文化部記者のベスト３《歌手名言編》　ＡＫＢ、ガガ、桑田の言葉

　（１）「私のことは嫌いでも、ＡＫＢのことは嫌いにならないでください」前田敦子（ＡＫＢ４８のメンバー）６月９日

　アイドルグループＡＫＢ４８の新曲を歌う２１人をファン投票で決める「第３回選抜総選挙」開票イベントで。東京都千代田区の日本武道館で開催され、約８５００人のファンが見守るなか、１位には「前田敦子」の名前が読み上げられた。

　顔や胸を手で抑えて号泣しながら舞台中央に立った前田は「私のことは嫌いな方もいると思います」と語った上で、この名言を残して、さらに「皆さんに少しでも認めていただけるようにこれからも私なりに頑張っていきたいと思います」と続けた。客席からは大きな拍手と「あっちゃん、大好き」との声援が飛んだ。

　前田は司会者に舞台上に座っていた２位（昨年１位）の大島優子へのコメントを求められ、「この１年間、ずっと皆を引っ張ってくれたのは私ではなく優子だと思っています。優子には今も勝てたところはあると思っていません。優子は本当に私たちの人気者です」と、ライバルをたたえた。そんな前田に対し、大島は即座に「あっちゃんはＡＫＢの顔です」と指摘。客席のファンから「優子もだよ」との声援を受けた後で「あっちゃんが笑顔で前を向いてくれればいいです。これからも一緒に前を向いていきましょう」と言葉を続け、前田と抱き合った。

　１位の前田が獲得したのは１３万９千票あまりで、２位の大島は約１２万２千票。市場調査会社オリコンによると投票に必要なシリアルナンバー付きシングル「Ｅｖｅｒｙｄａｙ、カチューシャ」は発売初週の売り上げが１３３万枚を超えた。

　ＡＫＢ４８には２位以下のメンバーをサポートする熱烈なファンがいる。会場には前田の１位獲得を快くは思っていないファンもいたかもしれない。それでも前田はそんなファンにあらかじめメッセージを発することで、起こりえたブーイングを封じ、来場者に祝福されながら、平成２３年の顔になった。

　（２）「ホワイ・ノット？（当たり前でしょう）」レディー・ガガ（歌手）６月２５日

　千葉・幕張メッセで開かれた東日本大震災復興支援ライブ「ＭＴＶ　ＶＩＤＥＯ　ＭＵＳＩＣ　ＡＩＤ　ＪＡＰＡＮ」で。早くからチャリティー・ブレスレットの売り上げを寄付するなど日本支援のために尽力してきたガガは、ステージ後、まぶたに目を描いた奇抜なメーク姿で登場。報道陣から「なぜ日本のためにそこまで？」と問われて、こう答えた。この日はセットの巨大なクモの巣に絡まる格好で登場して「ボーン・ディス・ウェイ」と「ジ・エッジ・オブ・グローリー」を披露。途中、巣から抜け出して、クモの彫像の足の間などで艶のある歌声を響かせた。

　このパフォーマンスについて、ガガは「最初は自分の髪の毛で作られたクモの巣に絡まれて動けない状態だったが、情熱により苦境を乗り越えた」と意味を説明。「この物語は今の日本に当てはまる。皆の情熱があれば、どんな苦境も乗り越えられる」と日本のファンに向けて語った。

　（３）「あきらめないで、何事も。無理をしないで、何もかも」桑田佳祐（歌手）９月１１日

　宮城県利府町のセキスイハイムスーパーアリーナで行った東日本大震災復興支援ライブで。終盤、「また必ず帰ってきます」と宣言した上で、こう付け加えた。平成２３年は膨大な数のチャリティーライブが行われ、多くのミュージシャンが励ましのメッセージを発した。どの言葉にも、その個性が表れていたが、その中でも、食道がんから復帰後初の本格的ステージに立った桑田が発したエールからは、被災者への気遣いが感じられた。（竹中文）

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