例えば、政務三役が出向いて提出すれば彼らは納得したのか。そんなはずはない。正面から来れば「悪びれもせず…」と取り囲んでとっちめられ、無言ならば「説明責任を果たしていない」と食ってかかるに違いない。で、出し抜けば今度は「だまし討ちだ!」である。郵送にすれば「誠意がない」といえるし、提出できずに帰れば「逃げて帰った」というだろう。しゃべってもしゃべらなくても、食ってかかって突き上げることに変わりはない。どうにだって批判は可能なのだ。
■八重山報道との共通点
いずれにせよ、沖縄の言論空間の歪さをあらためて感じた光景だった。昨年、このコーナーでも散々書いた、八重山の教科書採択をめぐる問題における報道ぶりと全く同じ話だ。
批判を浴びせている人たちは、石垣市と与那国町が育鵬社を採択したのが気に入らないのである。そこで徹頭徹尾、ケチを付け、バッシングを浴びせ貶めつぶしていく。基地報道と全く同じである。
紙面は連日、あたかも育鵬社を採択すれば明日にでも戦争が起こるかのような展開だった。読者は育鵬社に対する偏見を持ち、石垣市と与那国町のやり方が如何に民主主義のルールを逸脱しているかと思うに違いない。
竹富町がいかに子供達のことを思っているか。石垣市と与那国町がそれに反して酷いことをしているか。こうした点を記事を通じて連日強調していく。これでもかこれでもかと紙面による糾弾が続く。読者はいずれ間違いなく公正な判断などできなくなっていくに違いない。
■全てはあべこべ
しかし、事実は全くあべこべだったのだ。法律を破っているのは竹富町だったのである。民主主義を盾に取り、石垣市と与那国町を攻め続けていた連中のやっていることこそが実は民主主義を蹂躙していたという話だ。
日本政府も明確に竹富町の違法を指摘した。このまま行けば、竹富町の生徒は教科書を無償で受け取ることはできない。報道は大変なミスリードだったのである。つくづくこういうメディアしか存在しない沖縄の言論状況を気の毒に思う。
■竹富町予算に注目
年が明け、竹富町はどのように今の事態を収拾するつもりなのだろう。とりわけ教科書の予算を町で負担するか否か。ここに私は注目している。
「子供達に育鵬社の教科書は、指一本ふれさせない」と竹富町教委幹部は口走ったそうである。普通、国の検定に合格した教科書について自治体幹部がここまで口を極めて批判するなど、あり得ない。この一事だけでも信じられない思いだが、竹富町は再三の指導にもかかわらず、採択を変えるつもりがないことをあらためて年末に確認したそうである。
■竹富町に与えられた選択肢
これは違法を改める気がないということである。竹富町が現状の判断を押し通す限り、国の無償措置の対象とはならないことは聞いているはずで、ならばその責任は自分たちで一切負うべきである。
竹富町が取りうる選択は大きく分けて次の4つが考えられる。
(1)自分たちの町の予算で教科書を買う。
(2)教育委員のポケットマネーで買う。
(3)「町が負担する話ではない」と何も対策を取らず子供達(実質は町民)に買わせる。
(4)今一度、町の採択をやり直し、法律に従った採択を行う。
考え直すなら法律に基づく判断をすれば無償措置の対象になることはいうまでもない。
■町予算での購入は違法支出でしょ
だが、仮に町で予算化するといってもいろいろと面倒な論点がある。本来そう簡単な話ではないのである。例えば町当局が教科書の費用を予算に計上したとする。それを町議会は唯々諾々と認めるつもりだろうか。あるいは住民はこういう支出を認めるつもりなのだろうか。町で予算化して教科書を買うというやり方は、常識に照らせば、違法な支出だとなるだろう。
そもそもこういう事態を招いた責任の大半は、どこにあるか。
それは一部の町教委の幹部の言動にある。
逆上せあがって、育鵬社教科書に対する偏見に満ちた不必要な発言と行動を繰り返し、法を犯して、なおかつそのことを頑として認めない。結局、町として引っ込みがつかなくなってしまったのはひとえにこの幹部の不見識に大半の原因があると私は思う。
ならば、町が法を犯した責任は一義的に当該幹部が負うべき話ではないか。それをなぜ、町が予算を付けて公金で代償を背負わなけれなならないのか。
「自分たちの判断は間違っていたとは思わないが、国は私たちを違法だと決めつけている。私たちは納得していないけれども、このまま、町で何の予算も確保しなければ、子供達が自費で購入するという事態が生まれる。それは回避しなければならない」
オーソドックスに考えれば、せめてこう言って予算を通すようお願いするのが順当であろう。町の予算は当該幹部の私物ではないのである。だが、当該幹部が何も責任もとらず、あるいは「自分は何も悪くない」と非を認めぬまま、予算を通すことが許されるだろうか。問題はここにある。普通の感覚では到底通らない話だ。
町当局を監視する立場にある町議会がきちんと予算の是非を質すべきであって、町議会の存在意義と真価が問われる事態である。竹富町がどのような判断をするのか。それをしっかり見守らねばならない。(安藤慶太社会部編集委員)
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