きょうのコラム「時鐘」 2012年1月3日

 正月の楽しみの一つがおせち料理。暮れには近所の中華料理やインド料理の店にも「おせちあります」の張り紙を見掛けた

新しいおせちに食指が動いたが、やはり思いとどまった。新奇なものにすぐに飛びつかないのがわが北陸人の習性だが、それだけではない。長く親しんできたおせち料理には、縁起をいただくという習わしがある。黒豆を食べるのはまめに働こうという決意、腰の曲がったエビには長寿の願いを込める

豆やエビは中華や洋食にもある。だが、喜ぶに通じる昆布巻きや、目(芽)が出るクワイ、田の豊作を願う田作りなど、伝統のおせちの品には、もれなくめでたい口上がつく。飾りのナンテンの葉も「難(なん)を転(てん)ず」としゃれている

「おやじギャグ」に似た言葉遊びではないか。そう言ってしまうと、身もふたもない。年の初めに襟(えり)を正して縁起かつぎの習わしに親しむのも悪くはない。子どもに笑われそうだが、穴のあいたレンコンやフキを食べるのは明るい見通しが開けることを願うのである

ことしも厳しい年が続くのだろう。そう覚悟を決め、いつも以上にレンコンを食べた。