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医局に不透明資金 カネと人の互酬 病院、盆暮れ慣習

 ◇患者1人年500万円 透析にうまみ

 透析医療の現場に常態化する金品の付け届け--。関連病院からの不透明な資金提供が明らかになった和歌山県立医大。医局は医師を派遣し、病院はカネなどを提供する。関係者はこうした実態を「長年の慣習だった」と指摘する。医師派遣などに大きな権限を持つ医大の医局と、医師不足に悩む地方病院のゆがんだ関係が浮かび上がった。【藤田剛、酒井祥宏、近藤希実】

 「医局が派遣してくれる医師の実力や人数で、提供する金額が決まる」。盆暮れの年2回、前教授(64)に現金を持参していた和歌山市内の病院幹部はこう話し、「民間の紹介業者に頼むと、入ってくる医師の技術が保証されない。透析をやる以上、中心になる先生が必要なんです」とも打ち明ける。

 市内の別の病院幹部は「十数年前まで、医局の医師派遣への謝礼は桁が違った」と証言する。医師1人に対して100万円の謝礼が必要だったという。寄付金は年間200万円、学会があれば臨時の協賛金……。「医局に貢献すれば、医師を派遣してもらえる可能性が高くなる」と別の病院理事長も明かす。

 透析医療が医大で始まったのは68年ごろ。その後、医局の協力で民間病院に透析施設が次々に開設された。透析患者1人の年間医療費は約500万円といわれ、県北部の病院事務長は「利益率がよく、売り上げが上がる」という。診療報酬は時代とともに抑制されてきたが、医大関係者は「医局は病院に対し、稼がせてやってるんやから協力しろ、という雰囲気があった」と話す。実際、患者を紹介した病院から50万円が謝礼として医局に届いたことがあった。元医局員は、ある透析病院の開院説明会に招待された際、手土産の袋に5万円の商品券が入っていたという。96年、関連病院や企業からの寄付金の窓口を一本化するため、医大内に財団法人「和歌山県医学振興会」が設立された。不正防止目的だったが、この財団を通さず、教授に直接現金を渡したり、盆暮れに付け届けをしたりする病院が後を絶たなかった。医大関係者は「慣習がずるずると残っていたのかもしれない」と話す。

 「ブラック・ジャックはどこにいる?」などの著書がある医師、南淵明宏さんは「人手の欲しい民間病院と、使えるお金の欲しい医局が利害の一致で結びついた『医局ビジネス』だ。医大や病院は公器であることを認識してほしい」と批判する。

毎日新聞 2012年1月5日 大阪朝刊

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