人間の色の感じ方は一様ではありません。遺伝子のタイプの違いやさまざまな目の疾患によって色の見え方が一般の人と異なる人が、合計すると日本に500万人以上存在します。こうした多様な色覚を持つさまざまな人に配慮して、なるべく全ての人に情報がきちんと伝わるように利用者側の視点に立ってつくられたデザインを、カラーユニバーサルデザインといいます。


カラーユニバーサルデザインの3つのポイント(2011年5月公開)

カラーユニバーサルデザインの3つのポイント (2011年5月26日)? ?
  a. 出来るだけ多くの人に見分けやすい配色を選ぶ。 ?
  b.色を見分けにくい人にも情報が伝わるようにする。 ?
  c.色の名前を用いたコミュニケーションを可能にする。


 色の感じ方が一般と異なる方のなかで一番多いのが、いわゆる色弱者です(色覚異常・色盲・色弱・色覚障害・色覚特性とも称されます)。日本では男性の20人に1人、女性の500人に1人、日本全体では300万人以上いるとされています。世界では2億人を超える人数で、血液型がAB型の男性の比率に匹敵します。これらの方は、視力(目の分解能)は普通と変わらず細かいものまで十分見えますが、一部の色の組み合わせについて、一般の方と見え方が異なります(右図:詳しくは「色が見える仕組みと色弱者のタイプ」を参照)。
 色が全く見分けられず、色の違いを明暗でしか感じることができない方も数万人程度存在します。
 また、緑内障、白内障など老化に伴う目の疾患によって、視力が低下すると共に色の見え方が変化します。日本国内の白内障の総患者数は140万人を超えており、65歳以上の方の約5.6%を占めています。高齢化社会の進行にともない、これらの方はますます増える傾向にあります。さらに、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症などの疾患で視力が低下する、いわゆるロービジョンと呼ばれる方も数十万人存在します。これらの方には視力の低下に加え、色の見え方やコントラストの程度などに配慮が必要になります。






 21世紀の現代社会において、色はますます重要な情報伝達手段になっています。カラー印刷技術の発達で、つい数年前まで白黒が当たり前だった新聞・雑誌・教科書・一般書籍などは、みるみるカラーになりました。地図や案内図も、いまやカラーでないとみすぼらしく見える時代です。コピー機や携帯電話、自動券売機、預金引き出し機(ATM) などの操作画面も、ほとんどがカラーになりました。電光掲示板も多色のものが当たり前になっています。電子機器や家電製品のパイロットランプは、昔は点灯と消灯だけだったのが、最近は何色も違う色に点灯して情報を伝え分けるのが当たり前になりました。公共施設や博物館、展示会場などは場所ごとにテーマカラーに色分けされ、カラフルな説明表示であふれています。鉄道の駅では各路線が色分けされて誘導表示され、路線図や時刻表はさまざまな色の線や文字で塗り分けられています。 このように色を使って情報を伝えるケースが、現代では10年前20年前に比べてはるかに多くなっています。ところがこれらの表示は一般の色覚の人の色の見え方だけを考えて設計される場合が多いため、右の写真の充電アダプターのように、色弱者が情報を読み取れずに不便を感じるケースが増えています。色弱者にとって、社会は昔より暮らしにくくなっているのです。
 これを解決するのがカラーユニバーサルデザインです。カラーユニバーサルデザインに配慮することにより、色を上手に使い、全ての人に美しく感じられるカラフルなデザインを創りつつ、なおかつ情報をきちんと伝えることが可能になります。



 カラーユニバーサルデザインは決して、「一部の色弱者のためだけの特殊なデザインで、一般の人にはむしろ見にくいもの」ではありません。色弱者に配慮してデザインするということは、色数が無秩序に増えがちな一貫性のない色彩設計を一から吟味しなおし、伝えたい情報の優先順位を考え、情報の受け手が感じる印象や心理を考慮しながらデザインをするということです。創り手の美意識や感性だけでなく、利用者の視点に立って使いやすさを追求したデザインです。これは結果として、一般の人にとっても「整理された見やすいデザイン」になります。カラーユニバーサルデザインは色弱者のためだけでなく、全ての人に価値あるものなのです。




