(3)おすすめできる英英辞典

<学習者の定番>

Longman Dictionary of Contemporary English. (5th edition) 2009. London: Longman.
 通称 LDCE(または LDOCE)。1978年の初版発行以来、わかりやすい語法表示と豊富な例文により、学習者にとって極めて役立つ辞書となっている。
 改訂の度に新機軸・新趣向を打ち出してくれるのがLDCEである。この度、第5版で何をしてくれたか。実は、パッと見たところ代わり映えがしない。第4 版と同じような感じである。確かに第4版は、それまで以上にレイアウトを見やすくし、色刷りも使い、コーパスも使い…という工夫で、もともと定評のあった LDCEの中身をしっかりサポートした。つまり、ある意味LDCEの集大成みたいなところがあったわけである。となると、これ以上変えようがないのであろ うか。もちろん、中身の進化として、Longman Activator 的な情報を盛り込んだ点や、レジスター記述の強化などを挙げることもできる。が、これも「いつもながら類語情報や単語の使い方の解説は丁寧」と言って済ま すこともできる。
 実は、私の見るところ、今回の改訂の目玉は付属のDVD-ROMである。本文の内容に加えて、100万ものコーパス用例、豊富な類義語・反対語・コロ ケーションの記述(というか、コロケーション辞典と類義語辞典が丸々入っている)等々、これは大したものである。そして、このDVDの内容をハードディス クに移して良いのである。何という太っ腹。第4版とは違い、ウィンドウズだけでなくマックOSXにも対応している。こういう時代であるから、今回はここら 辺りに改訂の努力を注ぎ込んだらしい。しかし、ソフトの出来が今ひとつなのは残念(私は、使っていない。データ抽出の方法を探っているところである)。
 ☆ オマケ情報:旧版なら、オンラインで無料で使える。良い時 代になったねぇ。

Oxford Advanced Learner's Dictionary. (8th edition) 2010. Oxford: UP.
 通称OALD。ホーンビーらが1942年に東京で出したのが学習辞典の古典、Idiomatic and Syntactic English Dictionary (ISED)。それが戦後オックスフォードから出版されてから、学習者用辞典として版を重ね、大いなるベストセラーとなった。(英語学習者向け世界最高の 辞書が日本生まれというのも、何やら考えさせる話。)
 LDCE(↑)がライバル。この2冊は、改訂するたびに相手の長所を吸収し、健康な成長を続けている。用例の出し方、文型の表示、新語の記述(特にイン ターネット・コンピュータ関係)等々、どれをとっても見事。今日英語を学ぶ人にとって「最高の辞書である」と断言できそう。
 この度の7版→8版は、まさに「良い辞典の改訂」のお手本みたいな改訂である。本文の語義記述はほとんど変わらないものの(つまりあれ以上いじっても良 くならない?)、Collocations と呼ばれる欄では典型的な語の結びつきをズラリと示し、Synomyms という欄では類義語を的確な用例と共に簡潔に示し、という具合にパワーアップしている(近年発行した自分たちの辞書類の成果を圧縮して取り込んでいるらし い)。重要語の見出しは赤字になり、まぁ見やすいといえば見やすい(私の好みかどうかは別だが)。所々にあったへたくそなイラストが姿を消したのはちょっ と残念な気もするが、まぁ新ネタの欄があれほど増えたのだからスペースの都合上やむを得ないというところか。7版が気に入っていた人は、確実に買い替える べきであろう。
 また、今回の改訂で加わったオマケの目玉として Oxford Writing Tutor がある。特に近年、英語学習者は英語圏の学校(特に大学)に進むことを目標とする傾向が強い(日本では減ってるそうだけど)。学生稼業となると、それなり にちゃんと英語が書けないとレポート一つ提出できないし、テストさえ受けられないだろう。というわけで現場では「英語で書く」ことを教える需要が増えてい る。このオマケは、そんな事情を反映したものといえるだろうか。確かに、辞書のオマケにしておくにはもったいないような、別冊の小冊子にしてもよさそう な、しっかりした内容である。学習者の方には、「英語的なものの言い方」を概観するためにも一読をお勧めできそうである。いずれにせよこの8版、なかなか 良い。私、久々に「これは買いだ」とつぶやきましたよ。
 ☆ オマケ情報:このOALD、何とオ ンラインで無料で使える。なかなかの太っ腹。

