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嫌シリーズ その2
きらいなもの→学校
作:おもちばこ



前回のあらすじ

 キングを怒らせてしまった俺は“ポーンの呪い”をかけられ、
 チェスをするたびに時々意識を失うようになってしまった。

 「詳細はきらいなもの→チェスを読んでね!!」

 勝手に入ってくるな!!戸叶!!






学校なんかだいっきらいだあぁぁぁぁ〜。




そんな声が俺の中でこだまする。

そんな事言いながら俺は学校のでは成績優秀者で通っているのだが

学校にいるとウザイ奴が・・・。




俺の意識が一時間ほど無くなった日曜の翌日

つまり月曜の朝

「敦志おはよ〜。」

「げ・・戸叶。」

「私には1日1勝という目標があるんだからね。」

彼女の名前は俺の同い年の戸叶綾香(とがの さやか)。

俺が知っている中では唯一の負けず嫌い。

勉強でも、スポーツでも、順番を決めるじゃんけんでも。

彼女は勝負事に強く、テストではいつも満点を取るし。

体育の鉄棒だって片手大車輪が出来てしまうほどの兵(つわもの)だ。

そんな彼女は勝負に弱い俺を格好のターゲットとして勝ち星を上げ続けている。

どんな事でも(俺に)負けることを大の屈辱とし、

ついにはなぜだか知らないが高校2年生まで俺と同じ学校の同じクラスにいるのだ。

ま、それはそれで嬉しいんだけど。



俺たちはいつもホームルームの40分前に学校に着く。

早すぎるって?遅すぎるよりマシだ。クラスにはまだ数人しかいない。

席につくと俺は戸叶に声を掛ける

「戸叶、今日の時間割はなんだ?」

俺はあいつと何でも勝負する代わりに必要なときだけ利用させてもらう。

あいつは指を折りながらこう言う。

「ええとね。英語U、世界史B、体育、数学U、古典、LHRだよ。」

「そうか。」

「ちょっと。お礼ぐらい言ったらどうなの。あ・・・」

毎日の事だ、お礼なんか言わなくたって。

「ちょっと、敦志。そこから退いた方がいいよ。」

戸叶は何をいっているか全く分からない。

「ここは俺の席だぞ、なんか文句あんのか!!」

すると彼女は言い返す。

「なによ、せっかく人が親切にしてあげてるのに!!」

彼女は一番前にある自分の席に戻っていった。

俺にはあいつの言いたいことが全くわからない。

相変わらず変な奴だな。




時間はまだ30分くらいある。何しよっかな。

「チェックメイト」

俺は後ろから聞こえたその声に敏感に反応して振り返った。

すると俺の真後ろの机で二人の女子がチェスをやっているのに気付いた。

彼女達の名前は・・・なんだっけ?

戸叶と同じゲーム同好会に所属しているのだけは知っている。

どうやら教室の中には俺たち4人しかいない様だ。

「あの〜。安堂くん、一緒にチェスをやらない?

久しぶりに自分の腕を試してみたくって。」

「あ、ああ。」

こいつは暇つぶしにもってこいだ、俺の実力を見せてやる。

せめて無礼をかましちゃったキングへのお詫びが少しでもできれば・・・いいなぁ。

俺が先攻、あいつ・・まだ名前思い出せねぇ。とにかくあいつが後攻の白でゲーム開始だ。

「神様どうか、ポーンが成りませんように。」

戸叶は相変わらず変なことを言うな。ポーンは成らないと勝てないだろうが。

俺はポーンを動かしクイーンの通り道を空ける。


カチャカチャと駒を動かして15分後


「チェック」

「おまえ・・・腕上げたな。」

俺はいつのまにかキングとクイーンの両取りをかけられていた。

チェスは先にキングをとったほうが勝ちだ。

俺は仕方なくクイーンを捨て、キングをやむなく逃がす事にした。

すると相手のクイーンが俺のキングの前に来る。

「チェックメイト」

俺は開いた口が塞がらなかった。俺がチェス歴推定1年の奴に負けるとは。

「わー、満輝ちゃんすごーい。」

「いやー、舞ちゃん。照れちゃうんじゃない。」

そうだ、俺が相手していたのは雪村満輝(ゆきむら みつき)で

応援していたのが浅野舞(あさの まい)だ。思い出した。




俺は本当はチェス弱いんじゃないのか?ちくしょう・・・・









「よかった〜。」

あいつの言葉に俺はカチンと来た。

「何が良かったんだよ。俺はすっげー悔しかったんだぞ。」

「え、御免、別にそういう意味で言ったんじゃ・・・」

「うるせえ!!俺があいつらにも勝てないからって。

俺はそんな小せえ人間じゃねえんだよ。」

俺は思いっきり拳を振り上げる。すると

「やめなさい、女の子に手を上げるなんて。」

教室に入ってきた粟田 万理(あわた まり)先生のその一言で、

俺の拳は向きを変え、俺の斜め右にあった戸叶の机を叩いた。

ゴワァアン!!

