和歌山県立医大(和歌山市)の腎臓内科・血液浄化センター(医局)の教授(64)=当時=が02~05年、和歌山市や堺市の二つの民間病院から計290万円の現金を受け取っていたことが分かった。2病院は正規の寄付金とは別に、病院幹部が盆暮れのあいさつで教授に直接、現金を渡していた。教授をトップとする医局は、関連病院への医師派遣などで強い権限を持っており、金銭が絡む不透明な関係が問題になりそうだ。【藤田剛、酒井祥宏、近藤希実】
教授は99~05年まで同医大教授を務め、現在は東京都内の私立大教授で日本透析医学会理事長。取材に対し、事実関係を認め「(現金を)持って帰らせるわけにはいかなかったので、医局への寄付金として処理した」と釈明。私的流用については否定した。
医大や病院関係者によると、2病院は透析施設を運営。和歌山市の病院は医局から非常勤で医師派遣を受けている。堺市の病院は、透析施設の開設時に医局の協力を得るなどした。
内部資料によると、和歌山市の病院は02~05年、夏と冬の年2回、1回10万円を前教授に持参。堺市の病院は1回30万~40万円を渡していた。教授はこれを医局費会計に「寄付金」として繰り入れていた。
医局費会計は、所属する医師が月1万円支払う医局費が主な収入源で、懇親会費やお茶代などに充てる互助会的なもの。医大の公式な会計とは異なる。
一方、医大の寄付金処理簿によると、2病院はこの時期、290万円とは別に正規の寄付金も医局に納めていた。和歌山市の病院は03、04年度に計40万円、堺市の病院は02~05年度に計80万円を納めた。
和歌山市の病院の理事長は取材に「医師を派遣してもらっているので、協力金を支払うという関係が以前はあった。今は正規の寄付金しか払っていない」と話した。一方、堺市の病院幹部は「医局費として出したと思う」と答え、詳しい説明を拒んだ。
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■ことば
医局は大学医学部の講座や付属病院の診療科ごとに構成される。教授を頂点に、准教授や講師、助教、大学院生らが医局員として所属するピラミッド型組織。医局から医師派遣を受けたり、院長が医局に籍を置いたりするなどしている病院は医局の関連病院と呼ばれる。
毎日新聞 2012年1月5日 東京朝刊