2011年11月7日 15時0分 更新:11月7日 19時31分
東京、大阪両証券取引所が、来秋にも持ち株会社を設立して経営統合する方向で最終調整に入ったことが7日、明らかになった。月内の基本合意を目指すが、統合比率の最終的な詰めが残されており、なお協議が長期化する可能性もある。「強い取引所が一つできることは日本にとって必要」(東証の斉藤惇社長)との思いを共有する両者が、最終段階でどこまで歩み寄れるかが大詰め交渉のカギを握る。
近く東証の斉藤社長、大証の米田道生社長が会談し、基本合意の可能性を探る。
大証が上場企業である一方、東証が非上場で株価という客観的なモノサシがないことが統合比率のハードルを高くしている。統合比率を求めやすくするため、統合前に東証が単独上場する案も検討された。しかし新規上場後は最低1年間、経営統合できないルールもあり、時間がかかり過ぎることなどから統合を優先。統合比率は現在、大証の企業価値を1とした場合の東証の価値を1.5~2倍とするところまで詰まってきた。
統合比率以外は固まりつつある。公正取引委員会の審査を経て来春にも、東証が大証株を株式の公開買い付け(TOB)で子会社化。TOBは大証が上場廃止にならないよう、発行済み株式総数の66%などの上限を設ける。大証は上場を維持して存続会社となったうえで持ち株会社となり、事業会社の東証、大証を傘下に置く。斉藤、米田両社長が持ち株会社の最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)に就く方向だ。新社名に「日本証券取引所」などが挙がっている。
両者が合意を急ぐのは、私設市場の台頭などから世界的に取引所の再編機運が高まる一方、新興国の取引所が存在感を高め、激しく変化する事業環境への危機感があるからだ。
ニューヨーク証券取引所を運営するNYSEユーロネクストとドイツ取引所が合併で合意するなど、世界の取引所は国境を超えた合従連衡が進む。東証と大証は世界のライバルとミリ秒(1000分の1秒)単位で競う高速取引に対応するためのシステム投資を、統合で効率化する狙いもある。
新興国市場が規模を拡大していることも統合を急ぐ理由だ。売買代金で長くアジア1位だった東証だが、昨年まで2年連続で上海証券取引所に抜かれた。大証が得意とするデリバティブ(金融派生商品)市場も世界15位に過ぎず、韓国や上海などの後じんを拝しているのが実情だ。【浜中慎哉、南敦子】