●探知距離はレーダー反射断面積の四乗根に比例
レーダーに映らない軍用機を「ステルス機」と呼ぶことは一般にも広く知られています。
我々軍用機マニアになると、それがレーダー反射断面積「RCS」という数値によって左右され、決してレーダーに対して無敵ではないこと、そして実際に撃墜されたことを知っています。では具体的にステルス機がどの程度レーダーに映りにくいものなのでしょうか。
航空情報9月号においてF-22の記事を執筆しましたが、その際にRCSに対する探知距離をグラフ化したものを作成しました。その副産物である、レーダー反射断面積と各レーダーにおける探知距離の一覧表を掲載します。それぞれのレーダーの能力と、それに対するRCSの効果を見てみましょう。
レーダー反射断面積の単位は平方メートル、探知距離の単位はキロメートルです。
(レーダー視程の推定はJane's Avionics 2008-2009より)
レーダー断面積 | AN/APG-77 F-22 |
AN/APG-79 F/A-18E/F |
N035 Irbis E Su-35BM |
CAPTOR Typhoon |
|
10 | 大型戦闘機 | 355.66 | 195.61 | 405.45 | 147.6 |
9 | F-15/Su-27 | 346.41 | 190.53 | 394.91 | 143.76 |
8 | など | 336.36 | 185 | 383.45 | 139.59 |
7 | 325.32 | 178.92 | 370.86 | 135.01 | |
6 | 313.02 | 172.16 | 356.84 | 129.9 | |
5 | 299.07 | 164.49 | 340.94 | 124.11 | |
4 | 小型戦闘機 | 282.84 | 155.56 | 322.44 | 117.38 |
3 | F-16など | 263.21 | 144.77 | 300.06 | 109.23 |
2 | 237.84 | 130.81 | 271.14 | 98.7 | |
1 | 4.5世代RO機 | 200 | 110 | 228 | 83 |
0.9 | タイフーン | 194.8 | 107.14 | 222.07 | 80.84 |
0.8 | など | 189.15 | 104.03 | 215.63 | 78.5 |
0.7 | B-1B | 182.94 | 100.62 | 208.55 | 75.92 |
0.6 | 176.02 | 96.81 | 200.67 | 73.05 | |
0.5 | 168.18 | 92.5 | 191.72 | 69.79 | |
0.4 | 159.05 | 87.48 | 181.32 | 66.01 | |
0.3 | 148.02 | 81.41 | 168.74 | 61.43 | |
0.2 | 133.75 | 73.56 | 152.47 | 55.51 | |
0.1 | B-2A | 112.47 | 61.86 | 128.21 | 46.67 |
0.09 | 109.54 | 60.25 | 124.88 | 45.46 | |
0.08 | 106.37 | 58.5 | 121.26 | 44.14 | |
0.07 | 102.87 | 56.58 | 117.28 | 42.69 | |
0.06 | 98.98 | 54.44 | 112.84 | 41.08 | |
0.05 | 94.57 | 52.02 | 107.81 | 39.25 | |
0.04 | 89.44 | 49.19 | 101.96 | 37.12 | |
0.03 | 83.24 | 45.78 | 94.89 | 34.54 | |
0.02 | 鳥 | 75.21 | 41.37 | 85.74 | 31.21 |
0.01 | F-22/F-35 | 63.25 | 34.79 | 72.1 | 26.25 |
0.001 | LO/VLO機 | 35.57 | 19.56 | 40.54 | 14.76 |
0.0001 | 虫 | 20 | 11 | 22.8 | 8.3 |
被探知距離はRCSの4乗根に比例します。
すなわち、被探知距離を半分の1/2にするには、RCSは1/16にしなくてはなりません。RCS10平方メートルの戦闘機の1割まで被探知距離を短くするには、0.001平方メートル(1/10000)までの低減が必要となります。
よって、大幅に削減するのは難しいですが、「ステルス性に配慮する」だけでレーダー視程を押し戻すのに大きな効果が得られることが分かります。
※RO機=観測性削減機 VLO/LO機=(超)低観測性機=いわゆるステルス機
※レーダー視程やレーダー反射断面積は「推定値」です。
※レーダー視程は標的が高速接近中、かつルックアップ時に最大性能を発揮できます。
※開発元が自ら宣伝しているイルビスEをのぞき、レーダーの性能は公表されていません。
※ステルス機のレーダー反射断面積は資料元によっては10倍近く変化します。
※「だいたいあってる」かもしれませんが「正確ではありません」。
※知っている人は言ってはいけない事になっています。本当のところは誰も分かりません。
(更新日 2009年8月24日)