東京電力福島第一原子力発電所の事故で、放射性物質の広がりを予測するシステムが機能せず、甲状腺の被ばくを避けるヨウ素剤の取り扱いに混乱が生じたことから、国の原子力安全委員会は、ヨウ素剤の服用を指示するかどうかの判断に予測システムは使わないことを決め、空気中の放射線量など別の指標を導入することになりました。
原子力事故の際、甲状腺の被ばくを避けるヨウ素剤を服用するかどうかは、放射性物質の広がりを予測する「SPEEDI」というコンピューターシステムのデータを基に国などが判断し、住民に指示することになっています。しかし、福島第一原発の事故ではシステムが機能せず、国や福島県が判断を示さなかったことから、市町村によってはヨウ素剤の取り扱いに混乱が生じました。このため原子力安全委員会の作業部会は、今後も迅速な対応につながるか疑わしいとして、ヨウ素剤の服用を指示するかどうかの判断に予測システムは使わないことを決めました。代わりに、空気中の放射線量や原子炉の水位などのデータの利用を検討しています。さらに、服用の基準についても国際的な動きに合わせて見直し、1歳児の甲状腺の被ばく線量で今の半分の50ミリシーベルトに引き下げるということです。作業部会では今後、指標についての具体的な数値を検討し、ことし3月までに提言にまとめることにしています。