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2011年12月7日(水曜日)18時36分

粉ミルク(乳児用食品)の放射能汚染問題——責任の所在の明確化と国民が望む着地点はどこか

kyumei /カテゴリ:食品汚染 /
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明治の粉ミルク「明治ステップ(850g缶)」のセシウム汚染問題(同社12月6日付ブレスリリース「明治ステップ(850g缶)」のお取り替えに関するお詫びとお知らせ)は、第二の「森永ヒ素ミルク事件」といってもさし支えないほど、乳幼児を抱える親たちに衝撃を与えた。粉ミルク等「乳児用食品」はもちろん、原料の原乳の汚染に改めて目が向けられ、牛乳、加工乳、乳飲料、乳製品、牛乳を原料とする菓子などの汚染、学校給食用牛乳の汚染が心配されている。牛乳に含まれる「ラクトフェリン」は放射線防護効果を有するとされ、カルシウムもストロンチウムの吸収を阻害するものとして、牛乳の摂取に期待が寄せられていただけに関係者の落胆も大きい。

8月26日の業界団体の検査結果発表では6社8種の乳児用粉ミルクで「検出せず」「明治ステップ」は発表リストに含まれず

明治の粉ミルク「明治ステップ」セシウム汚染問題は、酪農関係者や乳業界にも衝撃を与えた。浅野茂太郎・明治代表取締役社長も非常勤の副会長として名を連ねる一般社団法人日本乳業協会では、8月26日、「乳児用調製粉乳の放射性物質検査結果について」(http://www.nyukyou.jp/topics/20110826.html)を発表し、2011年7月に製造された6社8種の乳児用粉ミルクについて、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137がいずれも「検出せず」であったことを報告している。検査対象は2011年7月に製造された6社8種の乳児用粉ミルク〈「アイクレオのバランスミルク」(アイクレオ株式会社)、「明治ほほえみ」(株式会社明治)、「ビーンスターク」「ネオミルクすこやか」(ビーンスターク・スノー株式会社)、「森永ドライミルクはぐくみ」「森永ペプチドミルクE赤ちゃん」(森永乳業株式会社)、「雪印 ぴゅあ」(雪印メグミルク株式会社)、「和光堂レーベンスミルクはいはい」(和光堂株式会社)〉すべてで「検出せず」だった。ところが、この中には、今回、自主回収となった「明治ステップ」は含まれていない。「明治ステップ」は、主力商品であるにも関わらず、公表対象から外されたことには疑問が残る。明治を除く他の5社の検査結果も、検査機関名、測定方法の記載がないなど、その信憑性にも疑念が生まれかねない。

原乳(生乳)、牛乳・加工乳はどうか

今回のセシウムに汚染された「明治ステップ」の原乳を粉状にした原材料は、3月11日の東日本大震災前(福島第一原発事故前)に加工されたもので、北海道や米国、オーストラリア、欧州から埼玉県春日部市の同社埼玉工場に搬入(共同通信、日刊スポーツ)、同工場で3月14~20日に牛乳を乾燥させる工程を経た製品だという。北海道や米国は、オーストラリア、欧州いずれも、旧ソ連やアメリカの核実験、オーストラリア国内での英国の核実験、チェルノブイリ原発事故等ですでに汚染が広がっていた可能性も否定できないが、同社は、原乳を粉状にした原材料に水と栄養分などを混ぜて再び液化されたものに、3月14~20日、約200度の熱風を当てて乾燥し、再び粉状にする過程で、東京電力福島第1原子力発電所事故で放出された大気中の放射性セシウムが混入したものとの見解を示している。

学校給食用の牛乳の汚染を心配する町田市の吉田つとむ市議会議員(志政クラブ)は、明治乳業の茅ヶ崎工場で製造された町田市内の公立学校(町田市立小学校)で使用する給食用牛乳を指定された学校給食納入業者より6月6日、入手し、これをたんぽぽ舎の放射性物質の含有調査に出した。結果は、ヨウ素、セシウムとも一切検出されず、「とてもきれいな牛乳でした」とのお墨付きまでもらった(2011 町田市立の学校給食用牛乳の放射性物質含有測定結果)という。