「ひっ・・・」

「・・・ふん。口の利き方には気をつけるんだな。」

俺は席についた。





俺は勉強に集中できなかった。





3時間目 体育

「戸叶さん、大丈夫?」

「あ、舞。う・・うん。大丈夫だよ」

「あいつ酷いよね、きっと綾香があいつのこと好きなのに気付いててやってるんだよ。」

「うん・・・」

「どうしたの、どっか具合でも悪いの?」

「舞、ちょっと頼みがあるんだけど。」

「え?」





畜生、


俺は何てことをしてしまったんだ。

友達のいない俺にあんだけ付き合ってくれた。

いつでも俺と一緒にいてくれたあいつに。

・・・畜生。



でも今ならきっと取り返しがつく。

俺は体育の先生にこんなことを言っていた。

「先・・・生」

「何だね?」

「おれ、昼休みになったら戸叶に謝りたいと思います。」

「は?」




4時間目 数学U

授業時間終了3分前

「まだ少し時間が有るけど、キリのいいところで終わったので。

自由にしてていいよ。但し、教室からは出ないようにね。」

先生のこの言葉が終わったと同時に私語が溢れかえる。

俺はまだノートを写していた。

数学の先生が結構細かいところまで黒板に書くからだ。

要点だけ書いてくれ、要点だけ。


黒板を見ていると、一番前の席の戸叶が振り返っていて

顎で誰かに指示を出しているのが見えた。

何やってんだろ。




振り返れば浅野が一人で白黒のチェス駒を動かしている。

そんなにチェスが好きなら家でやれ家で。


「安堂くん、御免」

「え?なに?浅野さん」

彼女は端まで来た黒いポーンの代わりに

既に白に取られていた黒いクイーンを置いた。するとなぜか

ビリャブブブビリャビィビビィ

俺の身体に強烈な電撃が走った。

「ぎゃあっぁぁぁああああああ」

浅野は驚きの目で俺を見ていた・・・・

折角仲直りしようとおもった・・・のに。


ベリボァリボリ!! グリョグルグリョ!!





「どうしたんだ、安堂。」

授業が終わってないのでまだ教室にいた先生も含めて

30人ほどのクラスメイトが敦志の前に屯していた。

「おい、おまえ、本当に安堂なのかよ。」

クラスの男子は目の前の美女に釘付けだ。

「凄い綺麗・・・」

クラスの女子は元・敦志の美貌に惚れ惚れしている。

長袖の学蘭を着ているため体はよくわからなかったけど。

透き通った肌、輝く青い目。

エンジェルリング(天使の輪のこと)

