東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、ことし4月、原子力の規制を担う新たな組織「原子力安全庁」が発足しますが、事故で浮き彫りになった安全審査や初動対応の問題をどう改善するのか、具体策が示されておらず、残り3か月でいかに実効性を持たせられるかが課題となります。
「原子力安全庁」は、推進側の経済産業省から、規制を担当する原子力安全・保安院を切り離し、ほかの規制業務も併せて一元化したうえで、ことし4月、環境省の外局に485人の規模で設けられます。去年の年末に示された予算案では、危機管理機能の強化や安全規制の高度化など4つの分野を重点に、今年度より139億円多い、合わせて504億円が計上されています。しかし、国として津波対策への踏み込んだ指示をしていなかった安全規制の問題や、初動で事故情報の収集や発表が不十分だった問題などについて、どう改善するのか、具体策が示されていません。去年末に公表された、政府の事故調査・検証委員会の中間報告でも、保安院の対応は厳しく批判されていて、専門能力を持つ人材の確保や、安全への意識の向上など、残り3か月でいかに実効性を持たせられるかが課題となります。内閣官房の原子力安全規制組織等改革準備室の森本英香室長は、「原子力の規制への信頼は地に落ちている。人と環境を守るために規制を行うという精神を問い直し、課題の解決を急ぎたい」と話しています。