ところが、同議員が町田市内で学校給食が始まった最初の日=9月2日に取り寄せた町田市立小学校での学校給食用牛乳(前回と同じく明治乳業の茅ヶ崎工場で製造されたもの)をたんぽぽ舎をたよって同舎内の「放射能汚染食品測定室」で9月6日測定してもらった測定結果報告書によると、セシウム合計で6ベクレル/kg (ヨウ素131 不検出、セシウム134 1ベクレル/kg、セシウム137 5ベクレル/kg)という驚くべき結果となった(測定結果報告書)。
吉田市議会議員は、明治にこの結果を知らせ、製造過程等を問い合わせたが、明治は、9月27日付で回答を同議員に送り、回答時点で検査結果は非公表だがゲルマニウム半導体検出器を使って生乳(原乳)の放射性物質検査を行ってきたとしている(明治の回答書)。

実は、市民放射能測定所が「明治北海道牛乳 彩る季節」(福島市渡利で流通しているものを入手)を10月22日に検査したところ、セシウム137が4ベクレル/kgという結果を得ている(食品別測定結果 | 市民放射能測定所)。

「明治北海道牛乳 彩る季節」は、明治が原発事故後の2011年6月28日から全国発売したもの。「年間を通し、自然豊かな北海道の放牧酪農家が育てた乳牛の生乳を100%使用し、また牧草の生育が旺盛な6月から9月には、放牧されて育った乳牛から搾った生乳を100%使用した商品」で「北海道にて産地パック」(同社6月22日プレスリリース)しているという。

粉ミルクのように加工の過程で大量の熱風を原料に当てることがなく大気中の放射性物質を取り込みにくいと思われる「生乳を100%使用した」牛乳で、このような結果が得られたということは、生乳(原乳)段階での放射性物質の混入を疑ってしかるべきである。

現に、北海道大学の札幌キャンパス内にある同大学北方生物圏フィールド科学センター生物生産研究農場の「原乳の放射性ヨウ素と放射性セシウムの分析結果」では、 5月9日、5月23日、 6月6日、6月20日、7月8日の検査で、セシウム137とセシウム134が僅かながら検出されている。

明治はなぜ今回公表し、回収を急いだのか

今回、明治が「明治ステップ」の汚染状況を公表し、該当製品の回収を急ぎ、同社の粉ミルク製品の検査結果の公開に踏み切ったのはなぜか。きっかけとしては、NPO法人TEAM二本松の市民放射能測定室(福島県二本松市)の調査結果を受けた共同通信社の記者の動きがあったという(速報 【粉ミルク(明治ステップ)からセシウム検出】 – NPO法人TEAM二本松「市民放射能測定室」)。TEAM二本松では、明治関連では、粉ミルク以外に11月22日付と24日付の「明治おいしい牛乳」の測定結果を公表している。また、11月29日付のみちのくミルク株式会社本社工場の「メグミルク」の測定結果も明らかにしている。「明治おいしい牛乳」とみちのくミルク株式会社本社工場の「メグミルク」ともにセシウム137とセシウム134が検出されている。
対応を間違えば、市民団体、NPOによって明治の牛乳・加工乳・乳製品について次々と測定結果が公表される状況にあり、共同通信社のように地方紙にニュース配給網をもつ報道機関が動き出せば、明治は窮地に立たされる可能性があった。
明治は追いつめられた結果となったが、粉ミルクの一部の汚染製品を回収し、粉ミルク製品限定ではあるが、測定結果をホームページで公表していくという対応は、それでも業界内では先駆的な取り組みとなった。
明治関連では、明治乳業争議団を中心に、ネッスル、三井製糖、雪印乳業、雪印食品などの労働者が参加する「食品関連一般労働組合」(略称・食品一般ユニオン)が今年3月6日に東京都内で設立されており、10月30日付の「明治乳業争議団ニュース1134号」によれば、食品一般ユニオンと明治本社との団交でも「放射能汚染から国民・消費者を守り、真に『食の安全』に寄与する大きな責任」に関して議題とすることを同社に要請しているという。
粉ミルク等の「乳児用食品」に関する基準の強化についての包囲網は、厚労省の審議会内部でさえ広がりつつあった。厚労省薬事・食品衛生審議会の食品衛生分科会放射性物質対策部会には、全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長も入っており、11月20日付「asahi.com(朝日新聞社):放射能検査、乳児食は別基準で 一般食品より厳しく」、11月24日付「asahi.com(朝日新聞社):食品の放射線物質基準 『乳児用』を新設 厚労省審議会 – 社会」といった報道にあるように、11月24日の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会では、粉ミルクなど「乳児用食品」の厳しい基準の区分新設を提起していた。
明治の対応は、市民測定団体の測定値公表や報道、労組の動きに加え、政府によるこうした規制の強化を念頭に置いたものと考えられる。

責任の所在は?

