ここから本文エリア せんろはつづく? 12012年01月01日 「仙石線がないと、娘の高校選びに影響する。帰りが遅くなる部活に入れるかどうかも分からない」 年の瀬の東松島市。東日本大震災の津波で線路がなくなったJR仙石線東名(とう・な)駅の近くに住む主婦(38)は、この春中学3年生になる長女の進路を案じている。 石巻市に続いて県内で2番目に多い1千人超の犠牲者が出た東松島市。津波に襲われた海岸線から1・5キロ離れた主婦の自宅は床上20センチの浸水にとどまり、暮らしが一変するのは避けられた。ただ、住宅ローンを抱え、長女のために引っ越すのも、長女に一人暮らしをさせるのも難しい。 ■ ■ 東名駅から隣の野蒜(の・びる)駅までの1・6キロ区間は、仙石線で最も被害が大きい。復旧の見通しは立っていない。 「仙石線を元のルートで仮復旧してほしい」。市民団体「JR仙石線沿線住民の会」は昨年11月、市とJR東日本仙台支社に求めた。1万2511人の署名も集めた。代表の坂本雅信さん(62)は元JRマン。「復旧に時間がかかれば、一時的に出ていった人たちが戻れず、復興どころではなくなる」と心配する。 震災前は、野蒜駅から仙台駅まで快速で約40分、各駅停車でも1時間程度だったが、不通区間を代行バスで乗り継ぐと、約1時間半かかる。 仙台市と第2の街・石巻市を結んでいた仙石線の利用者には、勤め人や高校生が多かった。約450人が亡くなった野蒜地区では震災後、仮設住宅やアパートに移った被災者も多い。約4800人の住民は昨年末までに半減した。 ■ ■ 東松島市は、野蒜、東名の両駅を内陸に移し、周りに新しい住宅地を造る復興計画を描く。だが、用地買収から山を削ってレールを敷くまで何年かかるか分からない。 「ルート移転には時間がかかる。仮復旧なら数カ月でできる」。坂本さんは、地域社会の崩壊を早く食い止めたい。「県内最大級の海水浴場があり、観光客でにぎわう街。その街を存続させるために復興計画がある。国や自治体に資金を頼って仮復旧させるべきだ」と主張する。 ただ、JRは株主など様々な利害関係者に責任を負う民間会社。仙台支社幹部は「仮復旧とルート移転という二重投資はできない」と話す。国が資金を手当てするとしても「危険な場所では列車を走らせない」という考え方だ。 津波で被災し、今も不通区間がある県内の鉄道は、大船渡、気仙沼、石巻、仙石、常磐の5線。いずれも、沿線には集団移転が検討されている地区があり、いつ、どのような形で全線再開するのか決まっていない。 ■ ■ 東日本大震災で断たれた県内の交通網。幹線道路はおおむね復旧しましたが、鉄道の一部区間は再開の見通しが立っていません。車を流された被災者やお年寄りにとって鉄道は大切な足ですが、元通りにするのは難しいでしょう。新年の連載「せんろはつづく?」では、様々な角度から考えます。(吉田拓史)
マイタウン宮城
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