改正貸金業法で跋扈するクレジットカード現金化業者

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 「クレジットカードの現金化」なる商売が跋扈(ばっこ)している。カードのショッピング枠で購入した商品を買い取るいわゆる買取屋は以前からあるが、最近はキャッシュバック方式という新たな手口でカードを現金化する業者が増えている。業者と客の間でカード決済による商品の売買契約を交わし、業者が代金の8~9割を客にキャッシュバックする仕組みだ。しかし、実際には売買は偽装で、商品はビー玉や石ころ、紙くずなどのガラクタばかり。利用者は一時的に現金を手にすることはできても、ガラクタの購入代金として多額のローンを背負い込むことになる。

ホームに面した所にも掲げられているカード現金化広告

 こうした業者のほとんどはインターネットのサイトから申し込みを受け付けており、貸金業ではなく通信販売業などと名乗っている。また、街頭で「カード現金化」の看板を公然と掲げている業者もある。ある業者は「本当に合法かと言われればローン契約上は違反行為だからグレーと言わざるをえない。利用するかどうかは客の判断次第」と開きなおった。
 クレジットカード会社でつくる社団法人日本クレジット協会によれば、換金目的のカード利用は会員規約で禁止している。判明すればカードの利用停止、利用額の全額支払いをカード会社から請求されかねないという。また、売買が偽装であれば、業者とカード利用者が共謀した詐欺にもなる。しかし、現実には「加盟業者も利用者も違反行為を明かさないため実態を把握することは極めて難しい」のだという。
 消費者金融をはじめとする貸金業者を対象にした改正貸金業法が6月に完全施行され、貸金業者の融資は大幅に規制されることになった。上限金利は20%以下に引き下げられ、クレジットカードのキャッシングを含む個人向けローンの借入は、総額で年収の3分の1未満まで制限された。また、専業主婦が借り入れをする場合は夫の同意書が必要だ。新規のキャッシングができなくなったり、キャッシングの枠が減額されたりするケースも珍しいことではない。
 その一方でショッピング枠については規制の対象外。「キャッシング枠が金融庁の所管なのに対して、ショッピング枠は経済産業省の所管。タテ割り行政の弊害がこんなところにも出ている」と専門家は指摘する。クレジットカードの現金化業者はそうした法の隙間をついて増殖している。法律の改正によって貸金業者は廃業ラッシュとなっているが、廃業した業者がカードの現金化業に乗り換えているとの指摘もあるのだ。
 某大手消費者金融の社員によると、この1年間に新たに融資契約をした人は主婦や若年層が目立ったという。「不景気で家計のやりくりに困った主婦が夫に内緒で借り入れをしたり、20歳になったばかりの人がお金を借りにくるケースが多かった」と言う。しかし、改正貸金業法によって消費者金融などで安易にお金を借りることはできなくなった。複数の消費者金融から次々と借り入れをする多重債務者の増加が貸金業法の大幅な改正の契機となったわけだが、法律によって問題が解決するかどうかは未知数。
 多重債務の問題に詳しい東京情報大学の堂下浩准教授は「いきつくところは心の問題。直接の関係は不明だが、過去に上限金利を引き下げて融資審査を厳しくした時は、いずれも自殺者が増えた」と不気味な指摘をしている。グレーゾーンで商売をするカード現金化業者、さらにその向こうには非合法の闇金融の世界も広がっている。改正貸金業法の完全施行が多重債務者とその予備軍を取り巻く環境にどのような変化をもたらすのか、メディアは注視していく必要がある。

カテゴリー: ニュース&レポート, 社会, 金融・マネー   タグ:   この投稿のパーマリンク

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