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[30980] よどんだ夜に聖杯を (Fate×化物語etc)
Name: お化けの庭◆82337570 ID:6f8b8d70
Date: 2011/12/28 20:03
はじめまして。
お化けの庭と申します。

この作品は題名の通り、Fateと他作品とのクロスとなっております。
それぞれのキャラのの設定が不幸になっています。


以下クロス元
なのは
ひぐらし
まどか☆マギカ
シュタインズ・ゲート
化物語


感想やご意見をお待ちしております。



[30980] 1.「喜べ、うぬは運命を変える権利を得た」
Name: お化けの庭◆82337570 ID:6f8b8d70
Date: 2011/12/28 23:40
ジャリッ。

砂を噛んだような気がした。
見渡す限り廃墟が続く。
今は夜のはずなのに、地平線の彼方までぼんやりと見ることができる。
熱気。悪臭。そしてのたうち回る影。
そこは地獄だった。

「これが君の運命だ、岡部倫太郎」

後ろで声がした。

「どういうことだ、インキュベーター」

岡部は振り返ると、かすれた声で問い返した。

「どうもこうもない。これが君の行動の結果だ。第三次世界大戦が勃発したのはすべて君の責任だよ」

岡部は声もなくインキュベーターを睨みつける。




インキュベーター。

それは魔法少女のマスコットのような容姿をしている。
彼はどこからともなくやってきて、これからの未来を告げた。
あくまで予測に過ぎないと言いながらも。
第三次世界大戦が起こる、君の開発したタイムマシンによって。
同時に世界の真実の形も教えられた。

彼は言った。
世界は崩壊に向かっているということ。
それを食い止めているのは僕達であるということ。
方法として少女の魂を犠牲にしているということ。
その少女の魂に絶望を与えてエネルギーに変えているということ。
そのすべてが岡部には信じられない事だった。

しかし、世界はインキュベーターの予言したように進んだ。
クリスを助けるための計画に必要だったタイムマシンの開発と成功。
岡部は時を移動する危険性を実感していたので世間には公表しなかった。
にも関わらず、ひた隠しにしていたはずの技術の分散。
各国でのタイムマシン開発競争。
疑心暗鬼からなる国際情勢の緊張、そして開戦。
小さな国の小競り合いではなく、初めから核兵器を有する大国同士のいがみ合いだった。
世界情勢は、すぐさま核戦争になるのは誰もが予想出来る状況になり、どこかの国が核を使ってから世界が廃墟になるのに一週間も必要なかった。




両者の間にあった沈黙を破ったのはインキュベーターだった。

「何もかも、僕のいう通りだっただろう。さあ、どうするんだい」

インキュベーターは告げた。まるでやっとこのセリフが言えたとでも言うように。

「これが俺の行動の結果なんだな」

岡部は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

「そのとおり」

律儀に答えるインキュベーター。

「契約すれば、この結末を変えられるんだな」

「そのとおり」

ならば、と岡部は黙りこみ、そして、決断する。

「いいだろう、俺はこれから鳳凰院凶真だ。世界を壊し、世界を変える男だ。さあ。俺と契約しろ、インキュベーター。聖杯を手に入れてやる」





1.「喜べ、そなたは運命を変える権利を得た」






思い出話をしよう。

あれは僕こと阿良々木暦が、最愛の人、ひたぎを三途の川に見送ってから五十年は過ぎたあたりだと思う。
浮気したら殺すわよ、と言われていたので浮気はしていない、はず。
実際、僕の周りには女性どうこうという話はさらさらなく、世界を渡り歩いていた。
吸血鬼に近い存在になってしまった僕は、いつ死ねるかもわからないのだが、最後まで生きることを君は許してくれた。
いつまでかかっても構わない。そのかわり、僕の見たこと感じたことをたくさん話してくれといっていた。
出会った当時に比べてだいぶ丸くなったんだなぁと今更ながらに思う。
ちなみにその時は、忍と絶賛喧嘩中で影の中にはいない。
というか、忍はすでに僕の中にいる必要は皆無なので、気が向いたら勝手に会いに来る。
なんて勝手なやつだ。

それはそうとこの神社は懐かしい。
ここから忍と過去に飛んだんだっけ。
僕はとある朽ちた神社で魔方陣を書いていた。
世界のあちこちを飛び回るうちに(そう、文字通り飛び回るうちに)ふと時間を渡ってみたいと思ってしまったのだ。
何かに惹かれるように、何かに誘われるかのように。
何かがあったら忍を目印にして帰ればいいと気楽に。
僕は何の抵抗も覚えずに時間を渡ってしまった。





時間を超えた時、はじめに感じたのは強烈な臭いだった。
焼肉屋で覚えのあるような、それでいて食欲の全くわかない臭いは戦場で嗅いだ臭いだった。

次に気になったのが闇だった。
あたり一面が草木も眠る丑三つ時。
何一つ、それこそ草木の呼吸音さえ聞こえない。
そして月が出ていない、星が夜道を照らす新月の闇だった。
文明社会の世の中のどこにこんな世界があるだろうか。

僕は時渡に失敗したと直感した。
少なくとも僕の元いた時間よりもはるかに未来か、過去かに来てしまった、と。
でも、僕はこれっぽっちも悲観しなかった。
と言うより出来なかった。
吸血鬼の、しかも最凶にして冷徹なキスショットの眷属になって、僕に敵はいない、世の中の仕組みを知ったと勘違いしていたからだ。
自己分析もできないくらいに、慢心していた。
この時早くに絶望していたら、わずかでも危機を感じていたら、ほんの少しは運命を変えられたかもしれないと考えると、ちょっともったいなかったなぁと思う。



くらいなぁここどこだよ面白いなぁと気楽に歩いていると暗闇の中から声がした。
「うぬよ」

だから

「うぬよ、うぬよ。こっちじゃ」

だから、そんなに呼ばれても俺は人間じゃなくて……え。
すごく懐かし呼ばれ方をした。
されてしまった。
つい、反応してしまった。
慌てて声のした暗闇の方に注意を向ける。
そこはやっぱり黒く塗りつぶされていたが、よく見るとうっすらと、本当にかすかに。

星の光を受けて、女性の金髪が光り輝いていた。
二十歳前後だろうか。
素人目にも高級なゴシックドレスを着ていて、でもそれは下手をすると雑巾よりもぼろぼろに汚れて、破けていて。
そんな女性がアスファルトの地面に、疲労困憊といった様子で、座り込んでいた。
座り込んでいた、というのもあまりいい表現ではないかもしれない。
なぜなら彼女は、彼女の四肢を持ち合わせておらず、座るという動作が出来なかったからだ。
肩からざっくり、足の付根からざっくり。
きれいに切り取られていた。
そんな体で、彼女は鋭く冷たい視線で僕を威嚇するかのように睨みつけていた。

「うぬよ」

まるで前に経験したことのある状況だった。

「うぬよ、血をくれ」

初めてあったのにこの高慢な態度。

「キスショット、なのか……」

僕は信じられなかった。

「なんじゃ、わしを知っておるのか。いかにも。我が名はキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。最強にして最凶にして最恐の吸血鬼じゃ。」