 色弱者が不利にならないような色づかいを配慮することは、色覚バリアフリーとも呼ばれます。従来は視覚関係のバリアフリーといえば、点字ブロックなど目がほとんど見えない人への配慮だけを意味していました。しかし色覚バリアフリーの重要性も急速に認知されるようになっています。政府の機関である総務省行政評価局は、2003年には道路の情報表示について、また2004年には駅や空港など交通関連施設の情報表示について、色覚バリアフリーの観点も含めた実態調査を行なっています。




 上図「色覚のタイプによる色の見え方の違い」のように、色弱者の色の見え方のシミュレーションソフトが何種類か登場しています。製品や施設の写真をこれらのソフトを使って処理すれば、一般色覚者でも色弱者の色の見え方を疑似体験でき、既存の配色の問題点を調べたり新しいデザインを考えたりするために極めて有効なツールとなっています。
 しかしシミュレーションは万能ではありません。まず、シミュレーションにはどうしても限界があり、色弱者の見え方を完全には再現できないという問題があります。また、色によっては一般色覚者が似たような色だと感じるものを、色弱者は全然違う色だと感じることもあります。同系色の明度や彩度に関しては、色弱者のほうが一般色覚者よりもわずかな差に敏感です。このため、一般色覚者には気にならないわずかな色の差が色弱者を混乱させる原因になったり、一般色覚者が「この配色はとても見づらいだろう」と想像するものが、色弱者には意外に見分けやすかったりすることがあります。これらはシミュレーション画像を見ても、一般色覚者には知覚できません。
 また、色の見え方は照明によって大きく変わります。視認性・判読性・デザイン性の評価は、コンピューター画面ではなく、実際にその表示が用いられる現場の照明条件で、現物を用いてモニター評価することが非常に重要です。
 また、カラーユニバーサルデザインは単に色を調整するのではなく、色と同時に形の違いや線種・塗り分けパターンを工夫したり、美観を損なわない形で文字や色名等を表記したりしてデザインを総合的に創ってゆく、クリエイティブな作業です。単にコンピューターで紛らわしい色を探して他の色に置き換えるだけでは、色のバランスも美しくなく、見やすさもそれほど向上しない中途半端なものになりかねません。
 そこでカラーユニバーサルデザインを達成するには、どうしても実際に色弱者の目を用いてモニター作業を行ない、デザイナーや設計者と対話しながら案を練ってゆく作業が不可欠になります。しかし同じ色弱者でも、P型とD型では色の見え方がかなり違います。P型の人が全く不便を感じない色づかいでもD型の人には非常に見えづらかったり、その逆が起こりえます。モニター作業では1 人の色弱者だけでなく、P型強度・P型弱度・D型強度・D型弱度の4 タイプに、一般のC型を加えた、5タイプの色覚で検証することが大切です。




 様々な利用者を想定したユニバーサルデザインでは、設計者が一生懸命工夫して配慮したつもりなのに、その配慮が当事者にとっては効果がなかったり、むしろ逆効果だったりすることが、残念ながら起こりえます。カラーユニバーサルデザインにも、このような例が見られます。色弱者は鮮やかな色なら見分けやすいのだろうという誤解から派手でどぎつい配色にしてあるが、実は色弱者が混同しやすい色の組み合わせが随所に見られるようなデザインや、逆に色弱者は色が全然分からないのだろうという誤解から色数を極端に減らしてしまった単調なデザインが、カラーユニバーサルデザインとして提案されていることがあります。真のカラーユニバーサルデザインは、色相・彩度・明度の差を上手に組み合わせ、形や塗り分けパターンの違いを併用することによって、色を存分に使い、見た目に美しく、なおかつ一般色覚の人にも色弱者にも同じように情報が読み取れるデザインです。当事者の立場からこのような優れたデザイン実現に協力し、その成果を積極的に評価して他と差別化するために、CUDマークが生まれました。