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抗うつ剤の効き目は重症度で大きく変わる=解析論文


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【ワシントン】重度のうつ病患者は抗うつ剤から恩恵を得るが、軽度から中等度のうつ病患者には抗うつ剤の効果がほとんど、あるいはまったくないとする新しい解析結果が5日明らかになった。

この結果は6つの臨床試験について研究者が解析して得られたもの。ここでの臨床試験は、医師が患者の診断に使用する「ハミルトンうつ病評価尺度」(HAM-D)で評価した軽度から極めて重度のうつ病患者を対象としている。抗うつ剤あるいはプラセボ(偽薬)を割り当てた患者718人の治験結果をまとめたこの論文は医学専門誌「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション」(JAMA)の1月6日号に掲載されている。

論文の主幹執筆者でペンシルベニア大学の心理学教授ロバート・デルバイス氏は、抗うつ剤の効果を検討する試験はこれまで数多く行われたが、それらは重度のうつ病患者を対象としものだったと指摘。またこれらの試験が米食品医薬品局(FDA)の承認申請にも利用されている。

軽度のうつ病患者を対象に実施された試験は少ない。したがって英グラクソ・スミスクライン(NYSE:GSK)の「パキシル」や米イーライ・リリー(NYSE:LLY)の「プロザック」などの抗うつ剤が軽度患者にどれほど効くかははっきりしない。しかし抗うつ剤の使用する人の大半を軽度の患者が占める。

国立衛生研究所(NIH)傘下の国立精神衛生研究所(NIMH)によると、うつ病患者数は米国成人の約6.7%にあたる1480万人とされる。

デルバイス氏は、パキシルを服用した重度のうつ病患者群はプラセボ投与群と比べ、HAM-Dで平均4ポイント改善し、その差異は「実質的(改善)」とされた。

HAM-Dのスコアが23以下で、パキシルあるいは従来薬のイミプラミン(一般名)を服用した患者はプラセボ投与群と比べ、1ポイント改善した。HAM-Dが18以下の軽度から中等度の患者は、1ポイント未満の改善にとどまった。研究者は論文で「(抗うつ剤が)重度の急性うつ病でない大半の患者において、特異的な薬理学的利点をもたらすと示唆する証拠はほとんどない」としている。

イミプラミンはスイスのノバルティス(NYSE:NVS)が「トフラニール」という商品名で販売する三環系抗うつ剤に分類される。パキシルやプロザックは選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に分類される抗うつ剤。

(ダウ・ジョーンズ)

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