こんな状況、普通じゃない。
初対面で、この状況で、この態度。
普通の人間だったら尻尾を巻いて逃げ出すに決まってる。
あ、今僕自分を普通じゃないって認めてしまった……。

「そこな人間、わしを知っておるのじゃろう、早く血をよこせ。わしを助ける権利を与えてやる」

あの時の僕は気が付かなかったが、彼女は精一杯虚勢をはっていた。
さして寒いわけでもないのに、体が震えていたんだから。
彼女は助けを求めるときでも、高慢な態度を取るしかなかったんだろう。
自分が自分で在り続けるためには。
僕は黙って彼女の前に膝を付くと彼女の口元に首を差し出した。

彼女は驚きの声を上げる。

「おぬし、死ぬ気か」

あまりにも意外だったのだろう。
馬鹿な事をするなと思いとどまらせるように聞こえた。
自分で望んだことにもかかわらず、だ。

「いいよ、僕はこういう役回りなんだ。それに君は今にも死にそうな顔をしている。僕は君の力になりたい」

それに君なら大丈夫だ信用できる、とは恥ずかしから言わない。

「……」

彼女はしばらく考え込んだあと、

「ありがとう、いただきます」

といって僕の首筋にあーんと噛み付いた。
とても大事そうに、血の一滴もこぼさないように静かに血を吸い始めた。
僕の意識は眠りに引き込まれていった。






やっぱり生きていた。
目を覚ましたとき、僕は壁にもたれかかりながら眠っていた。
そして幼……、忍が僕に寄りかかりながら眠っていた。
いや、まだキスショットなのか。

年齢は十歳くらいかな。
ふにゃふにゃのほっぺた。
綺麗な、身長くらいある長い髪。
幸せそうに眠っている。
口から八重歯がちょこんとはみ出している。
そしてもちもちっとしたほお。
またこんなに小さくなって、可愛いてなんのって。
乳繰り回したくなる。
襲いたくなる。

でも僕は大人なんだ、状況の把握が優先だ、と自分に喝をいれる。

ここはどこだろう。
昔だったら自分の部屋じゃない、なんて言っていたかもしれないけれど、五十年の月日は伊達じゃなかった。
現実から逃避していない。

予定調和だ。

ここにはキスショットが連れてきてくれたであろう。
一般に廃墟といってまず問題ないと思う。
部屋の蛍光灯はすべて死んでいたし、非常口の白い人の下半身がなかった。
窓ガラスもすべて割れていて、そこからツタが侵入しているから、少なくとも人が普段住んでいる様子ではない。
僕は立ち上がろうとしたが、キスショットがまだ僕に寄りかかっているのを思い出した。

「おい、そろそろ起きろ」

ほっぺたをつんつんする。

「うぅ、あと五分……」

やべぇ無茶苦茶かわいい。
もっとつんつんする。

「ごめんなさい、わしが悪かった、ぐすん」

なんだかすごい罪悪感に襲われた。

よし。
気持ちを切り替える。
まだ起きないキスショットを横たえると僕は立ち上がった。
一日中眠っていたのだろうか。
腕時計を確認したところ七時半だった。
これだけじゃはっきりとした時間がわからない。
壊れた窓から光が入ってきていないので夜だろうが。
僕は足音を立てないようにドアから出ていこうとする。

「なんじゃ、起きておったかぬし様よ。えらく早起きじゃな」

僕の背後から声がした。

「なんだ、起きてたのか」

「うむ、命の恩人がおるそばで寝坊をするはずがなかろうて。それと、忠告をせねばならんかったからな。間違っても太陽の光を浴びるなよ。ぬしは吸血鬼になったのじゃからな」

きゅうけつきになったって……。

「うむ」

彼女は頷いた。
そして腕を組んで偉そうに胸をはり、高らかと宣言した。

「われはキスショット・アセロラロリオン・ハートアンダーブレード。ハートアンダーブレードと呼ぶが良い。そしてうぬはその眷属になったのだ。喜べ、うぬは運命を変える権利を得た」

僕は違和感を感じた。
その違和感はこの世界に来た時すぐに気付くこどが出来たのに、いまさらになってやっと感じた。

「ちょっと待て、吸血鬼になったってどういうことだ」

「わからん奴じゃな、わしの名前も知っておったというのに。吸血鬼に血を吸われるということは、吸血鬼になるということじゃ」

駄目だ、全然話が噛み合っていない。
僕が言いたいのはそんな事じゃない。

「違う、そうじゃない。僕は元から吸血鬼だったはずだ」
僕がそう言うと、彼女は心底不思議そうな顔をした。

「何バカのことを言っておる。うぬは正真正銘、普通の人間じゃ。五百年人の血を飲み続けていたわしが言うんじゃ、間違いない。まあうぬの血はわし好みではあったがな」

僕は言葉が出なかった。
何のことはない。
時を渡ったときすでに、僕は闇のなかでモノが見えなかった。
忍とのラインを感じられなかった。

吸血鬼としての力を失っていたのだ。

このままでは、元の世界を見つけることができない。
僕のひたぎのいた世界線に帰れない。
僕の沈黙を、吸血鬼になったショックと勘違いしたのか、キスショットはニンマリと笑ってこういった。

「ようこそ、夜の世界へ」

「……っ」

僕は吸血鬼の何たるかを、少なくとも五十年分は知っている。
影が出来るかどうかなど些細な事だし、生きるために何が必要かも知っている。
それよりも、これからどうするかが重要だった。

「ここは……どこなんだ」

僕はパニックを抑えるために、彼女に当たり障りのない質問をした。

「む」

彼女は身長ほどもある金髪を翻しながら吸血鬼は言う。

「ここはどこだろうな。わしにもわからん。この世界がこんなことになってからだいぶたったからな。今は廃墟といって差支えのない建物の二階じゃよ」

「そうか……塾あとじゃないんだな」

「塾あと、なんじゃその『塾』とやらは」

廃墟、か。
あの学習塾あとでないことがわかってしまった。
やっぱり都合よくはいかない。

「次の質問、さっきの運命を変える権利ってなんだ。やっぱり吸血鬼ってそんなにすごいのか」

吸血鬼については十分に知っているつもりだが、そんな質問でもしないと僕は殺到してしまうだろう。
だが、キスショットの答えは予想の斜め上をいっていた。

「吸血鬼の力はたしかにすごい。しかし、それだけじゃ。運命をどうこうするだけの力などありはせん。わしの言いたいことはそうじゃない。もっと偉大な力じゃ」

「偉大な、なんだって」

「力じゃ。それを『手に入れる』権利を得たじゃよ。……どうやら気の早い連中がもう始めたようじゃ。うん、うぬは何もわかっていなさそうだから実物を見たほうが良かろう。ついてこい、アレを見せてやる」

そう言うと彼女はすたすたと部屋を出ていく。
慌てて追いかける僕。
彼女は階段を登っていた。
どうやら屋上にようがあるらしい。



階段の終点はビルの四階だった。
そこでキスショットは僕に屋根を突き破って登るように言った。
僕が吸血鬼の力をつかこなしているのをみて彼女はしきりに不思議がっていた。
吹きさらしの屋上はなかなかにぼろぼろだったが、外の景色は改めてすごかった。
元はビルの密集する都会だったのだと推測できる。
でも今、そこはビル群の原型を保っていなかった。
どのビルも途中で途切れたり、傾いたり。
あまりにも僕の知る世界とはかけ離れていた。