今回の責任の所在は、とても甘い粉ミルクの暫定基準値(200ベクレル/kg以下)を設定した政府にこそあると考えるのが妥当だろう。明治は「明治ステップ」が国が定めた暫定基準値よりも下回る22から31ベクレル/kgだったが、公表・回収に踏み切った。粉ミルクの2製品に限る(現在は明治ほほえみ850g(缶)、明治ほほえみらくらくキューブ(648g、108g)、明治ステップ850g(缶)、明治ステップ らくらくキューブ(672g、112g)、明治ミルフィーHP 850g(缶)、明治LW 850g(缶)の測定データが明治の公式サイトで公開されている)が、「今後すべての製造日の製品で放射性物質の検査を行い」「ホームページで掲載してまいります」という(同社12月6日付ブレスリリース「明治ステップ(850g缶)」のお取り替えに関するお詫びとお知らせ)。
明治は、一般市場向けの牛乳や加工乳、学校給食用牛乳や原乳の測定値の公表には至っていないが、乳業界に一石を投じるかたちとなった。今後、乳業界全体の一般市場向けの牛乳や加工乳、学校給食用牛乳や原乳の測定値の公表への布石となる可能性もある。当然のことながら、明治を含めた乳業界全体が政府が規制を強化しようとしている「乳児用食品」である粉ミルク以外の牛乳や乳製品について測定値非公表の、暗黙のカルテルを維持してきた責任は大きい。

国民が望む着地点はどこか

国民は、粉ミルク等の「乳児用食品」はもちろん、それ以外の牛乳や乳製品の測定値の公表を求めている。当然、暫定基準値を下回る場合でも5ベクレル/kgを上回るような数値の場合は製品の出荷を中止し、流通した場合はただちに回収を実施するというのが国民が求める対応の基本になるだろう。
福岡県内で共同購入・個人宅配、店舗を展開してきたエフコープ生活協同組合では、1986年4月のチェルノブイリ原発事故による放射能汚染をきっかけに、「エフコープ残留放射能暫定自主基準」を策定し、放射能の影響を受けやすい乳幼児が飲む粉ミルク類には、3ベクレル以下という厳しい基準を設定している。
乳児や子どもが毎日摂取する粉ミルクや牛乳、加工乳、乳製品について、政府には暫定ではない絶対的な厳しい基準値を設定していく責任がある。同時に乳業界も政府の基準値の改定を待つのではなく、より厳しい自主的な基準を設定して対応していく責任がある。さらに、NGO、市民も含めて、回収された粉ミルク等が途上国に売りつけられたり、支援ミルクとして送られたりすることがないように監視していく責務がある。チェルノブイリの原発事故で汚染された粉ミルクがフィリピンやネパールで流通し、メキシコでも流入し、消費者の手に渡る前に阻止したという経験が語り伝えられている。もともと、日本は、チェルノブイリの子どもたちのために汚染されていない優秀な粉ミルクを送ってきたという歴史があった。それを思うと、今回の原発事故の罪深さは万死に値するといっても過言ではないだろう。

 

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  • このサイトについて
    このサイトについて真相究明は、現代史ライターの堀田伸永のオフィシャルサイトです。

    堀田 伸永(ほった のぶなが)地域系現代史研究者・ライター。広島県生まれ。大学卒業後、地方誌編集長などをへて編集者・ライターとして独立。1990年代以降、原子力・放射能関連のモンスター・SF映画の研究。原爆投下部隊「509混成群団」、その関連で広島・長崎の気象観測機のパイロット、クロード・イーザリー、第五福竜丸事件など核実験による被曝事件、ロズウェル事件、原子力・核開発との関係濃厚なマジェスティック12等を追う。福島第一原発事故を機に、米人体実験医師グループ、731部隊、原爆調査団と戦後の原発・放射線影響利益共同体との関係史を辿った「ヒロシマからフクシマへ——戦後放射線影響調査の光と影」を執筆、インターネット上で無料公開。現在、原子力開発のために人命や環境を軽視する発言を記録する「原子力偏愛迷語録」、放射能人体影響過小評価を批判する「放射能偏愛迷語録」の各ブログ運営。広島・長崎の「黒い雨」調査史を調査・執筆中。

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