経済産業省原子力安全・保安院は31日、全国の原発で事故が起きた際に、放射性物質の放出量を予測する「緊急時対策支援システム」(ERSS)に不具合があり、一時作動しなかったと発表した。ERSSは放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)の基となるシステムで、この間に事故が起きていれば、放射性物質の拡散を迅速に予測できなかった可能性がある。【神保圭作】
ERSSは全国の原発の運転状況を示すデータを保安院やオフサイトセンターで監視するシステム。
保安院によると、30日正午前、志賀原発(石川県志賀町)の検査官がERSSの表示システムが機能していないことに気付き、他の原発に問い合わせたところ、システム全体で不具合が生じていたことが分かった。31日午後2時半ごろに復旧したが、作動していなかった期間や不具合の原因は不明という。
表示システムが機能していない間に事故が起きた場合、原子炉の情報をファクスや電話などで取り寄せ、保安院の担当者が入力しなければならないため、時間がかかるという。
ERSSは約155億円かけて開発されたが、東京電力福島第1原発事故では電源喪失のため機能しなかった。
保安院は、ERSSの不具合を30日に把握していたが、丸1日公表しなかった。保安院の担当者は「重要なシステムが活用できない状況にあったことは遺憾で、ERSSを管理する『原子力安全基盤機構』に原因究明と再発防止を指示した。申し訳ないの一言しかなく、今後は気を引き締めていく」と話した。
毎日新聞 2011年12月31日 18時52分(最終更新 12月31日 22時03分)