キスショットはしばらく何かを探しているようだったが、しばらくするとおもむろ
にビルの合間を指さした。

「アレじゃ、アレが見えるかうぬよ。あれが、力を手にいれる、儀式じゃ」

「お……おい、なんだ、何がどうなってやがる」

彼女の指さしたところでは、ときどきチカチカ光っていた。
吸血鬼の視力をもって初めて見れる距離。
そこで信じられない力を持った者どうしが、ぶつかり合っていた。
どちらも女性。
片方は剣、片方は槍、いや、杖を振り回している。
どちらも技量が普通じゃなかった。

それらは全盛期の忍か、それ以上の力を持っていると直感した。

そして杖を持っている女性は、女の子を庇いながら戦っているようだった。
ちょうど、今のキスショットとと同じ年頃の女の子を。

「可哀想に。あんな年頃の子どもまでが殺し合いに参加しているとはな。世は非常じゃな」

「殺し合いだって。あんな子どもまでが、殺し合いに参加しているだと。どういうことだ、説明しろ、キスショット」

僕は、現状が理解できなかった。
殺し合い、殺し合いだって。

「だから、アレは儀式なんじゃ。聖杯といってな、絶対の力を持つ道具を作るとともに、誰が手に入れるかを決める儀式じゃ。七人のマスターと七人の英霊が集まり、聖杯をめぐって殺し合いを行う、儀式じゃ」

「そんな、殺し合いだなんて。あんな子どもまでが。それと、僕がどう関係するんだ」

嫌な予感がした。
今までで一番危機を感じた。

「どうってわからん奴じゃな。うぬもアレに参加する権利を得たのじゃよ」
そしてキスショットは今までにないほど丁寧に、僕に向かってお辞儀をしてみせた。



「改めて自己紹介をしよう。われはキスショット・アセロラロリオン・ハートアンダーブレード。最強にして最凶にして最恐の吸血鬼。そして、こたびの聖杯戦争ではアサシンのクラスを拝命している。うぬよ、いや『ぬし様』よ。ご命令を何なりと」


そう言って彼女は、冷徹に、笑った。







[30980] 2.「大丈夫、すぐに始末してあげる」
Name: お化けの庭◆82337570 ID:6f8b8d70
Date: 2011/12/28 23:43
俺は牧瀬紅莉栖の救出に失敗した。

この結果は受け入れられない
しかし、この結末は変えられない。
そうした願いを世界が聞きつけたんだとあとから遠坂に教えてもらった。
だがその時俺は絶望して、何も考えられなくなった。
放心状態のまま、鈴羽に引きずられるようにタイムマシンに乗ったのは覚えている。
そして我に返った時、俺は戦場のまっただ中にいた。

戦場。
そこは灼熱の銃弾が飛び交い、さっきまで使っていた腕が一瞬で吹き飛ぶ場所。
昨日生きていた仲間が今日は骨だけになっている場所。
平和な日本でのうのうと生きていた俺には、生き残ることさえが厳しい環境。
そんなところに突然放り出された。
突然全身を襲う爆音。
おそらく後ろで大きな爆発があったのだろう。
恐る恐る振り返ると、黒い塊がたくさん転がっていた。
それが何を意味しているかを理解した瞬間、俺は居ても立ってもいられず闇雲にかけ出した。

爆音や銃声がそこかしこでなっていた。

ただ、がむしゃらに走る。

突然誰かが肩にぶつかった。

すまない、と叫んだ気がする。

急に肩が熱くなった。

熱い何かが押し付けられている。

離せ、離せ。

いや、火がついたのか。

もう走ってはいられなかった。

火を消さなければ。

地べたを転がりまわる。

熱い、熱い。

夢中で右肩を叩く。

叩いていた指が真っ赤に染まるのを見て、やっと銃で撃たれたのだとわかった。

死がすぐ後ろまで迫っているのを実感した。


「あんたそこで何やってるの」


突然、天使の声がした。
すごく耳に心地よい音だった。

「ちょっとあんた、怪我してるじゃない。援護するわ、そこまで走って」

天使は俺に走れと要求する。

そこまで。

あそこの影までか。

ざっと百メートルはあるだろうか。

今の俺に走れるとは思えなかった。

しかし、この声に従わないと死ぬのも間違いない。

「はやく」

また声がした。

心を決め、再び走りだした。
最後の力を振り絞り、建物の影に倒れ込んだ。
力尽きたのか。
そのまま意識が遠のいていく。

「あんたよく……」

薄れ行く意識の中で黒い影が俺に話しかけている気がした。






2.「大丈夫、すぐに始末してあげる」






次に目が覚めた時、そばのいる彼女を見て、やっぱり天使だと思った。
顔も十分に整っているし、体つきも悪くない。
特に髪が綺麗だった。
鮮やかな黒い髪。
後ろでざっくばらんにまとめており、黒いリボンと相まってとても印象的だった。
ふと、彼女には黒が似合うと思った。

彼女はずっと看病してくれていたのだろう。
俺の寝ているそばで壁にもたれかかりながらウツラウツラしていた。
起こしてはかわいそうだと、静かにしておくつもりだった。
が、寝返りをうとうとして痛みに思わず声を上げてしまった。
彼女は急に飛び起きると、厳しい目つきで周りを警戒した。
しかし、声の出所を察すると表情を和らげて話しかけてきた。

「あら、おはようよく眠れた」

予想通り、あの時の綺麗な声だった。

「あ、ああ。ありがとう。おかげで助かった」

俺は慌てて感謝の言葉を述べる。

「あなたはうなされていて大変だったんだから。よく耐えたわね」
そう言いながら彼女は俺の傷を確認し始める。

「地べたに寝かせてごめんなさい、寝心地はあんまりよくなかったでしょう。今事情があって実家に帰れなくて」

「いや、そんなことはない。ゆめうつつに君が看病してくれたのを覚えている。君のコートまでかけてもらって。何から何まですまない」

いくら感謝してもしきれない。
そう思って見つめると慣れていないのだろうか、少し照れていた。

「まあ悪い気はしないわね、そんなふうに行ってもらえると。なぜか白衣を着ている不審者さんでも。ああそうだ、私は遠坂凛。あなたは」

「鳳っ……、岡部倫太郎だ」

「ん、岡部倫太郎……。そう。ねえ、お腹空いてるでしょう。なにか作ってくるわ、まってて」

そう言うと彼女は部屋を出ていった。
部屋といってもさびれた場所だった。
窓が抜け落ち、外から陽の光がさんさんと降り注いでいる。
しばらく誰も住んでいなかったことが伺える。
実家に帰れないといっていたのと関係しているのかもしれない。

実家。

急に俺は今置かれている現状を思い出した。
今はいつで、ここはどこだ。
なぜ俺は、戦場にいる。
俺はつい、いつも感情が高ぶったときの癖で携帯を取り出し、痛い行為をしてしまう。

