ヨーロッパの国々の借(しゃっ)金(きん)が大きくなって世(せ)界(かい)中(じゅう)が心(しん)配(ぱい)しています。その最(さい)初(しょ)になったギリシャは借金を返(かえ)せなくなって、被(ひ)害(がい)は他(ほか)の国にも広がりつつあります。何が起(お)きているのでしょう。
◆ギリシャが借金を返せず、それを支えるはずの国々も多くの借金を抱えています。
もともとは2年前の秋、ギリシャで始(はじ)まりました。それまで、ギリシャは、国のお金が足りなくなって、ヨーロッパの銀(ぎん)行(こう)からたくさんお金を借(か)りていたのです。ところが、ギリシャは自分の国の借金を少なく見せて、ごまかしていたのです。借金の原(げん)因(いん)は、国の仕(し)事(ごと)をする人の数が多すぎて、支(し)払(はら)う給(きゅう)料(りょう)が多くなりすぎたこと。また、商(しょう)店(てん)などが、国に払わなければならない税(ぜい)金(きん)を少なく届(とど)け出(で)るケースもあり、国のお金が足りなくなったのです。
ヨーロッパの国々はお互(たが)いに深(ふか)く結(むす)びついていて、ギリシャは、ヨーロッパの銀行から10兆円を超(こ)す借金をして、しのいできました。けれども、借金をごまかしていたため、銀行の間で「貸(か)したお金が返ってこないのでは?」という不(ふ)安(あん)が高まり、ギリシャは信(しん)頼(らい)を失(うしな)いました。それで借りたお金の利(り)子(し)が高くなりました。例(たと)えば、ギリシャが2年間の借金をする場合の利子は1年当たり100%にまで上(じょう)昇(しょう)。これはギリシャが100万円借りる場合、1年で200万円返すことにしなければ、誰(だれ)もお金を貸してくれないことを意(い)味(み)します。ギリシャは借金を急(いそ)いで返そうと、国で働(はたら)く人の人数を減(へ)らすなど、使(つか)うお金を減らそうとしています。ですが、ものが売れずみんながお金を使わないので、入ってくるはずの税金も少なくなり、借金を返せなくなってしまいました。
ギリシャにはドイツとフランスの銀行だけで6兆円近くお金を貸しています。ヨーロッパの国々の関(かん)係(けい)は深く、ある国がピンチになると、他の国に伝わりやすいのです。ギリシャの次(つぎ)に借金が目立つのがイタリアです。イタリアはドイツ、フランスに続(つづ)くヨーロッパの中(ちゅう)心(しん)的(てき)な国です。もし、ギリシャが借金を返せずに破(は)産(さん)して、次にイタリアも同じことになってしまったら、ヨーロッパ全(ぜん)体(たい)がたいへんなことになってしまいます。このため、ヨーロッパの国々は話し合って、銀行がギリシャの借金を半(はん)額(がく)にすることや、1兆ユーロ(約105兆円)のお金を集(あつ)めて、ピンチになった国や銀行を助(たす)けることにしました。
3年前にアメリカでもたいへんなことが起きました。大きな銀行がたくさんの借金を抱(かか)えて倒(とう)産(さん)し、関係していたほかの銀行や会社も倒産。世界中の国に「アメリカは大(だい)丈(じょう)夫(ぶ)か」と心配が広がりました。これをリーマン・ショックと言います。ただ、そのときはどの国もお金があったので、大金を出し合って、ほかの国の会社などが倒産するピンチを食い止めました。今回のヨーロッパがたいへんなのは、どの国も多くの借金を抱えて、食い止める力がないことです。
今回は、日本やアメリカも協(きょう)力(りょく)を考えていますが、カギを握(にぎ)るのが、多くのお金を持(も)っている中国です。今後、(1)ギリシャやイタリアが借金を返すために一(いっ)致(ち)団(だん)結(けつ)できるか(2)ドイツなどほかのヨーロッパの国が協力を続けられるか(3)中国などがお金を出せるか--の三つがポイントとなりそうです。
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■答える人 藤好陽太郎(ふじよし・ようたろう)
毎日新聞東京本社経(けい)済(ざい)部(ぶ)デスク。1990年(ねん)代(だい)後半以(い)降(こう)の日本の金(きん)融(ゆう)危(き)機(き)を取(しゅ)材(ざい)。リーマン・ショックの時はイギリスのロンドンでヨーロッパを取材。現(げん)在(ざい)、銀行など金融担(たん)当(とう)のデスク。
毎日新聞 2011年11月12日 東京朝刊
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