高さ800メートル「太陽熱煙突」は未来のエネルギーか
CNN.co.jp 1月3日(火)15時51分配信
(CNN) 暖かい空気は上へ向かう。夏の暑い日に天井裏へ足を踏み入れてみると実感できる。この基本的な科学現象を利用すれば、都市の電力を丸ごとまかなえるほどのクリーンエネルギーを生み出せるかもしれない。
何百年もの間、温度の高い気体が上昇する性質を建造物の冷却に取り入れてきた。自然換気を利用する建築物「ソーラーチムニー」は、空気の温度差を利用して、熱気を建物の外部へと放出する。オーストラリアの再生エネルギー企業エンバイロミッションを率いるロジャー・デービー氏は、ちょっとした工夫とともに、この現象を発電に利用しようと考えている。
デービー氏は、上昇気流を生み出す高さ800メートル弱の巨大な太陽熱発電用タワー「ソーラーチムニー」を米アリゾナ砂漠に建設することを計画中だ。タワーは32基のタービンを備え、熱でタービンを高速回転させて発電するという。
エンバイロミッションによれば、こうしたタワーで最大200メガワットの電力を生み出せる。これは、10万世帯をまかなえるだけの規模だ。デービー氏は、石炭や原子力、代替エネルギーなどを業界から締め出したいのではなく、堅実で二酸化炭素を排出しない補完的エネルギー源を目指していると説明する。
デービー氏は「他のエネルギー源との差別化で非常に重要なことは、必要なだけ、需要に応じたタイミングで発電できることだ」と説明。夜間は発電できない太陽光発電や、風のない日に発電できない風力発電のような「持続しない」発電とは違うと胸を張る。デービー氏はまた、水を使わなくても発電できるという利点を挙げる。石炭火力発電や原子力発電は大量の水を必要とする。太陽光発電パネルも、発電効率を維持するためには頻繁に洗浄する必要があるという。
今のところデービー氏のタワーは想像上の産物に過ぎない。しかし、同氏によれば、他社がスペインで小型の発電用ソーラーチムニーを7年間稼働させており、技術的には実証されているという。その小型版ソーラーチムニーを製造した独シュライヒ・バーガーマン・アンド・パートナーによれば、発電能力は50キロワット。また、中国国営新華社通信によれば、同国でも2010年に小型の発電用ソーラーチムニーの建設が始まったという。
エンバイロミッションのタワーは、他のタワーと違って、ワイヤによる支えを必要とせず、セメントで作られる。エンバイロミッションによれば、タワーの耐用年数は80年で、初期投資が小さい代替エネルギーと考えられている太陽光パネルの平均寿命よりはるかに長い。
一方で、デービー氏の考えに疑問を呈する専門家もいる。米ノースウエスタン大学のモハンマド・タスリム教授(機械工学)は大きな懸念を2つ指摘する。1つ目は、エンバイロミッションが試算するほど大規模な発電を行えるのか。2つ目は、経済的にも環境的にも負担が小さいかどうかという点だ。
タスリム教授は「根本的には、工学的観点からすれば健全な発想だ。全く稼働しないということもないと思う。しかし、200メガワットという発電能力はピーク時にもかなり難しいのではないだろうか」との見通しを示す。
タスリム教授は当初、タワーの素材に炭素繊維のような複合材料を検討するべきだと考えたという。しかし、大雑把な計算の結論として「複合材料で作られた800メートルの建築物は自重に耐えきれず、(煙突よりも)はるかに複雑な構造が求められることになる」と指摘した。
タワーの建設には環境政策や政治的側面などの障壁もある。デービー氏は母国オーストラリアでの実現を考えたが、米国ではより進めやすいという。過去10年にわたり設計の改良を進めており、投資家の資金を呼び込みたい考えだ。
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何百年もの間、温度の高い気体が上昇する性質を建造物の冷却に取り入れてきた。自然換気を利用する建築物「ソーラーチムニー」は、空気の温度差を利用して、熱気を建物の外部へと放出する。オーストラリアの再生エネルギー企業エンバイロミッションを率いるロジャー・デービー氏は、ちょっとした工夫とともに、この現象を発電に利用しようと考えている。
デービー氏は、上昇気流を生み出す高さ800メートル弱の巨大な太陽熱発電用タワー「ソーラーチムニー」を米アリゾナ砂漠に建設することを計画中だ。タワーは32基のタービンを備え、熱でタービンを高速回転させて発電するという。
エンバイロミッションによれば、こうしたタワーで最大200メガワットの電力を生み出せる。これは、10万世帯をまかなえるだけの規模だ。デービー氏は、石炭や原子力、代替エネルギーなどを業界から締め出したいのではなく、堅実で二酸化炭素を排出しない補完的エネルギー源を目指していると説明する。
デービー氏は「他のエネルギー源との差別化で非常に重要なことは、必要なだけ、需要に応じたタイミングで発電できることだ」と説明。夜間は発電できない太陽光発電や、風のない日に発電できない風力発電のような「持続しない」発電とは違うと胸を張る。デービー氏はまた、水を使わなくても発電できるという利点を挙げる。石炭火力発電や原子力発電は大量の水を必要とする。太陽光発電パネルも、発電効率を維持するためには頻繁に洗浄する必要があるという。
今のところデービー氏のタワーは想像上の産物に過ぎない。しかし、同氏によれば、他社がスペインで小型の発電用ソーラーチムニーを7年間稼働させており、技術的には実証されているという。その小型版ソーラーチムニーを製造した独シュライヒ・バーガーマン・アンド・パートナーによれば、発電能力は50キロワット。また、中国国営新華社通信によれば、同国でも2010年に小型の発電用ソーラーチムニーの建設が始まったという。
エンバイロミッションのタワーは、他のタワーと違って、ワイヤによる支えを必要とせず、セメントで作られる。エンバイロミッションによれば、タワーの耐用年数は80年で、初期投資が小さい代替エネルギーと考えられている太陽光パネルの平均寿命よりはるかに長い。
一方で、デービー氏の考えに疑問を呈する専門家もいる。米ノースウエスタン大学のモハンマド・タスリム教授(機械工学)は大きな懸念を2つ指摘する。1つ目は、エンバイロミッションが試算するほど大規模な発電を行えるのか。2つ目は、経済的にも環境的にも負担が小さいかどうかという点だ。
タスリム教授は「根本的には、工学的観点からすれば健全な発想だ。全く稼働しないということもないと思う。しかし、200メガワットという発電能力はピーク時にもかなり難しいのではないだろうか」との見通しを示す。
タスリム教授は当初、タワーの素材に炭素繊維のような複合材料を検討するべきだと考えたという。しかし、大雑把な計算の結論として「複合材料で作られた800メートルの建築物は自重に耐えきれず、(煙突よりも)はるかに複雑な構造が求められることになる」と指摘した。
タワーの建設には環境政策や政治的側面などの障壁もある。デービー氏は母国オーストラリアでの実現を考えたが、米国ではより進めやすいという。過去10年にわたり設計の改良を進めており、投資家の資金を呼び込みたい考えだ。
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最終更新:1月3日(火)16時12分
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