「俺だ。現状の整理ができない、説明を要求する。なに、こちらの状況を説明しろだと。……、わかった、こちらは」

後ろでガチャンと食器を落とす音がした。
遠坂が、立っていた。

「せっかく助けた相手がスパイだったなんてがっかりだわ」

そう言って遠坂はおもむろに何かを取り出した。


銃だった。


「ちがう、違うんだ」

「両手を上げて後ろを向きなさい」

彼女の声が恐ろしくはっきりと聞こえた。

「動きが素人のようだったからまんまと騙されたわ。大丈夫、すぐに始末してあげる。ああ、その前に説明責任は果たしてもらうわ、傷の手当てをした分だけね。じゃあまず、どこに、何を、どういう目的で伝えようとしていたのかを教えて」

彼女は天使のような笑みを浮かべながら銃を突きつけてくる。
彼女は微笑んでいた。

「いや、言わなくてもいいわよ。すぐに言いたくなるようにしてあげるから」

「ち、ちがう、誤解だっ」

「何が誤解だっていうの。その携帯はなに。その使用目的は誰の目にも一目瞭然よ」

「いや、これは違う」

彼女に見せようとして動いたのがまずかった。
彼女は俺が動こうとするのを見ると、即座に引き金を引いた。

「動かないことね。次はあなたが、その携帯のようになるわ」

俺の手にあった携帯は、銃弾を受けて、粉々に、砕け散っていた。



[30980] 3.「最初に命じたはずよキャスター。どうして令呪に逆らおうとするの」
Name: お化けの庭◆82337570 ID:6f8b8d70
Date: 2011/12/29 00:58
いつもとは違う世界。
同じ世界を何度も何度も、それこそ飽きるほど繰り返していた私にとって、何もない廃墟も楽園であり、喜びだった。
そう、喜びだったのだ。

「ばかやろう」

上官様が私を殴った。
私の体は宙を舞った。
大の大人が小さな子どもに手を上げるという行為。
それを恥とも思わない輩が、今私の目の前にいる。

「なぜ他のガキを使わない。貴様はどれだけ無能なのだ」

無能ときたか。
そんなこと決まっている。
戦場であの子たちに何が出来るというのか。
何をさせろというのだ。
生きることさえままならなかったというのに。
おちおち殺されに行くようなものだ。

「はい、自分一人で十分事足りると判断したからであります」

すぐさま立ち上がり、起立して答える私。

「ではなぜ失敗したのだ。貴様はマスター、強力なサーヴァントを従えているというのに」

「はい、相手のサーヴァントの出方をうかがってしました。敵のサーヴァントの姿さえ、未だに不明です。加えて私のサーヴァントはキャスターです。強引な攻めは敗北に直結します」

「ふん、そのためのガキどもだろうが」

再び殴られる私。

「何のためにお前たちを養ってやっていると思っている」

誰も養ってくれなどと頼んでいない。
私たちならあの廃墟でも生きていけたんだ。
誰が助けてくれと願った。
誰が拾ってくれとすがった。

「何のためにお前たちが存在するとおもっているんだ」

「はい、わたくし古手梨花は聖杯を勝ち取るために存在します。そのためにはいかなる犠牲もためらいません」

ちがう、私はただ、生きているだけだ。
理由なんて必要ない。

「よろしい。敵はただ一人だ。ただし、一人を持ってしても排除するのが難しい、というのであれば、なあ」

上官様が私を嫌な目付きで舐め回す。

「お待ちください、先ほどの失態はすべてわたくしにあります。挽回の機会をお与えください」

あの子たちを人質に取るだなんて。

「ふん、いいだろう。私も鬼ではないからな。次はないぞ」

上官様は不愉快な笑みを浮かべながら部屋を出ていった。






3.最初に命じたはずよキャスター。どうして令呪に逆らおうとするの






ドアが閉まるとすぐに抑えていた感情が吹き出す。
ちくしょうちくしょうちくしょう。
なんでなんでなんで。
もうたってなんて立っていられなかった。

「どうして、世界はこんなにも理不尽なの」

「ねぇ、どうして私を呼んでくれないの」

実体化したキャスターが後ろから抱きしめてくれた。
キャスターの声は泣いていた。
私のために泣いてくれているのかな。
頬の痛みが引いていく。
また癒しの術をかけてくれているのだろう。
でもたぶん、それだけじゃない。

「あそこであなたの力を使ったら、私はSERNに追われる身になっちゃう。そうしたら、もうあの子たちを守ってあげられない。まだ6つにもなっていない子だっているのよ。私がいなくなったら、あの子たちはどうやって生きていけばいい」

そう。
結局のところ私たちは、生活を保護してくれる存在がいないと存在を許されない。
それほどこの世界は甘くはないのだ。

「SERNを抜ければいいだけの話じゃない」

「無理よ、何度も話したじゃない。いい加減にして、あなたはもう大人なんでしょう。この組織は世界を牛耳っているのよ。逃げ切れるはずがない」

あなたは優しい。
いつでも私を一番に考えてくれている。
でも、それは私の望む一番じゃない。

「わかるよ、でも、わからない。梨花ちゃんは」

「あなたは、私の支持に従ってくれていればいい。最初に命じたはずよキャスター。どうして令呪に逆らおうとするの」

「にゃはは、そうだった。ごめんね」

そう、私は彼女に令呪を使った。
私の名に絶対に従うように、と。
令呪は絶対的なものだが、瞬発的にしか力を発揮しない。
慢性的な願いに対して、意味はほとんどないのだ。
両者の関係を悪くする以外には何も。
SERNにそう強いられた。
逆らわなかったのは、あの生活には戻れない。
気がつけば、しっかりと軍人として『調教』され、上には逆らえないようになっていた。
それがはっきりわかったからだった。
初対面の相手に、しかも子どもと大人のとの間で、そんなことを命じられても。
何もなかったように接してくれるキャスターには感謝してもしきれない。

「でもね、本当につらくなったら、いつでも泣いていいんだよ」

彼女は本当におおきい。
キャスターの温かい声が耳に心地よい。
あったかいなぁ。

「ありがとう、なのは。もう少しだけこのままで」

キャスターのぬくもりを体いっぱいに感じながら、私はすこしだけ泣いた。




「さあ、今日こそ目標を仕留めるわよ。キャスター、準備はいい」

「もちろん、いつでも大丈夫だよ」

組織の末端は腐っていても、SERNはSERNだった。
目標であった彼女、遠坂凛の潜伏地点を割り出していた。
現場付近の結界もしっかりと貼られており、救援は期待できないが、代わりに敵の増援はないと考えていいようだ。
だだし人のはった結界だから、サーヴァントにどこまで通用するかは未知数だそうだ。
つまり人間には効果があるということ。

