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ときめきゾーン キャンパス

紙面掲載日 2011/4/13 バックナンバー
〜「ときめきゾーン キャンパス」〜
大学、短大、専門学校の学生たちを紹介する連載です。
このほかサークル紹介なども載っています。
学びやは山梨
山梨学院大卒・高橋しんさん(漫画家)
大学にはチャンスがある 就活だけじゃもったいない 「人生」につなげて
 社会に羽ばたき、各方面で活躍する大学の先輩たちも、かつては一人の学生だった。山梨で何を学び、何を感じていたのだろう? 漫画家、高橋しんさん(山梨学院大卒)はこう答える。

 山梨学院大の入学前、入部予定の陸上部の合宿に参加することになり、同じ北海道出身の入学予定者3人で山梨へ向け出発しました。電車の中で、1人が「今、髪を伸ばしているんだ」と言いました。高校卒業間近で丸刈りから解放されたらしく、笑顔で頭を触っています。3人とも、これからの大学での陸上生活を夢見ていました。
 到着したJR甲府駅では監督が迎えに来ていました。そのまま近くのファミレスに寄った際、食事をしながら監督が発した一言を今でも覚えています。「今日でその髪とはお別れだな」
 翌日、先輩の手によって、髪は失われました。気を引き締めるという意味では効果的でしたが、まだ高校の卒業式が残っています。もう帰れないな。足元に散っている髪を見ながら思いました。

■箱根駅伝を目指し進学
 実は高校を卒業したら漫画家になろうと思っていて、進学するつもりはありませんでしたが、陸上でインターハイ出場を逃し、不完全燃焼で終わりたくないという思いが強くなっていました。
 子どものころから応援してくれていた父も同じだったようで「もう少し続けてみないか」と声を掛けてきました。漫画家はいったん後回しにして、「箱根」を目指そう、と大学進学を決意しました。
 山梨学院大は地元である北海道の陸上関係者などを通じて紹介されました。聞けば箱根駅伝に向け、チームづくりを強化しているらしい。すでに強豪校として知名度の高い大学よりも、自分に合っていると思いました。
 入学後は練習漬けの毎日でした。練習メニューは、実力と難易度が高い順にA〜Dに分けられるのですが、最初はDをこなすのが精いっぱい。新入部員の中でもタイムが遅い方でしたが、箱根を目指しての入学なので、あきらめるわけにはいきません。こなせるようになると、こっそりCの練習に参加。またこなせるようになるとこっそり…。いつしか箱根メンバーに最も近いAチームで走っていました。
 1年生の冬、山梨学院大は初の箱根の出場切符をつかみました。メンバー発表で自分の名前が呼ばれた日、こっそり寮を抜け出して、父に報告しました。一言「入ったよ」と。10区を任され、ゴールテープを切った経験は一生の思い出です。その後も卒業まで陸上は続けました。

■今しかできないことを
 4年生になり、周りが就職活動を始めたころ、甲府の中心街にある文房具店で、ペンやインク、ケント紙など専用の道具を購入。今思えば、山梨で漫画家としての一歩を踏み出しました。
 最近では就職活動が早期化していると聞いています。社会的な環境がそれを要求していることもあり、すべて学生のせいではありませんが、先輩としては、少しもったいない気がするのです。
 大学には、生きることや自分自身を発見できるチャンスがたくさん眠っています。先ばかり見ていると、隠れた自分の才能に気付かず終わるかもしれません。
 私の場合、将来の夢は漫画家でしたが、大学で取り組んだのは箱根駅伝。二つのことに直接的な関係はありませんが、自分の力で勝ち取った経験は、今でも大きな自信につながっています。大学を「就職」に結びつけるのではなく「人生」につなげてほしいのです。
 せっかく山梨で学生生活を送っているのだから、「その時」にしかできないことにチャレンジしてみようよ。

 たかはし・しんさん 北海道出身。1990年、山梨学院大法学部法学科卒。同年、「好きになるひと」で第11回スピリッツ賞を受賞、漫画家デビュー。代表作に「いいひと。」「最終兵器彼女」「きみのカケラ」「トムソーヤ」など。2007年より「花と奥たん」をBCスピリッツにて不定期連載。11年には週刊連載「雪にツバサ」(仮)をスタート予定。43歳。


▲山梨学院大卒・高橋しんさん(漫画家)


▲箱根駅伝でゴールテープを切る高橋しんさん=東京・大手町(1987年)



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