杉山茂樹のBLOGマガジン

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  • 静岡県出身。東京都在住。AB型
  • 大学卒業後、フリーのスポーツライターとして取材活動をスタート
  • 得意分野はサッカーでヨーロッパが厚め。スポーツ誌を中心に執筆
  • W杯は82年のスペイン大会以降、8大会連続現地取材
  • 五輪も夏冬併せ9度取材
  • テーマは「サッカーらしさ」「サッカーっぽさ」の追求
  • 愛称はスギッチ。サッカー番長。自称スタジアム評論家
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現実主義者と理想主義者

年の瀬。というわけで、いろいろを振り返りたい気分になる。今年一番は何だろうか。悩むところだが、やっぱり、一番語りたくなるのは、バルセロナになる。多くの人がクラブワールドカップ優勝シーンを目撃しているので、話題を共有しやすい、語りやすいタイミングであることもある。
 
このサッカーちょっと変だな。変わってるな。と、強さと同時に、少なからず違和感を抱いた人は多かったはずだ。生観戦した人ほどより衝撃的な映像に映ったと思う。その中身については、さんざん語ってきたので割愛するが、見る側に与えるこの違和感に、バルサの真髄は潜んでいる。クラブとしての魅力の真髄が隠されている。
 
僕がこの違和感を体験したのは、かれこれ20年近く前になる。各地を転々とした後、バルサのホーム「カンプノウ」を訪れると、違和感はいっそう鮮明になった。記者席が、ピッチを真上から見下ろせる場所に設置されていたこともある。そこからバルサの試合を俯瞰で眺めると、それまで抱いていたサッカー観はガラガラと音を立てて崩れていくのだった。
 
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【メルマガ】クライフの哲学におけるウィングの位置取り

昨年までバルサのテクニカルディレクターを務めていたチキ・ベギリスタインは
浦和レッズ時代に、クライフのサッカーについて訊ねた僕に、こう答えた。

「クライフからタッチラインの線を常に踏んでいろと言われていた。スパイクの
裏に白線の粉がついていないと、注意されたものです」と。

その台詞を思い出したのは、前半9分のことだった。クラブワールドカップ決勝、
対サントス戦。グアルディオラはベンチからタッチライン際まで出て行き、なに
やら大きな声で指示を送った。もちろん、記者席までその内容が届くことはなか
ったが、ピッチに目を凝らせば、その声に反応した選手の姿だけは確認できた。
さらに、ほどなくして、その内容についても察することができた。

ダニエウ・アウベスは、仲間外れにされるのはゴメンだとばかり、その時、内に
入りたがる動きを見せていた。3―3―4の4の右、すなわち右ウイングに位置
していたものの、ボールはなかなか回ってこない。痺れを切らし、ボールをもら
いに持ち場を再三、離れていた。

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サントスの敗因は布陣の設定にあり

クラブワールドカップ。バルセロナは確かに凄かった。けれども、大会史に残る一方的な試合になってしまった原因は、サントスの対応の甘さにあったと僕は見る。聞こえてくるのは、バルサの話ばかりなので、ここではあえて敗者の戦いぶりについて触れてみたい。

3—4—3。いや3—3—4同然の布陣で臨んだバルサに対し、最も有効な手は何か。狙い目はどこかといえば、3バックの両サイドになる。横幅68mに対して最終ラインを3人でカバーすることは、現実的に難しい。1人のカバーエリアが広すぎるため、サイドのケアは二の次になる。注意すべきはまず真ん中というわけで、その両側にはスペースが生まれやすい。

サントスは布陣を変えてでも、そこを突くべきだった。つまり3FWの態勢で臨むべきだったのだ。というわけで、僕は試合前からサントスの布陣に注目していた。

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【メルマガ】バルサの根底に潜む気質

ボール支配率72%対28%。バルセロナが凄いのか、アルサッドが情けないのか。
よく分からない試合。ここまで一方的な試合を見たことがある人は、どれほどい
るだろうか。多くの人が不思議な気分に襲われたはずだ。

アルサッドの肩を持つわけではないが、彼らは最初から引いて構えたわけではな
かった。5バックになりにくい3—3—3—1風の3バックで、前に出ようとし
た。少なくとも前半20分ぐらいまでは、何とか試合になっていた。せいぜいハー
フコートマッチのレベルだった。だが、気がつけば3バックは常時5バックにな
り、ハーフコートマッチは、3分の1コートマッチに変化していた。すなわち、
アルサッドは、ピッチの3分の1ぐらいの場所までしか前進できなくなった。

理由はなぜか。バルサの選手が巧いから、パスが繋がるから、だけでは全くない。

バルサが奪ったゴールは4。見方を変えれば、それでも4点しか奪われなかった。

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サッカーにとって画期的だったクラシコ

「あらゆる布陣の中でもっともパスコースの多い布陣だ」。ルイス・ファンハールはそう言うと、こちらのノートをサッと取り上げ、空いたスペースに3—4—3の布陣図を描いた。そして10ある各ポジションを線で結んだ。「ここに三角形がいくつ描けているか。それはパスコースを意味する」と言い、こう続けた。「3—4—3は、現在使われている布陣の中で3角形が最も多く描ける布陣。パスコースの多さが特徴だ」

