(2)和英辞典:「辞典」というより、良質の教科書

<学習辞典>

学研『スーパーアンカー和英辞典(第2版)』(2004年)
 『スーパーアンカー英和』の山岸氏による学習和英辞典。カタカナ語が英語ではないことを示す「危ないカタカナ語」、日本の風物を英語で紹介するコー ナー、対話例まで、とにかくよく出来ている。「おさい銭に10万円あげちゃった」「あほか!」など、悪ノリとも言えそうな例文が並ぶ上、「ださい」も「ケ バい」も「チョーむかつく」も例文入りでズバリ載っている。あまりの出来の良さと面白さに、私は英語の講座で教科書にしてしまった。教科書になる辞書が、 世の中に何冊あるだろうか。
 この改訂版(第2版)では、さらなる悪ノリが進行中で、けっこーヤバイんじゃないの、という危険な表現もたくさん載ってます。おぉ。やるな。(3045 円)

三省堂『グランドセンチュリー和英辞典(第2版)』(2005年)
 『ジーニアス英和』の小西友七氏による学習者向け和英辞典。語法専門の学者が作っているだけあって、随所に親切な解説(これがまたサラリとしていて、押 しつけがましくない!)が盛り込まれており、いわば引くだけでどんどん英語が学べる辞典。その他、「非文情報」(これは誤りだよ、と教えてくれる)「日英 比較」「対話例」など、盛りだくさんである。これはお勧め。(3129円)

研究社『ルミナス和英辞典』(2001年)
 「万葉集」など日本の文化・歴史に関することや、「アンビシャス」などのカタカナ語を載せ、日本人が日本のことを英語で表現することを強く意識した辞 典。もちろん、英語は(多量の)英語に触れてうまくなっていくのが基本だが、こんな一冊があっても便利であろう。(3465円)


<その他>

小学館『プログレッシブ和英辞典(第3版)』(2001年)
 わかりやすい学習辞典としての性格も備えつつ、ある程度の語数を持ったものが欲しいのなら、これが決定版。語義の扱いには定評があり、項目9万、用例 11万でお買得。(3675円)

大修館『ジーニアス和英辞典(第2版)』(2003年)
 これは誠に面白い和英辞典である。日本語を引くと英語が並んでいるところまでは普通の和英辞典と同じなのだが、さらにその英語のそれぞれについて英和辞 典同様の解説や用例が載っている。つまり、これは、「和英和辞典」なのである。
 和英辞典としては失敗作とされている。『ジーニアス英和』に日本語検索をかけて機械的に作ったのが見え見えで、あまり使い道がない。しかし、用例豊富な 類義語辞典という性格もあり、パラパラ見ていると楽しかったりする。英語に興味のある人なら、手元に置きたくなる一冊かも知れない。(3465円)

朝日新聞社『最新日米口語辞典(増補改訂版)』(1982年)
 極めて日本語の達者なアメリカ人(「源氏物語」を英訳した人物)と、非常に英語の達者な日本人(かつてNHK英語会話などでも活躍した通訳の名人)が協 力し、「買いかぶる」「玄関払い」「高嶺の花」「爆弾発言」など、どうやって英語にすれば良いのか迷いそうな表現ばかりを集めた和英辞典。日本語から出発 して英語を書く(話す)のは本来邪道であるが、それをやるならこのぐらいやらなきゃ、といったところか。ただし、題名通り、アメリカ語表現の辞典ではある のでご注意。
 単に言葉の辞典というのを越えて、発想・文化の違いが浮かび上がる出来である。読むほどに頭が柔軟になる。こういう言葉の本質に迫る 辞書は、なかなか古 くならない。「辞典」と名はついているが、寝転がって読むのに最適な読み物と言える。(3990円)