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白川日銀は「デフレ誘導」

政策“ミス”はこれで三度。世界最悪のGDPギャップを埋めようともしない。実は意図的な「物価下落」。

2010年1月号 BUSINESS [日本経済の貧乏神]

今回は日銀が政策誘導のタイミングでチョンボを犯したことが明らかだが、日銀は昨年もミスしている。

08年10月8日、リーマン危機後に米欧の銀行間市場が凍りつき、連鎖リスクが高まったため、世界同時利下げが行われた。利下げを発表・実施したのは欧米6中銀のほか、中国、アラブ首長国連邦(UAE)、香港、クウェートの計10カ国・地域。日本の名はない。その前日の7日、日銀は政策決定会合で金利据え置きを決めていたのだ。

8日当日、日銀は利下げではなく「支持」を表明した。あるテレビ局は「支持」を「支援」と報道して慌てて訂正した。それほど日銀の利下げ不参加は、微妙かつ奇異な出来事だった。マスコミからも「日本の不参加で市場には主要7カ国(G7)の足並みの乱れを指摘する声が出る可能性もある」といわれた。

すでに低金利だったので利下げの余地が乏しかったという日銀を擁護する意見もあるが、ゼロ金利下でも量的緩和によって実質金利でマイナス金利にできることは、日銀自身にすでに実績がある。日本だけが金融緩和しないため相対的に日本の金利は割高になり、円高圧力がかかって円が急騰、優良株といわれる輸出関連株が下がって怨嗟の声があがった。日銀が重い腰をあげて政策金利を0.2%下げたのは10月30日、それでも足りず12月19日に0.2%下げて現行の0.1%にしたのだ。

速水優総裁時代のゼロ金利と量的緩和政策に反対したのが当時理事だった今の白川総裁と山口泰副総裁である。利下げも渋々だが、非伝統的な緩和も米欧に比べ日銀が消極的だったのは明らかである。

実は日本の景気が悪いのは、サブプライム危機の余波というより、06~07年の金融引き締めが原因なのだ。06年3月、福井俊彦総裁のもとで量的緩和政策を解除し、同年7月、07年2月、政策金利をそれぞれ0.25%ずつ引き上げた。定量分析をしても、06年中ごろから予兆がみえ、07年に確実になった景気下降をよく説明できた。サブプライムで直撃弾を受けていない日本の景気が不振を脱することができないのは、日銀の政策ミスによるところが大きい。

06年からの金融引き締めの担当者は現総裁の白川筆頭理事である。彼は06~07年、08年、09年と連続して三度のミスを犯しているのだが、会見では薄笑いを浮かべて恥じる様子もない。ただ、ここまで繰り返すのは、単なるミスではなく、確信犯であると思えてならない。

「デフレ・ターゲティング」?

先述した本誌11月号の記事にあるように、世界標準の消費者物価指数(除くエネルギー・食品)でみると、日銀は00年以降、「マイナス1~0%」の幅に見事に物価をコントロールしている。これは単なる偶然ではありえない。実際、日銀の金融政策変更をみれば、ひどいデフレ(マイナス1%以下)にならないよう、しかもデフレから脱却(0%以上)しないよう、完璧にコントロールしているとしか見えない(図Ⅲ参照)。

日銀は、世界の先進国で標準的になっているインフレ目標について、「実施できる手段がないと信頼を損なう」として反対してきたが、00年以降の結果だけをみると、とんでもない。皮肉をこめて言えば、世界でもっとも物価管理能力のある中央銀行なのだ。ただし、その目標ゾーンが狂っている。「マイナス1~0%」ではなく「1~2%」と、2%ポイントほど上に設定すべきなのだ。

日銀から金融ネタをもらう“御用聞き”マスコミや、研究助成を受ける“御用”経済学者のなかに「本石町応援団」が多い。彼らは日銀の顔色を読んで「量的緩和をしても効果がなかった」と口をそろえる。顕著な効果がなかったのは、物価を生かさず殺さず「デフレ・ターゲティング」に押し込めてきたからだ。

筆者は10月の消費者物価指数(除くエネルギー・食品)がマイナス1.1%と判明し、「マイナス1~0%」の目標ゾーンから下振れしたときから、日銀は何かやると思っていた。ゾーンを上か下に外れたら動くのが、これまでの日銀の行動パターンだからだ。しかしデフレ脱却まではやらない。

デフレ脱却のためには、GDPギャップを埋めればよく、長期国債買い入れで量的緩和を30兆円以上、または同じことだが財政法第5条但し書きに基づく日銀引き受け30兆円を行えばいい。「デフレの闘士」どころか「デフレ愛好」の白川日銀にそれは望むべくもない。

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