Cambridge Advanced Learner's Dictionary. (3rd edition) 2008. Cambridge University Press.
 辞書には熱心でなかったケンブリッジが、学習者用辞典(Cambridge International Dictionary of English)を突然出したのは、1995年だった。いささか独特というか、ある意味使いにくいところもある辞書だったが、改訂を重ねて学習者用辞典と してのバランスが良くなった…ということは、せっかくの特徴も角が取れてきたというか、みんな似たり寄ったりになっていくというかなのであるが、それでも 着実に良くなっているのは間違いないと思われる。あとは学習者の皆さんがしっかり使うかどうかでありますな。
 これまで通り、語義を大きく分けて見やすく記述す るとともに、コーパスで頻度の高い連語もうまく取り込んである。このあたりの手さばき、ある意味で LDCE を越えているとも言えそう。学習者の間違いやすい点や、試験に出るポイントなどをサラリと紹介しつつ、新語も収録している。このあたり、コーパスの効用と いうべきか。彼らは「ケンブリッジ国際コーパス」という10億語レベルの独自のコーパスを使っており、ここら辺りにこの辞書の特徴が出てくるわけである。
 なお、この3版では、かつてウィンドウズのみ対応だった標準装備のCD-ROMもマックOSXに対応している(Power PC も Intel も両方OK)。
 ☆ オマケ情報:この辞書、オンラインでも公開し ている(いささか使いにくいけど)。


Macmillan English Dictionary for Advanced Learners. 2002. Macmillan.
 なかなかよく出来ている。OALD と LDCE が圧倒的に優位な英語教材市場に参入してきたのだから、それなりの質があるのは当然か。見やすくわかりやすい紙面、CD-ROM標準装備(Winのみ対 応)等々、とりあえず流行の基準を満たしている。どうも性格のないペランとした印象も受けるが、これと言って悪いところもなく、なかなかのお買い得と いったところか。(国内流通版はCD-ROM付で3990円)
 なお、その後「エッセンシャル」と称する米語と英語のバージョンを分けたものも出現したが、普通の知性と教養ある日本人学習者であれば、あえて世界を狭 くするような英語学習はしないもんでしょう。その人の状況とか好みもあるだろうけど、基本的には両方載ってるほうが良いじゃないですか。あぁ常に楽をして (持ちネタを再利用して)「新版」を出そうとする出版社…。
 ☆オマケ情報:CD-ROMはJammingで使えるようにできるそうです(自分じゃやってないので伝聞調…)。

Collins Cobuild Advanced Learner's English Dictionary. (5th edition) 2006. London: Collins.
 1987年の初版でコーパス準拠の元祖となった辞書であるが、第3版(2001年)になって題名も変わり(かつては単にCollins Cobuild English Language Dictionaryだったっけ;以来、版が変わるたびにチョロチョロと変わるんでややこしい…)、「学習者向け」をハッキリ打ち出した。それでも「とに かく大量の用例に基づいた語義解説」を貫いており、「辞書を見るだけで英語が読める」という特徴を持っていた。逆に言えば、用例がズラズラと並んでいるた めに、語義だけスパッと教えて欲しい利用者には向かなかったのである。
 で、第 4版で…すっかり普通の辞書になってしまった。用例は数を減らし、解説の量も減り、ついでに発音記号も手を抜いた(見やすさ優先で正確さを犠牲にし た)。よく言えば「見やすくてわかりやすい辞典」になったのであるが、悪く言えば、そして正直に言ってしまえば、「内容をおバカ向けに薄めた」のである。 まぁ、丁寧に実例を呼んで英語を身につける客層よりも、見やすさ・使いやすさを求める初学者層の方が厚いと思ったのであろうし、それは経済戦略上間違って いるとは言えないものの、せっかくあった豊富な内容を減らさなくても、ねぇ…。
 そして、今回の第5版では…、驚くべし、ほとんど何も変わっていないのである。気休めに新語を入れた部分もあるらしいが(例えばspyware)、その 種の新語のためには日本人の学習者なら大きめの英和辞典を使うであろう。どうも「新版だよ」と言って売りたいという出版社の意図が見え見えで、寂しい。
 とはいえ、OALDやLDCEと対等の市場に入りたいと思ったのであろう。4版ではCD-ROMも標準装備で、すっかりライバルと競争する構えである。 ずいぶん薄まったとはいえ、「多くの用例をまず集め、それを説明する」という発想はそのままだし、「生きた英 語」とやらに触れたい人には便利。英語の事実・使い方が気になる人は必携。ただし、記述の仕方が従来の辞書とは違う ので、慣れる必要がある。(ペーパー版で3885円)
☆ オマケ情報:(少なくとも4版までの)CD-ROMの中身(データ)は、Jammingに変換可能。Winでもマックでもホイホイ使えます。