ご丁寧にも、さらに4—4—2、3—4—1—2等々の布陣を余白に描き、3—4—3と同じように、各ポジションを線で結んだ。

「時間があるときに、出来上がった三角形の数を数えてみるといい」

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【メルマガ】柏レイソルの健闘、その実情とは

クラブW杯。「柏レイソルはどれほどやってくれるでしょうか? 日本のレベル
は上がっていますからねー。結構やると思いますよ」。テレビではそんなやりと
りが交わされていた。

本当に日本のレベルは上がっただろうか。Jリーグの代表としてACLを戦った4
チーム(G大阪、名古屋、鹿島、C大阪)の中で最高位はC大阪のベスト8。そ
の他はラウンド16で沈んでいる。柏レイソルは、あくまで開催国特権での出場
だ。アジア(ACL)を勝ち抜いて出場しているわけではない。

Jリーグ代表の各クラブのレベルは、一頃に比べて確実に落ちている。

「上がっていますからねー」には、思わずエーーと、うなり声をあげてしまった。

浦和レッズとガンバ大阪が、クラブワールドカップで3位輝いた頃とは事情が大
きく変わっている。なにより、Jリーグのトップのレベルが上がっていない。

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発想は面白かった山田直の1トップ

クラブワールドカップへの出場を、わずか勝ち点1の差で逃した名古屋グランパス。僕は同情の思いを禁じ得ない。

Jリーグには、チーム名に企業名を入れてはいけないという規約がある。フランチャイズの都市名を入れなければならないわけだが、「トヨタ」にはその両方の側面がある。企業名としてのトヨタと、都市名としてのトヨタ(豊田)と。

都市名としてのトヨタですといってしまえば、トヨタグランパスはNGにはならないのだ。その気になれば、実現可能なチーム名であるはずだ。

実際、名古屋グランパスのクラブハウスも練習場も、豊田市にあるトヨタスポーツセンター内にある。ホーム戦の半分を行なうのも豊田スタジアムだ。名古屋グランパスはトヨタグランパスであっても不思議はない状態にある。にもかかわらず、あえて名古屋グランパスと名乗っている。

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【メルマガ】トラップに見るオランダと日本の差

どちらの足のどの場所でボールを受けるか。右足か左足か。インサイドかアウトサイドか。多くの日本の少年を指導した経験を持つオランダの指導者は、そこのところが徹底されていないといった。ボールを見ずにボール操作が行える選手が多い点には感心しきりだったが、右から来たボールを右足のアウトでトラップする選手が多いことには苦言を呈した。ボールが右から来たら左足のインサイド、左から来たら右足のインサイド。反対の足で受ける基本が疎かにされていると。

実際、その点に気をつけながら、現地の少年サッカーを見てみると、同サイドのアウトで受ける日本人的な選手は、ほとんど見かけなかった。この傾向は当然、大人のサッカーにも引き継がれている。欧州のサッカー全体にも共通している。華麗さはなくても堅実だ。

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五輪チームはどこへ行こうとしているのか

バーレーン102位、シリア115位、マレーシア155位。

僕は不確定要素が多いFIFAランキングを材料に、何かを語るのは避けようと思っている。日本ランキングは19位だが、それを額面通り受け止めるのは危険だし、実際、30位ぐらいなんじゃないかと怪しんでいるが、それでも、日本のU22と上記の3か国との間には決定的な開きがあると確信する。抽選結果を見た瞬間、正直これはもらったと思った。普段、悲観的な予想に走りがちな僕でさえ、笑いが出そうなくらい安堵した。本当にフェアな抽選だったのかと勘ぐりたくなったほどだが、それもいまや昔。すっかり懐かしい話になっている。五輪チームは、これまでの戦いで一切と言っていいほど格上感を出せずにいる。

日本が急に弱くなったのか。相手が急に強くなったのか。宮市を招集できないからか。清武、原口がA代表に招集されたからか。山村が怪我をしたからか。はたまた「勝負の世界は何が起こるか分からない」からだろうか。

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【メルマガ】バルサ的気質が可能にした3ー4ー3

中盤の4人が菱形で構える3ー4ー3。これに加えて3FWの真ん中、つまりセ
ンターフォワードがへこみ気味で構えるのがバルサ式だ。とはいえ、この布陣で
毎試合戦っているわけではない。やったりやらなかったり。肝心な所では4ー3
ー3を用いるのがこれまでの傾向だった。つまり「ミラン戦ではやらないだろう」
が、一般的な予想になる。

ところが、グアルディオラはやった。3ー4ー3でミランとのアウェー戦に挑ん
だ。そして3ー2で勝利を収めた。3ー4ー3を採用したから勝利を収めた——
とは思わない。4ー3ー3で戦った方がもう少し楽に戦えたに決まっている。グ
アルディオラも3ー4ー3の方が危なっかしいことは、百も承知していたに違い
ない。

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