時間は夜明け前。
襲撃するには絶好の時間帯。
問題ない。
心を空にする。
私は装備を確認し、キャスターの力を借りて廃墟に突入した。

ここは二階。


目標は不在。


白衣の男。


排除、失敗。


男は逃走を選択。


キャスターに指示、遠坂を探せ。


男の追撃を選択。


男は銃を乱射。


いち。


にい。


さん。


換装。


今、排除、失敗。


逃走。


追跡。


一階。


目標をロスト。


キャスター、検索。


男は外に逃走したよ


追跡。


外。


慎重を期す。


手榴弾。


爆破。


目標を発見。


逃走。


追跡。


排除、失敗。


目標の負傷を確認。


目標をロスト。


物陰。


物音。


回避。


あぶなかった、狙撃か。


心が乱れてしまった。

「キャスター」

何をしていたんだ。

「すみません、マスター」

キャスターに狙撃があった方向に向かわせる。
どうせ、すでに撤退済みだろうが。
しかし、収穫はあった。
どうやら報告にあった参加候補者のようだ。

「おい、お前。なにか言い残したことはあるか」

返事はなかった。
怯えているのが手に取るようにわかる。

「じゃあ、ばいばい、白衣のお兄ちゃん」

引き金を引く。
しかし私の意思に反して銃から弾はでなかった。

え。

指が、なくなっている。

「ごめん、まだ殺させるわけにはいかなかったんだよね」

おどけた声がした。
気がつけば、男の前に、剣を持った女性が立っていた。
彼の後ろには使用後と思われる魔方陣があった。
夜明け前を選んだことが裏目に出た。
油断した。

目の前の女が口をひらく。

「まにあってよかったよ、マスター。さぁて、これからは魔法少女さやかちゃんが、ばんばん頑張っちゃいますからね」

まずい、間に合わない。

迷っている暇はなかった。

令呪をもって命ず。

「はやく助けに来い、キャスターっ」









やっと参加者全員がそろったね。

ねぇ、聞いてもいいかい。

なぜ聖杯戦争を始めるのに十年以上もの時間をかけたんだい。

ん、力を手に入れるためだって。

どうしてだい、戦力ならすでに……なるほどね。

確かに君の言うとおり、このゲームは静観を決め込んだほうが、戦いにおいて有利だ。

ああ、そうか。君は大量の駒が欲しかったんだね。

穴熊を決め込んだマスターを巣穴から無傷で追い出すために。

だからSERNで上り詰めたんだね。そして、子ども達を文字通り神へのお供え物にした、と。

うん、今の君にぴったりの言葉があるよ。

……たしかに僕は人間のもつ感情と言うものがどういうものかはわからない。

でもね、僕も長い間人間を観察してきたから、人間がこんな話を聞かされた時、どんな反応をするか予測はできるんだよ。

今の君はね、人間が言うところの『悪魔』ってやつにそっくりだ。

どうだい、あっているかい。

……ひどいなぁそんなに笑わなくてもいいじゃないか。

それに僕も今は聖杯の定義する『悪魔』だ。

……大丈夫、自由だった昔ならまだしも、枠に縛られている今の僕に戦況のすべてを俯瞰することなんてできやしない。

まあ、安心したよ。

僕を理解してくれる人間は少ないからね。

今の僕は本当に何もできやしない。

戦えないし、恐怖という感情もないから危険から逃げもしないだろう。

僕に戦えと命じない、かつ、考えを共感できる君みたいな人が僕のマスターでよかった。

聖杯をよろしくたのむよ、鳳凰院凶真






[30980] 4.「アーチャー、これってひょっとして……」
Name: お化けの庭◆82337570 ID:6f8b8d70
Date: 2012/01/02 01:21
父様、ご無沙汰しております。

このたび、私、遠坂凛は聖杯戦争に参加することを決めました。

父様と同じ舞台に立てることを嬉しく思います。

そのご報告を兼ねてご挨拶に参りました。

父様は私に生き残れと常々おっしゃっていましたね。

死んだらすべてお終いだ、わざわざ、死地に赴くようなことをするな、と。

それでも私は聖杯戦争に参加します。

私の力だけではどうにもならない願いがあるのです。

そしてその願いは、何が何でも叶えないといけないたぐいの願いなのです。

そのために、父様に教えていただいた知識を使うことをお許し下さい。

大丈夫です、勝算はあります。

世界情勢は変わっても、魔術師のあり方を全く変化がありませんから。

父様が日頃からおっしゃっていたSERNへの対策も怠っていません。

必ずや生きて戻ることをお約束します。

ただひとつ気がかりなのは、この決断を父様が許してくださるかということです。

私は思うのです。

人は何のために存在するのか、と。

今の私は、父様に拾っていただいたからこそ、ここに存在しています。

あの時の私は、父を失い、母を失い、また自身も死ぬのだと思っておりました。

その運命から救ってくださったのは、父様なんです。

そして父様は私を救い、養ってくださった理由を、ご自分の幸せのためだ、自己満足だ、とおっしゃっていました。

しかし、私にとって命を拾っていだだいた事実は揺るぎないものですし、父様と過ごした日々は幸せなものでした。

私は、父様からたくさんの幸せをいただいておりました。

父様は自身の幸せを追い求め、その結果、私を幸せにしてくれました。

だから、経験の浅い私には、人は己の幸せを追求するために存在する、と思えてなりません。

この考えは間違っているのかもしれません。

ですが、今の私の精一杯の答えです。

私は自分の幸せのために参加するのですから、きっと、許してくださると信じています。

それでは、行ってきます。






少女は墓の前で黙祷を捧げたのち、何かを心に決めたような綺麗な顔をして立ち去った。
彼女が祈りっていた墓石には『衛宮切嗣』と刻まれていた。







4.「アーチャー、これってひょっとして……」



慣れない戦場に入って数日。
やはりここは、生きていくことさえ難しい世界だった。
特に孤独というのはつらいものだった。
警戒、作戦、戦闘。
すべてを一人でこなさなければならないからだ。
先ほど見回りの途中であった、SERNからの奇襲。
アーチャーが知らせてくれなければ、殺されていたかもしれない。
父様から受け継いだ知識のすべてを、ここで再現出来なければ生き残れない。

やはり、仲間が欲しい。
出来ればSERNは魔術関係者でなく、敵になる心配のない仲間が。
地元のゲリラを利用しようかとも思ったが、訓練も受けていない人間が群れると、手が付けられなくなるから却下した。
今回の争奪戦への参加、早まっただろうか。

それにしても、魔術否定派のはずのSERNがマスターを投入してきたことには驚いた。
しかもマスターがあんな子どもだなんて。
今の世界を支配する組織は、やっぱりやることがちがう。

ともあれ、子どもまでもを疑ってかからないといけないと実感出来たのは収穫だった。
早く気持ちを切り替えなければ。
私の聖杯戦争は始まったばかりなのだから。




彼を発見した時から、違和感を感じてはいた。
薄汚れた、しかし戦場にいるにしては綺麗な白衣をまとっていたからだ。
しかも挙動不審にあたりを見回している。
彼の後ろで爆発があった。
おそらくゲリラとSERNとの交戦だろう。
彼は爆音を聞いて初めて、状況を理解したらしい。
彼は怯えるように走りだした。
パニックになっているのかもしれない。
私はなんだか放っておけなくて、後をつけていく。
彼が流れ弾にあたった時、そこは戦場にもかかわらず叫んでしまった。