Merriam-Webster's Advanced Learner's English Dictionary. 2008. Merriam-Webster.
 これには驚きました。これまでの学習者用辞典市場は、最高峰の双璧OALDとLDCEがライバル同士として成長していく中、コーパスから作ったコリンズ が参入し、これまた独自コーパス+独自路線のケンブリッジが参加し…という英国出版社の市場だった。やはり辞書は英国なのである。(ちなみに単語を覚える ワークブックは米国モノに良いのが多い。)
 そこにやってきたのがこの米国辞書界の最高峰メリアム・ウェブスター社の学習辞典である。米国国内市場向けの辞書ばかり作っていた大きな会社が突然英語 学習者向けの辞書を作ったのだから、「広辞苑」を売っていた岩波書店が突然日本語学習者向けの辞書を作ったような感じとも言えようか。
 まず手に取って最初に気がつくのは、とっても「アメリカン!」な奇妙さである。よく言えば、お買い得感とも言えようか。安物ペーパー版的な紙を使い(こ れは米国の辞書にはよくあるパターン;どうせ数年もせずに買い替えるんだから合理的といえば合理的)、大きな版でズッシリ重い。印刷も細かい。ギッシリ詰 まった紙面を見ていると、10万語句収録、用例数16万という謳い文句もうなずける。これで2000円ちょっとなんだから、安いといえば安い。
 しかしまぁ、様々な面からみて、何とも見にくい辞書である。全体に変なレイアウト。見出し語において基本語に下線が引いてあるのだが、ただでも文字が ギッシリ詰まった組みなので、すさまじく見にくい。図版のページがあるのだが、これがまた1970年代の子供向け百科事典からそのまま転載したのではない かと思わせる、奇妙に古くさい図やイラストに満ちている。
 肝心の中身であるが、残念ながら先行の学習辞典群には及ばない。文法・語法情報が弱い。例文も、やたら並べてあるばかりで、ツボを得たところがない。要 するに、これまでに存在した米国出版社発の英語学習者向け辞典と同じ弱点を持っている。
 巻末付録として、主な地名の一覧や、英文法のまとめ(パッと見たところあまり良い内容ではないぞ)、よくあるファーストネーム一覧、米国・英国・カナ ダ・オーストラリアの休日一覧などが付いているのだが、いずれもとってつけたような感じで、「わぁ便利!」という気分にならない。
 したがって、学習者の皆さんがお金を払ってお使いになるとすれば、まぁ4冊目か5冊目の愛用辞書として開く感じであろうか。アメリカ的な楽しさもある。 定評ある(英語話者向けの)メリアム・ウェブスター系の辞書やアメリカン・ヘリテージ系の辞書への橋渡しとしても悪くないだろう。なお、これを買った人に は、辞書データをダウンロードさせてくれる。やたらCDやDVDを添付するよりもエコというわけか…まぁ合理的といえば合理的、徹頭徹尾アメリカンなので ありますな。
 なお、どのみちメリアム・ウェブスター社はなかなか良い辞書をオンライン公開してくれている。こういう時代だから、学習者 の皆さんも大いに利用なさればよろしい。となると、ますますこの辞書の意味がわからなくなる…


