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インタビュー

新春インタビュー:3M戦略を具現化し「ゲームチェンジ」する2012年――KDDI 田中社長に聞く (2/4)

―― KDDIからすれば、いずれかのプラットフォームに依存したり肩入れしたりするのではなく、“どれが主流になってもいい”という感じですね。ただ、プラットフォームが均衡して複数ある状況だと、3Mを行っていく上でリソースが分散してしまうという危惧はありませんか?

田中氏 これは直近の話ではありませんが、その場合の1つの鍵が「HTML 5」だと思っています。例えばiPhoneですとAppleの垂直統合モデルになっていますけれども、将来的にはHTML 5ベースでブラウザ上での(コンテンツやサービスの)共有という方向に向かっていくと考えています。HTML 5とブラウザの部分は、KDDIにとって重要なコアテクノロジーになっていきます。

―― HTML 5への投資を行い、“ブラウザ型の世界観”を推進することで、各プラットフォームの持つアプリ/コンテンツストアベースの垂直統合モデルを回避する、と。

田中氏 コンテンツマルチユースの観点では、ブラウザベースというのは重要な考え方です。むろん、各プラットフォームの垂直統合の部分も残るわけですけれども、(プラットフォームを横断する)横のつながりを作ることができます。

―― 2011年を通じて取材をしてきて感じるのが、これまで「アプリ中心」だったスマートフォンの世界が、「ブラウザ中心」に再定義されることで変わるのではないか、ということです。ブラウザ型コンテンツ/サービスが再評価される時期が、この2012年のように感じるのですが。

田中氏 おっしゃるとおりだと思います。それはどういうことかというと、(HTML 5の時代になると)お客様から見た時にアプリ型とブラウザ型との違いがかなり小さくなるということなのです。

 もちろん、アプリの方が本質的には自由度も高いですし、優れたユーザー体験を提供できます。しかし、ブラウザ上で提供できる価値も大きくなってきています。何より重要なのは、ブラウザ型の方が(OSの)プラットフォームに縛られず、マルチプラットフォーム時代に非常に向いているということなのです。

―― スマートフォンにおけるアプリ時代からブラウザ時代への移行は、コンテンツプロバイダー側から見ても、iOSとAndroid、Windows Phoneと開発投資を分散しなくてすむメリットがありますね。キャリア側もブラウザ中心になれば、特定のOSプラットフォームに依存しなくてすむので、マルチプラットフォーム戦略が取りやすくなります。

田中氏 マルチネットワークの部分でも、コンテンツ/サービスがブラウザ型になってOSプラットフォームに依存しないことで、最適なネットワークを適宜使い分けられるメリットがあります。それは正しい方向であろうと思います。

―― 3M戦略を推進する上でも、ブラウザ型の推進が2012年は重要になってくる、ということですね。

田中氏 そのとおりです。

簡単かつシームレスに使える「マルチネットワーク」を構築

―― マルチネットワークの部分ですが、KDDIは自社に固定網を持ち、グループ傘下にUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXを持つことがドコモに対する強みになっていると思います。2011年から3GとWi-Fi、WiMAXを組み合わせて使う動きは始まっていますが、2012年のマルチネットワークの取り組みはどうなっていくのでしょうか。

田中氏 まず3Gの部分ですが、これは(2012年から)LTEに置き換わっていきます。LTEと3Gは同じ周波数を使いますし、両者はシームレスな関係なのです。一方で、モバイルWiMAXは別の周波数を使っていますし、固定網を(スマートフォンやタブレットなどに)つなげるのはWi-Fiしかありません。

―― 個々のネットワークが役割分担できるわけですね。

田中氏 ええ。しかし、いま何が課題かというと、(個々のネットワークにつなげるための)設定が面倒くさいことです。我々がau Wi-Fiを始めるときにボタン1つで設定できるようにしましたが、こういった設定フリーへの取り組みは、もう一段、進化しなければなりません。

 あと、個々のネットワークの実効通信速度を見て最適なところにつなぐテクノロジーも重要になっていきます。例えば、au Wi-Fiスポットにつながった場合でも、そのスポットが混んでいたり、(Wi-Fiの)電波環境が今ひとつよくない場合、スループット(実効通信速度)が出ません。きちんと“一番いいネットワークにつなぐ”というスムーズさを実現するための技術開発に注力しています。

―― 2011年でスマートフォンやタブレットが使えるネットワークが増えましたが、その分、そのときどきで「最適なネットワークはどこか」という別の問題が浮上しました。そのあたりのドラスティックな制御は、今年さらに重要になりますね。

田中氏 ユーザーから見たら「簡単かつシームレスに使える」ことが大切ですし、キャリア目線では「複数のリソースの中から一番いいところを使う」ことが重要です。

―― KDDIはモバイルWiMAXを持つ強みもありますが、その位置づけはマルチネットワークの中でどのようになっていくのでしょうか。

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田中氏 モバイルWiMAXのインフラは、都市の中心部に集中的に整備しています。3Gとは異なる帯域を持っていて、周波数利用効率がよい。現状ではカバレッジでドコモのXiを上回っているという部分もありますが、注目していただきたいのは、人口密集地でのインフラの集中度なのです。

 今後のトラフィックの爆発的増大を鑑みますと、都市部は3Gインフラだけでは収容できません。3GがLTEになっても、それ(LTEインフラ)だけではすぐにオーバーフローするでしょう。モバイルWiMAXは3Gとは別の周波数帯域を使っていますから、都市部でも快適に利用できます。マルチネットワークでモバイルWiMAXを組み込む意義は、まさにここにあります。

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