原発避難住民:「戻る気ない」27% 34歳以下は5割強

2011年11月8日 15時0分 更新:11月9日 10時54分

東京電力福島第1原発事故による警戒区域と計画的避難区域
東京電力福島第1原発事故による警戒区域と計画的避難区域

 東京電力福島第1原発事故で全域が警戒区域や計画的避難区域などに指定された福島県双葉郡8町村の全世帯に福島大がアンケートをしたところ、元の居住地に「戻る気はない」と答えた人が4分の1に上った。地域の復旧復興を担うはずの若い世代ほど「戻らない」との回答が多く、34歳以下では5割強にもなった。放射能汚染への不安などを背景に、帰還を諦める避難者が少なくないことが浮き彫りになった。

 アンケートは福島大災害復興研究所の丹波史紀(ふみのり)准教授(社会福祉論)らが、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村の8町村の協力を受けて9月に実施した。2万8184世帯に発送し、世帯の代表者に回答してもらう方式で調査。47.8%に当たる1万3463世帯から回答があった。

 元の居住地へ戻る意思を聞いたところ26.9%が「戻る気はない」と答えた。年代別では、34歳以下が52.3%、80歳以上で13.1%だった。戻らない理由(複数回答)としては「除染が困難」83.1%、「国の安全宣言レベルが信用できない」65.7%、「事故収束に期待できない」61.3%。放射能汚染への不安の大きさが改めて示された。

 戻る意思がある人でも、待つことのできる期間は「1~2年」と答えた人が37.4%で、「1年以内」とした人も含めると50.3%となった。「いつまででも待つ」と答えた人は14.6%にとどまった。ただ、世代別では「いつまででも待つ」と答えた人が34歳以下で24.5%となり、世代が上がるごとに割合は低くなった。若い世代では戻る意思を持てない人が多い一方、「いつまででも」帰還を待つ人も多く、二極分化の傾向がうかがえた。

 今後の生活で困っていること(複数回答)を尋ねたところ、「避難の期間が分からない」という人が57・8%、「今後の住居、移動先のめどが立たない」が49・3%と見通しが立たないことを挙げた人が多かった。【川口裕之】

 ◇福島大による住民実態調査の主な質問と回答

◆避難前の居住地へ戻ることについて

(1)国が示す安全なレベルまで放射線量が下がればすぐにでも戻る  4.9%

(2)インフラ整備後に戻る  17.8%

(3)国・自治体の十分な除染実施後に戻る            22.7%

(4)他の町民の帰還後戻る  27.8%

(5)戻る気はない      26.9%

◆戻りたくない理由((5)の回答者が対象、複数回答)

除染が困難        83.1%

国の安全レベルが不安   65.7%

原発収束に期待できない  61.3%

生活・資金面の問題    41.6%

他の家族の反対      14.6%

すでに新しい仕事あり    7.1%

◆戻りたい理由((5)以外、複数)

暮らしてきた町への愛着  69.5%

先祖代々の土地、墓、家  64.7%

地域みんなで復興したい  45.2%

地域での生活が好き    42.6%

見知らぬ土地での環境変化 38.1%

他の場所に移るあてがない 32.8%

家族や町民が帰るから   10.5%

◆戻れる状況になるとして、どのくらいの期間待てますか((5)以外、択一)

(1)1年以内        12.9%

(2)1~2年以内      37.4%

(3)2~3年以内      23.9%

(4)3~5年以内      11.3%

(5)いつまでも       14.6%

◆戻るまで生活したい場所(同)

(1)双葉郡内の自治体     7.7%

(2)双葉郡に隣接する自治体 43.1%

(3)それ以外の福島県内   20.4%

(4)福島県外        11.3%

(5)まだ決めていない    17.6%

◆戻るまで生活したい居住条件(同)

(1)仮設住宅        15.0%

(2)民間借り上げ住宅    53.2%

(3)公営住宅         6.0%

(4)復興公営住宅      16.5%

(5)親戚や知人宅       4.5%

(6)自己負担した賃貸住宅   4.8%

◆今の生活は何でやりくり?(複数)

(1)義援金や仮払補償金   81.7%

(2)勤労収入        35.0%

(3)事業収入         1.9%

(4)年金・恩給       39.8%

(5)貯金          34.4%

(6)借金           2.0%

(7)生活保護         0.7%

◆今後の生活の困りごと(三つ選択)

(1)事業のめどが立たない   9.6%

(2)避難先での職がない   14.4%

(3)避難の期間がわからない 57.8%

(4)生活資金のめどが立たない30.5%

(5)今後の住居、移動先のめど49.3%

(6)放射能の影響が心配   47.4%

(7)子どもの教育が心配   14.9%

(8)同郷の知人とのつながり 20.0%

(9)周りの住民との関係   13.3%

top
文字サイズ変更
このエントリーをはてなブックマークに追加
Check
この記事を印刷

PR情報

スポンサーサイト検索

アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド

特集企画

東京モーターショー 注目のクルマ

クルマの最先端が集結

東海大学:山下副学長「柔道家として教育を語る」

学生時代の思い出から今の日本の課題まで

縦横に語ってもらった。