<初級者用英英辞典:いきなり全部英語の辞書はちょっとなぁ、という人はこれぐらいから練習>

Oxford Wordpower Dictionary. (3rd edition) 2006. Oxford: UP.
 収録語数は多くないが、とにかくわかりやすい。ただの辞書ではなく、英語力訓練ツール満載。英語は身につけたいけど、英英辞典には抵抗がある — という人に超お勧め。この辞書に浸って2カ月も過ごせば、日本語に訳しながらエッチラオッチラ「英語の勉強」するのがアホらしくなる。
 これに「和訳」をつけた版が日本で登場したんだけど、これは趣味が悪いというか意味がないというか、まぁ自分で判断してください(オマケにこの新版の登 場でさらに無用のものとなった…)。

Cambridge Learner's Dictionary. (2nd edition) 2004. Cambridge: UP.
 スッキリ見やすい学習者用辞典。定義もわかりやすい。前述 CALD の特長をそのまま生かしたつくりで、愛用するに足る辞書であろう…けど、この収録語数レベルだとWordpowerの暖かさの方が嬉しいかな。
☆オマケ情報:この辞書もオンラインで公開し ている(やっぱし使いにくいかな…)。

Longman Wordwise Dictionary. (2nd edition) 2008. London: Longman.
 こちらは LDCE の特長を取り込んだロングマンの初級者向け辞典。字が大きめなせいか、取っ付きやすく見える。事実、明解な解説とわかりやすい基本語の使い方表示は、多く の学習者にとって嬉しいものであろう。前述のLDCE同様、使ううちに基本語彙2000が身につく優れもの。本文の他、単語ゲームなどを収録したCD- ROM標準装備(最近はこうでもしないと売れないというわけか…)。


<お役立ち辞典>

Oxford Learner's Thesaurus: a dictionary of synonyms. 2008. Oxford: UP.

 Oxford Advanced Learner's Dictionary は、周知の通り極めて良質の辞書である。そしてもう一冊、Oxford Collocations dictionary for students of English は、その OALD に盛り込みきれない類の連語情報を多くの例文を通じてわかりやすく示し、「この語はこう使う」という勘所をピタリ提示してくれる。当然ながら、いずれも英 語学習者の皆さんにお勧めできる高品質のツールである。
 その2冊があって、この Oxford Learner's Thesaurus が出たのであるから、当然両者の良いところを吸い込んでくれているだろうと期待したくなる。その期待は全く裏切られない。これは、良くできてます。
 早い話、類義語を並べておいて簡潔な連語情報を示し、OALDの定義を示し、OALDの類義語情報を 'NOTE' として示してある。「んじゃ、手持ちのネタを貼り付けて編集しただけじゃないの」と言われてしまえばそれまでだが、まぁ類義語辞典を作るというのはそうい うことですよ。いや、この場合、単なる類義語辞典ではなく、英語を書くため、そして正確・適確に単語を覚えるための見やすくわかりやすい道具が出来てい る。繰り返すが、これは、良くできてます。
 英語に興味のある人なら Longman Language Activator と比べたくなるであろう。確かに Activator は良くできていた。あれが好みという人もあろう。違うものだから単純な比較は出来ないという意見もあろう。しかし、敢えて比較するならば、この Oxford Learner's Thesaurus の勝ちということになる。さすがは Oxford、造りと使い勝手が違う。
 付属のCD-ROMは、Windows 2000, XP, Vista 並びに Mac OS 10.4 以上(PPC/Intel)対応である。テキスト全文の他、なかなか良くできた類義語ゲームまでついていて楽しめる。この種の辞書付属のソフトにはひどい のが多いが、私の見る限り(Mac OS 10.4, Intel)キチンと動作する。この辞書の性質上、変にデータを吸い出して Jamming 等のソフトで串刺し検索するといった使い方をするよりは(そんなことをしても OALD のデータが出るだけであろう)、素直に添付のソフトを使うのが一番だと思われる。何しろこの辞書、CD-ROMも含めて「良くできている」というのが最大 の強みなのだから。
 斬新にして独創的なところはないかもしれない。むしろ OALD データの再編集である。しかし、それをうまくやればこれほど良いものが出来るという、Oxford 流辞書作りの良いところが結集したような辞書である。ここまでやってくれているんだから、ありがたい話ですよ。英語に興味のある人なら、持ち歩きたくなる かもしれない。ぜひどうぞ。

