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【第225回】 2010年10月26日
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山谷剛史 [フリーランスライター]

日本のベストセラーも海賊版で読み放題になる恐れ
脅威の電子書籍ビジネスモデルが中国で増殖中

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 ちなみに、当の中国では、どこかのサイトに無許可で自社のコンテンツをアップされれば、コンテンツホルダーは泣き寝入りすることなく損害賠償を請求する。ただ、外国企業の場合、中国の子会社かパートナーシップを結んだ中国のコンテンツホルダーが提訴するパターンが一般的であり、それらのルートをもたない企業にとって、中国での訴訟のハードルは高い。

 とはいえ、中国発のコンテンツ無料化の波は止まらない。以前、百度の音楽配信サービスが著作権を侵害しているとして、百度を相手取って、ユニバーサル・ミュージック、ソニーBMG、ワーナー・ミュージックの世界的レーベル3社が訴訟を起こしたが、裁判所の「北京第一中級法院」は、百度は音楽ファイルを検索しているだけであり「信息網絡伝播権保護条例」を正しく履行しているとし、レーベル3社は敗訴している。一方で百度と提携したレーベル企業は広告収入という形で提携関係を結び無料配信を実現した。

 コンテンツ配信における広告とは、たとえば中国の動画共有サイトで動画の再生ボタンを押せば、動画再生前にTVCMのような動画広告が流れるものだ。同様に音楽であれば、伴奏の間に音声広告が入る。動画サイトでは海賊版コンテンツでも正規版コンテンツでも広告が入るが、音楽サイトの場合は伴奏の間に広告メッセージが入る音楽ファイルは無料の広告付き正規版である。

中国“電脳街”で売られているmp3、mp4プレーヤー。

 振り返れば、最初に海賊版・正規版の別なく配信し、訴訟沙汰が増えるなど海賊版配信への風当たりが厳しくなると、広告を織り交ぜることで無料を実現するという「中国式正規版コンテンツ配信術」により、中国ではmp3プレーヤーなり動画プレーヤーなり、それらが再生できる携帯電話が普及した経緯がある。

 この過去の「中国式正規版コンテンツ配信術」の流れでいけば、やがて書籍も広告付きで無料で配信されるかもしれない。たとえば本を開くと数ページおきに雑誌のように広告が入るかもしれない。繰り返すが、これは対岸の出来事ではない。傍観しているようならば、日本の出版社は大きなダメージを被ることになるだろう。残された時間は少ない。

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山谷剛史 [フリーランスライター]

日本人の立場から中国のIT事情を紹介する。執筆の他、講演も行う。著書に「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)


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