「あんたそこで何やってるの」

叫んでから、しまった、と思う。
しかし後の祭りだった。
私も甘い。
彼に駆け寄る。
彼は肩を抑えて地面を転げまわっていた。

「ちょっとあんた、怪我してるじゃない」

さっきの声が誰かに気づかれたかもしれない。
ここで治療するのは危ない。

「援護するわ、そこまで走って」

すぐそこの廃墟を指さす。
彼は痛みで頭が回らないのかなかなか動いてくれなかった。
辛いのはわかる、でも。

「はやく」

思わず声を強めてしまう。
やっと状況がつかめたのか彼はのろのろと走りだした。
私も周りを警戒しながら彼に続く。
彼は廃墟にたどり着くと、力尽きて倒れてしまった。

「あんた、よく頑張ったわね。あとは任せて、安心して眠りなさい」

まあどうせ、聞こえてないでしょうけど。




彼の時間の速度を二倍に遅らせると、私の工房に彼を運んだ。
工房といっても、聖杯戦争の間だけのまがい物で、見た目はそのあたりの廃墟と変わらない。
実際、周りの廃墟との違いは、見つかりにくいように結界をはっただけである。

彼は肩を撃たれていたようだが、弾は貫通していたので傷は塞ぐだけですんだ。
ただ、彼の着ていた白衣の腹の部分にも血がついていたときは、ぞっとしなかったが。
幸い彼の血ではなかったが、どうやらいろいろ事情がありそうだ。

それと彼の右手の甲に面白い物を見つけた。

「アーチャー、これってひょっとして……」

「令呪のようだな」

頬が緩むのを自覚した。
どうやら私はとんでもない拾い物をしたらしい。
運が向いてきている。
今の状況を考えると、もしサーヴァントがいれば彼を助けに来るはずだ。
彼はまだ、契約していない。
しかも先ほどの慌てぶり。
戦場はおろか、聖杯戦争も知らないかもしれない。
ひょっとして、聖杯が呼び寄せたのかな。
有り得ない話ではない。
聖杯は英霊を呼び寄せ、実体化までさせてしまう。
どこからか、人間一人連れてくることくらい簡単だろう。
私は聖杯への期待が一層高まるのを抑え切れなかった。



彼が目を覚ます前に、魔術で彼の令呪を隠しておく。
彼がこの痣の意味を知っていても知らなくても、こっちのほうが交渉を有利に進められると考えたからだ。
ついでに時間の歩みを元に戻しておいた。
この魔術は、かけられた人に負担をかけてしまうから、眠っている間に済ませてあげるのが親切というものだろう。
父様から教えてもらった魔術を改良したものだ。
しかしこれはなかなかに魔力を消費してしまう。
さて、私もひと眠りするかな。




[30980] 5.「お詫びと言ってはなんだけど、ここで生きる術を教えて上げるわ」
Name: お化けの庭◆82337570 ID:6f8b8d70
Date: 2012/01/02 07:44
突然の悲鳴に私は飛び起きる。
襲撃か。
私の結界に反応しないなんて。
無意識に愛用の銃を手に取り、周りを見渡す。
あれ、何も起こっていない。
白衣の彼がマジマジと私を見ていた。
どうやら勘違いだったようだ。
顔が顔がほてるのを感じる。

「あら、おはようよく眠れた」
ごまかすように言う私。

「あ、ああ。ありがとう。おかげで助かった」

ふむ、少なくとも状況がわからない程のバカではないようだ。

「あなたはうなされていて大変だったんだから。よく耐えたわね」

そう言いながら彼の方の包帯を解いていく。
うん、良い感じに傷がふさがってきている。
さすが私。

「地べたに寝かせてごめんなさい、寝心地はあんまりよくなかったでしょう。今事情があって実家に帰れなくて」

「いや、そんなことはない。ゆめうつつに君が看病してくれたのを覚えている。君のコートまでかけてもらって。何から何まですまない」

いやね、私が術を解いたときの激痛に無反応だったら怖いんだけど。
まあいいや、感謝されるだけのことはしているわけだし。
慌てて言い訳をする私。
あれ、誰に。
自分に……。

「まあ悪い気はしないわね、そんなふうに行ってもらえると。なぜか白衣を着てい

る不審者さんでも。ああそうだ、私は遠坂凛。あなたは」
煙に巻くように畳み掛ける私。

「鳳っ……、岡部倫太郎だ」

え。
一瞬、思考が止まってしまった。
こいつ、今、なんて言った。

「ん、岡部倫太郎……。そう。ねえ、お腹空いてるでしょう。なにか作ってくるわ、まってて」

部屋を出ていく。




5.「お詫びと言ってはなんだけど、ここで生きる術を教えて上げるわ」





普通携帯食くらい手元に置いておくのが普通だ。
彼にしっかりしたものを食べさせたいわけでもなく。
私が部屋を出たのには気になったことがあったからだ。

「アーチャー、いま、彼は岡部倫太郎って言ったわ。それに嘘はなかったの」

「ああ、彼から漂わせる臭いから、嘘の匂いはしなかった」

アーチャーは彼が嘘をついている可能性を否定してくれた。
ならば。

「そう。じゃああなたの意見を聞かせてアーチャー。彼はあの、岡部倫太郎だと思う」

「いや、その可能性は低いと思う」

私もそう思う。
凶真といえば恐怖の弾圧者だ。
彼とでは、伝わってくる印象が違いすぎる。
しかし、アーチャーの思考基準も知っておきたかった。

「なぜそう思うの」

「君が推測した通り、私にも彼は素人に見える」

「確かにその通りだわ」

「それに、彼からは犯罪者特有の嫌な匂いがしない。善良な一市民といって間違いない」

アーチャーは人の心が読める。
彼独特の方法のそれは、今のところ百発百中。
絶対の信頼が置ける。

「じゃあ、彼は同姓同名の別人、彼を利用する方針で問題ないかな」

「問題ないと思う。しかし、最後の判断をするのは君だ」

「そのとおりね」

私自身は父様にしてもらったように助けてあげたいのだけれど。




少し時間がかかってしまったかもしれない。
早く部屋に戻らないと。
しかし、中から話し声が聞こえてくる。

「なに、こちらの状況を説明しろだと。……、わかった、こちらは」

一気に頭が冷める。
こいつは……敵。

「せっかく助けた相手がスパイだったなんてがっかりだわ」

あーあ、また失敗した。
突入前に先に銃をだしておくべきだった。
私はまだまだ甘い。

「ちがう、違うんだ」

彼は私は怯えていた。
なかなかの演技力。
舞台で英雄になれるわ、私が太鼓判を押してあげる。

「両手を上げてこちらを向きなさい」

ほらほら、早く早く。

「動きが素人のようだったからまんまと騙されたわ。大丈夫、すぐに始末してあげる。ああ、その前に説明責任は果たしてもらうわ、傷の手当てをした分だけね。じゃあまず、どこに、何を、どういう目的で伝えようとしていたのかを教えて」

