WBCミニマム級タイトルマッチ1回、挑戦者からダウンを奪い、声を上げる井岡一翔=大阪府立体育会館で(岡本沙樹撮影)
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◇WBCミニマム級タイトルマッチ
王者の井岡一翔(22)=井岡=が挑戦者・ヨードグン・トーチャルンチャイ(21)=タイ=に1回TKO勝ちし、2度目の防衛に成功した。ほとんどパンチをもらわないまま、わずか98秒で試合を終わらせるという圧勝ぶり。相手は担架で運び出された。これで昨年10月にWBA同級王者となった八重樫東(大橋)との、日本初の2団体統一王座戦がグッと実現に近づいた。
井岡からボクシングファンへ、一足早い強烈なお年玉だ。わずか98秒の鮮やかな瞬殺TKO。「自分もこんなに早く終わるとは思わなかった。ビックリ」。思わずテレビの視聴率が心配になるほどの電撃V2。「井岡サイコー」の賛辞を贈るファンに「来年も元気づける試合がしたい。少し早いけどハッピーニューイヤー!」と叫んだ。
王座を奪った左ボディーがさく裂した。1回半ば。前王者オーレドンをもん絶させた左ボディーに、挑戦者は明らかな苦悶(くもん)の表情。「効いたのがすぐ分かった」とギアを一気にトップへ。続けざまの左フックが顔面をとらえると、ヨードグンはたまらずダウン。そのまま担架に乗せられる衝撃の失神KOになった。
充実の1年を有終の美で飾った。2月に日本選手最短記録となる7戦目で世界王座奪取。「夢の世界王者が実現できた。“良い年”だけでは表せない衝撃的な年」。一方で直後の東日本大震災に心を痛めた。「自分だけで“最高の年”とはいえない」。それだけに大みそか決戦に懸けた。「みなさんが来年につながる夢をもらったと思える試合にしたい」。日本国民を元気づけようと、自分を追い込み、体調もベストに仕上げた。
これで日本初の統一戦実現も近づいた。プロモーターでもある井岡の父、一法トレーナーは「相手は初防衛だし、(階級を下げている)こちらはミニマム級ではあと1、2戦が限界」と、八重樫側が拒否する可能性に触れながら「こちらはやりたい。話があれば受ける」と年明けにも、陣営と交渉するつもりだ。
叔父の井岡弘樹会長にも肩を並べた。1987年にWBCミニマム(当時ストロー)級王者となった叔父も王座を2度防衛。さらに「2012年は2階級制覇を狙っている」と、叔父が成し遂げた2階級制覇を新年の目標に掲げた。「おじさんはおじさん。僕は僕。でもボクシング=井岡一翔にしていきたい気持ちはある」。日本国民の注目度をさらに上げたヤング王者が、2012年のボクシング界を“一翔一色”に染めることを誓った。 (田中一正)
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