Oxford Learner's Thesaurus: a
dictionary of synonyms. 2008. Oxford: UP.
Oxford Advanced Learner's Dictionary は、周知の通り極めて良質の辞書である。そしてもう一冊、Oxford
Collocations dictionary for students of English は、その OALD
に盛り込みきれない類の連語情報を多くの例文を通じてわかりやすく示し、「この語はこう使う」という勘所をピタリ提示してくれる。当然ながら、いずれも英
語学習者の皆さんにお勧めできる高品質のツールである。
その2冊があって、この Oxford Learner's Thesaurus
が出たのであるから、当然両者の良いところを吸い込んでくれているだろうと期待したくなる。その期待は全く裏切られない。これは、良くできてます。
早い話、類義語を並べておいて簡潔な連語情報を示し、OALDの定義を示し、OALDの類義語情報を 'NOTE'
として示してある。「んじゃ、手持ちのネタを貼り付けて編集しただけじゃないの」と言われてしまえばそれまでだが、まぁ類義語辞典を作るというのはそうい
うことですよ。いや、この場合、単なる類義語辞典ではなく、英語を書くため、そして正確・適確に単語を覚えるための見やすくわかりやすい道具が出来てい
る。繰り返すが、これは、良くできてます。
英語に興味のある人なら Longman Language Activator と比べたくなるであろう。確かに Activator
は良くできていた。あれが好みという人もあろう。違うものだから単純な比較は出来ないという意見もあろう。しかし、敢えて比較するならば、この
Oxford Learner's Thesaurus の勝ちということになる。さすがは Oxford、造りと使い勝手が違う。
付属のCD-ROMは、Windows 2000, XP, Vista 並びに Mac OS 10.4
以上(PPC/Intel)対応である。テキスト全文の他、なかなか良くできた類義語ゲームまでついていて楽しめる。この種の辞書付属のソフトにはひどい
のが多いが、私の見る限り(Mac OS 10.4, Intel)キチンと動作する。この辞書の性質上、変にデータを吸い出して Jamming
等のソフトで串刺し検索するといった使い方をするよりは(そんなことをしても OALD
のデータが出るだけであろう)、素直に添付のソフトを使うのが一番だと思われる。何しろこの辞書、CD-ROMも含めて「良くできている」というのが最大
の強みなのだから。
斬新にして独創的なところはないかもしれない。むしろ OALD
データの再編集である。しかし、それをうまくやればこれほど良いものが出来るという、Oxford
流辞書作りの良いところが結集したような辞書である。ここまでやってくれているんだから、ありがたい話ですよ。英語に興味のある人なら、持ち歩きたくなる
かもしれない。ぜひどうぞ。
Oxford Collocations
Dictionary for Students of English. 2002. Oxford: UP.
その名の通り、自然な連語がドカドカ載っている辞書。例えば「非常に細かい(詳しい)」と言いたいとき、detailed
まで思いついたとする。これに very をつけようか、しかし何やら幼稚で困るか、と思った時には、迷わずこれで detailed
を見る。すると、extraordinarily, extremely, highly, immensely, very, fully,
increasingly, fairly, quite ...
等々が、おおまかな意味区分のもと頻度順に並んでおり、「これやっ!私が求めていた英語的言い方はこれやっ!あ、こんなんもある!」と感涙できる。こ
うやって何回か感涙を重ねるうち、自分なりの「英語的発想」ができてきて、ピタリピタリと言葉を選ぼうとするようになる。英和や和英では得られない上達の
手応えであろう。
なお、日本にも『新編英和活用大辞典』(研究社)という大部な労作がある。これはこれで大変な努力の結晶だとは思うが、残念ながらとにかくデータの作り
からして古いし、いかにも日本人が作ったという出来であるから、比較の対象にならないであろう。まぁ、自分でご覧になって、どちらに英語の手触りを感じる
か比べてみてください。
<ちょっと上級者のあなたなら>
The Oxford Dictionary of
English. 2003 Oxford: UP.
1998年に見事なデビューを果たした辞書の改訂版。
学習者向けの辞書ではなく、いわゆる英語圏で使われる「国語辞典」である。したがって、「これが英語だよ。覚えておこうね」式の親切な姿勢に満ちているわ
けではない。しかし、画期的に新しく、明快で、良質の辞書である。記述における規範性が問題となる項目(例えば split
infinitive)も、実に自由かつ客観的に処理している。新語も専門用語もバランス良く収録。これまでのオックスフォード系辞書の伝統にとらわれ
ず、ここまでのものを作ったのは、お見事!というべきであろう。(ハードカバー6801円)
☆オマケ情報:これの米国英語版が The New Oxford American Dictionary であるが、これは Mac OSX
に標準で付いてくる(類義語辞典もついている)。「マックかウインドウズか、はたまたLinuxか」なんて話にあまり興味のない私も、OSXってスゴイ
ねぇと思う。使い勝手が良いので(単語の上にポインタを置いてパッとキーを押すだけで定義が見られるなど)、ついつい使ってしまうのであります…。
<ついに出てくれた>
The Oxford English
Dictionary. (2nd ed, Version 4.0) 2009 Oxford: UP.
言わずと知れたOEDである。第2版のCD-ROMは、出た当初はマック・ウィンドウズ両対応で使い勝手もそこそこだったが、その後ウィンドウズのみ対
応となり、また不正コピーを防止しようとして異様なまでに使い勝手が悪くなってしまった。もちろん全20巻の紙の辞書を使えば良いのであるが、こういう時
代であるし、これをお読みの方は、ほとんどの場合「OEDはコンピュータ上で使いたい」と思っておられることであろう。いろいろな意味で究極の英語辞典な
のに、「おすすめできる」とは言い難かった。
それがこの4.0で思い切ったかのように使い勝手が良くなり、マックにも対応した(特にマック版には特にコピー防止機能がないように思われる)。なんと
太っ腹。まぁ全面改訂の第3版も近いのかなという感じであるが、いずれにせよ使いやすくなったのは嬉しい。
ちなみに私はOED初版(もちろん紙のやつ)とウインドウズ3.1に対応したCD-ROM版も持っているが、その後使おうと思うOEDがなくて困ってい
たのである。同じような思いの方も多かったことであろう。もう悩むことはない。全面的にオンラインで共有する時代も近いであろうから、ひょっとしたらこれ
が最後のCD-ROM版なのかもしれない。
OEDは、良くも悪くも、すでに辞書というのを越えて、ひとつの物語となっている。Simon Winchester の The
Professor and the Madman 並びに The Meaning of Everything
の一読をお勧めする。