しかし、私の予想に反して彼は震え続けるだけだった。
何か仕掛けてくれればすぐに始末してあげるのに。
あ、でもすぐに撃っちゃいけないんだっけ。
反省反省。

「いや、言わなくてもいいわよ。すぐに言いたくなるようにしてあげるから」

「ち、ちがう、誤解だっ」

「何が誤解だっていうの。その携帯はなに。その使用目的は誰の目にも一目瞭然よ」

「いや、これは違う」

だから、演技はもういいって。




引き金を引いたのはとっさの反応だった
そして、私はの怒りの熱は一気に覚めてしまった。
彼の唐突な行動を予測出来なかったから。
彼は怒るのでもなく、怯えるでもなく、自暴自棄に走ったわけでもなかった。
彼は狂ったように泣き出したのだ。
人の前で、銃をつきつけられているにも関わらず、だ。
膝をつき、苦しそうにむせび泣く。
彼は、仕切りに人の名前を読んでいた。
クリス、クリス。
彼の上げる叫びは、魂が引き裂かれているような悲痛なものだった。

「アーチャー、念のために確認するけど……」

「君は彼が、未だに演技をしているようにみえるのかい」

彼のうずくまるその背中は、とても哀れなものだった。




彼がまともに話が出来るよになったのは、日がくれてだいぶたってからだった。

「どう、そろそろ落ち着いた」

「ああ」

彼は、ポツポツと話し始めた。
自分のつまらない遊びがきっかけで、世界が変わってしまったこと。
変わってしまった世界では必ず親友が死んでしまうこと。
それを修正するために世界線を奔走したこと。
その過程で、クリスという女性を好きになったということ。
世界の修正が彼女の死につながってしまったということ。
時折辛そうにしながら、それでも最後まで、語ってくれた。
また気がついたら、戦場にいたようだ。

つまり、こいつは、聖杯に引っ張られて来た異世界組なわけだ。
平和ボケのド素人の動きも当然だったのだ。
それにしても話の過程で出てきた世界線という概念。
もし私がしっかりと魔術を修めようとしていたのなら、食いついていた話題に違いない。
全然興味ないんだけどね。
そして、私が壊してしまった携帯電話についても語ってくれた。
彼が行なっていたことは、豆腐メンタルからくる、その、……癖みたいなものらしい。
アーチャーがいなかったら納得など出来るはずもないことなのだけれど。
携帯電話は、世界線を移る鍵だったそうだ。
そんな大切なものを壊してしまった私。
アーチャーに修理できるかこっそり聞いてみたのだけれど、彼の知識では不可能だそうだ。

次は私が説明する番だった。
何もわかっていない彼に、今の世界情勢と聖杯戦争について教えてあげた。

「あ、あのさ」

恐る恐る話しかける私。

「ん」

「お詫びと言ってはなんだけど、ここで生きる術を教えて上げるわ」

彼は無言だった。

「一緒に聖杯を目指してみない」

「なぜ」

「なぜって……。聖杯は何でも願いが叶うのよ。クリスさんて人だってきっと」

「馬鹿な事を言うな。死者は生き返らない。どんな奇跡が起こっても」

確かに彼の意見は正しい。

「そもそも、君自身の願いがあるだろう」

確かに彼の意見は正しい。

「他人を構っている暇があるのか」

確かに彼の意見は正しい。
私に否定的な発言ばかりする彼。
でもちょっとまで。
君を待っている間私だって辛かったんだぞ。
なんで私が言い負かされ続けないといけない。
私は、懐の奥底に閉まっていた堪忍袋の緒を引きちぎることに決めた。

「ああ、もう、うっとうしい。いい、あんたの命は私が拾ったの。私が治したんだから、私のために働きなさい」

彼ははじめ、私に何を言われたのかわからなかったようだ。
そして、徐々に頭が回り始めたようだ。
彼の顔は真っ赤になっていた。

「そうまでして俺に生きろと。ふ、ふははははは。いいだろう小娘。この俺、マッドサイエンティストの、鳳凰院凶真が直々に面倒を見てやる。ありがたく思え」

あ、こいつ今変なスイッチ入った。
マッドサイエンティストってなんだよ。
まさかこんな馬鹿馬鹿しいやつの妄想とSERNの権力者の名前がかぶるなんて、世界は面白いものね。
まあ、そんなこんなで、私と彼との共闘関係が始まった。









こんな展開は望んでなかったはずなのにorz
遠坂視点、もう一回だけ続きます。

それと、文章の長さはどうでしょうか。
一回の投稿でもっと文を長くしたほうがいいでしょうかね?


誤字修修正しました。
報告ありがとうございます。



[30980] 6.「ところが、そうはならんのじゃな」
Name: お化けの庭◆82337570 ID:6f8b8d70
Date: 2012/01/04 21:44
ここが襲撃された時は、岡部に囮役をやってもらいたい。
こう提案したとき、彼は何のためらいもなく快諾した。
正直、拒否される前提で提案した私はおもいっきり肩透かしを食らった形になった。
彼曰く、この世界線で俺が死ぬ運命にない限り、死ぬことはないから問題ない(あんなにパニックになっていたのに)、だそうだ。
彼なりの人生哲学なのだろう、よくわからないが。
そんなに簡単に、割り切れるものなのだろうか。
しかし、彼が快諾してくれたお陰で、SERNの襲撃に対し余裕をもって行動することができた。


彼を囮に使う。
つまり、私は身を隠せるということ。
アーチャーの能力を十全に活かせるといういこと。
私は岡部を常に視界に入れるようにしながら、狙撃ポイントを探す。
岡部は上手く野外に出たようだ。
襲撃者は前に襲撃を受けた時の時の子どもだった。
同時に、大きな魔力が動く気配も感じた。
あの子のサーヴァントだろう。
彼女は早く叩いておきたい。
私と同じく重火器を使う彼女に対して、私の戦い方はあまり有利がつかないのだから。
おそらく私を探している。
しかし、私は見つからない自信があった。
私の工房の周りには、私の魔力を付加した銃が何発も設置し、敵を混乱させる。
遠隔操作で発射でき、隙あらばマスターを狙撃する。
私はこの囮作戦では、魔術を使う予定はない。
そしてここは、私の結界領域なのだ。
領域内の生き物の動きは、なんだって感知できるし、ごまかせる。
魔力と、狙撃の方向の二方向から探そうにも、敵は混乱するばかりである。
仕掛けた銃で狙撃し、敵をこちらの都合のいいように誘導する。

二人の動きが止まった。
まあ、悪くない。
私は今の場所で狙撃をすることに決め、うつ伏せになる。
薄く埃が積もっていたそこは、ひんやりとしていて冷たかった。

「アーチャー。例のものを」

私のマントから私が望む銃が『変化(ターン)』してくる。



その銃は、明らかにこの世界で作られたものではなかった。

全長百二十センチほどの狙撃銃。
有効射程距離は、街一つをカバー出来るほど。
だが、狙撃というものは目標との距離が開けば開くほど手ぶれや、風、重力の影響も大きく影響してくる。
そのため人の身では、無限遠方の的を撃ちぬくなどという芸当は出来るはずもないが、使用者の狙撃技術をこの受けなく引き出すものに違いなかった。
間違いなく現存する銃の中で最高のもの。
仮に時代が戦争に特化しても、三世代や四世代進んだくらいでは足元にも及ばないだろう。

