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焦点/福島15万人が異郷で越年/県外6万、増加傾向
東日本大震災と福島第1原発事故で、福島県民の7.8%に当たる約15万7000人が県内外の避難先で年を越す見込みとなったことが、県への取材で29日分かった。(加賀山仁)
県によると、政府の東日本大震災復興対策本部などを通じて把握した県外避難者は6万1659人(15日現在)。福島を除く46都道府県すべてで避難者が生活している。 このうち1000人を超えるのは東京都、北海道、宮城、秋田、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、新潟、静岡各県の計13都道県。 最多は山形県の1万2945人。子育てなどを理由に、原発事故の避難区域以外から自主避難した人が7割程度を占めるとみられている。福島市に近い米沢市に3845人、アパートなどが多い山形市には5548人で、両市に集中している。 県外避難者は今なお増加傾向にある。隔週で行われている福島県の集計で6月30日時点では4万5242人だったが、8月11日に5万人、11月16日には6万人をそれぞれ突破した。11月30日から12月15日までの半月でも492人増えた。 一方、県が12月28日現在でまとめた仮設住宅の入居状況などによると、県内の避難者は9万5899人。内訳は仮設住宅が3万1265人、借り上げ住宅が6万3223人、公営住宅が1411人となっている。 県は市町村の要請に基づき仮設住宅1万6619戸の建設を計画し、うち1万5788戸が完成した。いわき市や南相馬市は住民の要望が集中し、民有地も活用して建設を急いでいる。 県の集計は避難先の自治体で行政的な手続きを取ったり、公的支援を受けて住宅に入居したりした人が主な対象。このほかにも、自力で住まいを確保した人がかなりいるとみられる。
◎浜通り住民、散り散り
福島第1原発事故で避難区域が設定された福島県浜通り地方で、住民が全国へ散り散りに避難している実態が、10市町村への取材であらためて浮き彫りになった。
南相馬市、双葉郡8町村(広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江の6町と川内、葛尾の2村)と飯舘村が、住民の申告を基にまとめた避難先はグラフと表の通り。 このうち広野、川内、大熊、葛尾、飯舘の5町村は、役場機能の移転先へ避難した住民が最も多かった。 3月1日現在の人口を基に避難先を分析すると、広野町民の76.3%がいわき市、飯舘村民の61.2%が福島市、葛尾村民の58.1%が田村郡三春町、川内村民の57.9%が郡山市へと、それぞれ役場機能の移転先に身を寄せる。ただ、大熊町民のうち役場機能のある会津若松市に避難した人は30.4%にとどまった。 会津美里町に役場機能がある楢葉町の町民は、67.0%がいわき市に避難。会津美里町のある大沼郡にいる人は7.0%だった。 人口が多い南相馬市、浪江町、富岡町は、住民が散り散りになった度合いが大きい。南相馬市は市民の3分の1に当たる約2万3000人が県外を含む市外へ避難したまま。避難先は福島市約2200人、相馬市約2000人、仙台市約1600人など広い範囲に分かれている。 浪江町民の避難先も、役場機能のある二本松市よりも、借り上げ住宅や仮設住宅の多い福島市の方が多い。富岡町も役場機能は郡山市にあるが、住民が最も集まっているのはいわき市となっている。 県外の避難先は多い順に埼玉県5140人、東京都4697人、宮城県4231人など関東、東北地方が上位を占めた。避難先市町村の報告を積み上げた福島県の集計と比べ、埼玉は439人、宮城は2544人多くなっている。避難元には転居を連絡しても、避難先には届けないことが多いためという。 調査は12月中旬に各市町村へ依頼し、その時点で最新の集計を受けた。集計日は11月末から12月22日まで自治体ごとに異なるが、傾向をつかむため合算して分析した。
2011年12月30日金曜日
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