Oxford Collocations Dictionary for Students of English. 2002. Oxford: UP.
 その名の通り、自然な連語がドカドカ載っている辞書。例えば「非常に細かい(詳しい)」と言いたいとき、detailed まで思いついたとする。これに very をつけようか、しかし何やら幼稚で困るか、と思った時には、迷わずこれで detailed を見る。すると、extraordinarily, extremely, highly, immensely, very, fully, increasingly, fairly, quite ... 等々が、おおまかな意味区分のもと頻度順に並んでおり、「これやっ!私が求めていた英語的言い方はこれやっ!あ、こんなんもある!」と感涙できる。こ うやって何回か感涙を重ねるうち、自分なりの「英語的発想」ができてきて、ピタリピタリと言葉を選ぼうとするようになる。英和や和英では得られない上達の 手応えであろう。
 なお、日本にも『新編英和活用大辞典』(研究社)という大部な労作がある。これはこれで大変な努力の結晶だとは思うが、残念ながらとにかくデータの作り からして古いし、いかにも日本人が作ったという出来であるから、比較の対象にならないであろう。まぁ、自分でご覧になって、どちらに英語の手触りを感じる か比べてみてください。


<ちょっと上級者のあなたなら>

The Oxford Dictionary of English. 2003 Oxford: UP.
 1998年に見事なデビューを果たした辞書の改訂版。 学習者向けの辞書ではなく、いわゆる英語圏で使われる「国語辞典」である。したがって、「これが英語だよ。覚えておこうね」式の親切な姿勢に満ちているわ けではない。しかし、画期的に新しく、明快で、良質の辞書である。記述における規範性が問題となる項目(例えば split infinitive)も、実に自由かつ客観的に処理している。新語も専門用語もバランス良く収録。これまでのオックスフォード系辞書の伝統にとらわれ ず、ここまでのものを作ったのは、お見事!というべきであろう。(ハードカバー6801円)
☆オマケ情報:これの米国英語版が The New Oxford American Dictionary であるが、これは Mac OSX に標準で付いてくる(類義語辞典もついている)。「マックかウインドウズか、はたまたLinuxか」なんて話にあまり興味のない私も、OSXってスゴイ ねぇと思う。使い勝手が良いので(単語の上にポインタを置いてパッとキーを押すだけで定義が見られるなど)、ついつい使ってしまうのであります…。

<ついに出てくれた>

The Oxford English Dictionary. (2nd ed, Version 4.0) 2009 Oxford: UP.
 言わずと知れたOEDである。第2版のCD-ROMは、出た当初はマック・ウィンドウズ両対応で使い勝手もそこそこだったが、その後ウィンドウズのみ対 応となり、また不正コピーを防止しようとして異様なまでに使い勝手が悪くなってしまった。もちろん全20巻の紙の辞書を使えば良いのであるが、こういう時 代であるし、これをお読みの方は、ほとんどの場合「OEDはコンピュータ上で使いたい」と思っておられることであろう。いろいろな意味で究極の英語辞典な のに、「おすすめできる」とは言い難かった。
 それがこの4.0で思い切ったかのように使い勝手が良くなり、マックにも対応した(特にマック版には特にコピー防止機能がないように思われる)。なんと 太っ腹。まぁ全面改訂の第3版も近いのかなという感じであるが、いずれにせよ使いやすくなったのは嬉しい。
 ちなみに私はOED初版(もちろん紙のやつ)とウインドウズ3.1に対応したCD-ROM版も持っているが、その後使おうと思うOEDがなくて困ってい たのである。同じような思いの方も多かったことであろう。もう悩むことはない。全面的にオンラインで共有する時代も近いであろうから、ひょっとしたらこれ が最後のCD-ROM版なのかもしれない。
 OEDは、良くも悪くも、すでに辞書というのを越えて、ひとつの物語となっている。Simon Winchester の The Professor and the Madman 並びに The Meaning of Everything の一読をお勧めする。