しかしその銃はそれだけでは留まらない。
同じように今の技術では説明出来ないほど軽量化された光学照準器が二つ付いているのだ。
周りの状況に左右されず、望んだ場所を見とうせるスコープ、いわば「千里眼」とも呼べる物がひとつ。
もう一つ補助として、対象の熱を正確に描写する熱感知スコープ。
魔術師が魔法を使う時、体温が上がることに気がついた切嗣は熱感知スコープの利便性に気がついた。
魔術師がどのタイミングで魔術を発動しようとしているかが手に取るようにわかるからである。

さらに、こちらは魔力を全く使用しないため、敵は当然魔術を使ってくると思い込む魔術師にとって見つけるのはほぼ不可能となる。
凛は彼の知識をあますことなく記憶し、自分の戦いに上手く組み込んでいたのである。
そもそも、魔術師は現在の世界を目にしてもなお、科学技術を過信している傾向がある。
予期せぬ火器による攻撃に対策せずにやられれることは多い。
戦闘において、凛の思考は、必要なことを合理的に、最小限の行動で行うことを最善と規定している。

彼女の銃はその思考を反映したものであり、その考え方はまさしく、魔術師殺しと言われた衛宮の後継者である、と呼ぶにふさわしいものだった。






6.「ところが、そうはならんのじゃな」






凛の覗いていたスコープが突然、闇にそまった。

「アーチャー、なに」

「君は時々道具に頼りすぎだ癖があるようだ。目標だけでなく、周りをよく見ろ。あのままだったら目が焼け焦げている。サーヴァント召喚の光だ。おそらく岡部がサーヴァントの召喚に成功している」

彼の言うとおりだった。
彼の後ろには魔方陣があり、彼を守るように女性が立ってた。
私の読みは当たった。
岡部は、呪文を教えてもサーヴァントを召喚出来なかった。
魔術師としての指導を受けてこなかったからだと思う。
そこで私は、荒療治という名の賭けに出ることにした。
彼を極限状態におき、聖杯自信にサーヴァントの召喚を強要するという荒療治。
岡部は令呪をその右手に宿している。
そして、サーヴァントが未だ全ての数が揃っていないのだとしたら。
聖杯が岡部にサーヴァントを送りつけてくる可能性は十分にある。
結果は見ての通りだ。

彼の召喚したサーヴァントは、剣を多用していることからおそらく、セイバーのクラス。
白のマントをまとったそれは、夢物語にくる魔法戦士のそれに似ている。
彼女は細身の剣を手に囚われの姫を救わんとする騎士を連想させた。
銃を握る手に無意識に力が入ったのだろう。
アーチャーが話しかけてくる。

「私がセイバーでなくて不満か」

「何拗ねてるのよ、そんなはずがないわ。あなたは私にとって一番相性のいい相棒よ、アーチャー」

そう、彼は私にとって一番の相棒。
私が戦い、彼がサポートする。
私の戦い方において、これ以上の相棒はいないだろう。
そんなに私が信用出来無いの。
いいわ、私が最高の相方だと、不満などかけらもないと、これから証明してあげる。

戦場に注意を戻す私。
状況が動いていた。
襲撃してきた子どもは、自分のサーヴァントを呼び戻していた。
しかし、状況は私達に有利に進んでいるようだった。
岡部のセイバーが、敵の白いサーヴァントを圧倒していた。
セイバー近距離戦において圧倒的に有利というのが通説だ。
そして、実際にそのとおりだった。
見ていてわかる。
近距離での選択肢が圧倒的に多い。
多すぎる。
彼女は刀を敵に向かって突き出す。
敵は手に持っていた金色の槍のようなものでそれを振り払う。
と、同時に小型の衛星のようなものを空中に生み出した。
槍と同じく金色で、刃の部分だけが独立しているようだ。
小型の遠隔装置のようだ。
セイバーはかまわず、もう一方からもう一本突きが繰り出す。
敵は遠隔装置を使って刀を薙ぎ払う。
ところが、払ったはずの刀の軌跡から新たに刀が突き出されていた。
セイバーは次から次へと刀を生み出しているのだ。
剣の腕でなく、敵を食い尽くすが如くの物量で圧倒するセイバー。
彼女があの量の剣をして剣技を披露したら、対処する方法があるとは思えない。
私なら、距離をとろうと後退するはず。
敵のサーヴァントも私と同じだった。
すぐに下がろうとする、が、セイバーはそれより早い速度で敵の懐に飛び込もうとする。
遠隔装置で阻む敵。
しかも敵は、後ろに自分のマスターを庇っていた。
いつまでも下がり続けるわけにはいかないだろう。
敵にとってこの状況が続くというのはセイバーの勝利を意味する。


ならば敵はどう動くか。


私なら、隙をついてマスターを、岡部を狙うはず。
おそらく敵もそう考えるはず。
サーヴァントかマスター、そのどちらかが隙をつかんだら、戦い方を知らない岡部は脱落するのだから。
ならば私は、その隙が出来る前に、あの子どもの襲撃者を撃つ。

「アーチャー、観測と銃口補正お願い」

狙撃手にとって、観測手は命を預けられる存在でなければならない。
狙撃に集中するため、他の情報を一切遮断するからだ。
観測を任せることほど、私はあなたを信頼している。
この気持が、アーチャーに伝わっているといいのだけれど。



私はアーチャーがあわせてくれるのを感じた。
距離900メートルほど。
風は右から左に緩やかに。
アーチャーの予想してくれた予測弾道軌道が見える。
ゆっくりと照準をあわせる。
手がじっとりと嫌な汗で湿ってくる。
垂直方向よし、水平方向よし。
チャンスは一度だけ。
一瞬で勝負は決まる。
自分に時間変化の術をかける。
時の流れが緩やかになった。
いける。
私は絞るように引き金を引いた。
長い銃身から、高速で発射される弾丸。
弾はアーチャーの予測通りの軌道を通って行く。
私の手ぶれの癖もしっかりと補正してくれている。
予想とのズレはない。
勝った。
そのまま弾は吸い込まれるように襲撃者に向かう。
その時間が嫌に長かった。
はやく、はやく。
弾は彼女に吸い込まれていく。








「ところが、そうはならんのじゃな」








突然、どこからともなく声が聞こえた、気がした。
予測弾道軌道上に突然あわられる金髪の影。
その影は、私の放った弾丸を、あろうことか素手で受け止めた。
そして、スコープで見ていた私にむかってニヤリと笑ってきた。

「馬鹿な、あそこからここまで一キロもあるのよ」

思わず叫んでしまう。
あれもサーヴァント。
まさかSERNは二人もマスターを用意しているというの。

「凛っ」

アーチャーの慌てる声が聞こえた。
二時の方角に、膨大な魔力反応。
私の結界領域のそとからってどういうことよ、結界は直径ニキロもあるのよ。
廃墟の影に寝そべる私を見つけるだなんて。
まさか、初めから観測されていたの。
私の行動を読んで、逆に狙っていたのか。
だとするとSERNはマスターを三人も揃えてきているのではないだろうか。
慌てて立ち上がろうとする私。
だが、間に合わない。
膨れ上がった魔力が私にむかって一気に解放されるのを、私はどこか冷めた心で感じた。


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