がくっきりと浮かび上がるほどのつやつやの金髪に

「わー、髪も凄い綺麗・・・」

数人の女子が彼女の髪に触りまくっている。

あたしは元・敦志に背を向けて元・敦志をかばう。

「すいません。じつは“かくかくしかじか”・・・」





敦志の事情を聞いた数学Uの三角(みすみ)先生は。

「そうか、そういうことなら我々も協力してあげよう。

この事は他の先生方にも言っておこう、勿論。“かくかくしかじか”でな。」

クラスの数人が笑った。便利だ〜このフレーズ。

授業のチャイムと共に三角先生は教室を去り、そしてお姫様が目覚める。

「うぅ、うぅ。」

眠れる美女のお目覚めかとばかりに男子に変な気合が入っている。

それを女子が必死にブロックする。



「お・・綾香殿ではないか。」

あたしは頷く。

「周りにいるのはそなたの知り合いか?」

「うん、もう綾香でいいよ。殿なんか付けたら堅っ苦しくてしょうがないよ。」

「そうか」

全員が自己紹介とばかりに一斉に同時に名乗る。私はクラスの皆に向かってこう言う。

「馬鹿ねみんな、それじゃ分からないわよ。」

あたしは金髪のお姫様を欲に照るんじゃない。。

「おう、そうか。宜しく頼むの。ところで秋穂君。」

「は・・・はい!!」

ご指名が来たとばかりに声が裏返っている。

「今は昼なのか?腹の虫がなっておったぞ。」

「あ・・・はい・・・」

皆の笑い声が響く。その後もお姫様は名指しで順番に挨拶をしていく。

「すげぇ・・・」

「聖徳太子以上だぜ。」

そんな男子の声が聞こえる。

クラス30人の声を一度に聞き分けるのは確かに凄いかも。

短時間でこんなにクラスの注目を集めているお姫様。

敦志とは偉い違いだ。





「一緒にお昼食べよ。」

「そうか、どこで食べるのだ?」

「みんなで机を寄せてお弁当に決まってるじゃない。」

「私の分もあるのか?」

「多分敦志の鞄に入っていると思うよ。」

食べるのは敦志の身体なんだしいいよね。




彼女を囲むようにして。

お姫様の隣に座っていた満輝は机と椅子を、

一番前の席にいる私や

後ろにいた舞はチェス版をおいていたため。

椅子だけを持ってきた。



彼女はもの凄い行儀がよかった。

見た目は外国人なのにお箸を器用に使い、しっかりと咀嚼をしていた。

何気にパクパク食べているあたしが少し恥ずかしくなった。



「綾香。」

「何。」

こっそりと私に耳打ちをした。

"何故だか胸が苦しいのだ。食べ過ぎたわけでも無いのにどうしたものかのう。"

ふと彼女の胸元を見ると、

彼女の大きめの胸に押され学蘭の第2、第3ボタンが限界に差し掛かっていた。

ミシミシという音がリアルによく聞こえる。

敦志はいつも下にシャツを着ていなかった。

このままでは中のワイシャツごと・・・


彼女の危機を感じたあたしは舞に目で終了の合図を送った

そして舞は自分の席にあるやりかけのチェスボードに大声でこう叫ぶ。

「ここで白がギブアップ!!」












「・・・あれ、昼休み、終わってる。寝ちまったのかな。俺。」

古典の木塚 千成(きづか かずなり)先生が授業をしている。

時計を見るとまだ始まってそんなに経っていない。

弁当箱を開けてみると。空になっている。いつのまに食べたんだ。

「おかしいな・・・。」

やけに木塚先生が俺の方を見ている。

先生だけじゃない、クラス全員が俺の方をちらちらと見ている。

俺がなんかしたのか?

授業が終わるころ戸叶が先生に呼び出されている。

閻魔帳で口を隠して何かを伝えているようだ。

戸叶は輝いた目で何度も頷く。にやけた顔が気持ち悪い。

やっぱり変な奴だ。







休み時間

俺はいつもの様に椅子に寛いでいる。

振り返るとまた浅野が1人チェスをやっている。

そんなにやりたいんだったら家でやれ、家で。



6時間目

担任の先生の粟田 万理(あわた まり)先生が

「それじゃ始めまーす」といって入ってきた。

戸叶が待ってましたとばかりに喜んでいる。気持ち悪い。

粟田先生が出席をチェックしている。

俺は安堂だから出席番号は3番だ、1番は秋穂、2番は浅野

「安堂くん」

「はい」

といった瞬間後ろから何か小さくカタンという音がした途端に。

!!ビョロヴィロヴィービョロヴィロヴィー!!

俺の耳に間近で飛行機が離陸したような爆音が聞こえて俺は意識を失った。


グリングリングリン!!ボキボキボキィィィイ!!

ビチビチビチビチ!!ゴキゴキギリギリ!!


あたしはついこう言ってしまった。

「ビチビチって初めて聞いた・・・。」

粟田先生が声を掛ける。

「安堂くん、大丈夫?」

敦志、いや彼女は目覚める。

「う・・・」

胸が苦しそうだ、あたしが1つずつ校章がついた金のボタンを外していく。

なぜかどきどきする。

「へぇ〜。三角先生が言ってたことは本当なのね。」

感心する粟田先生。

2月だというのにワイシャツ姿のお姫様。

先生は上にセーターを羽織ってもいいと言ってくれた。

あたしが予備に持っていたやつを着せようとすると。

「綾香、こんなに私に気を使ってくれてありがとうの。」

あたしはなんだかうれしかった。





今日のLHRは“お姫様に名前を付けよう”という事になった。

みんなの相談の上で彼女を“マリー”と呼ぶことにした。

「私が・・・マリーか。」

「これからも宜しくね、マリー。」

「おう、ありがとうの。」




授業が終わり、全員が家に帰ったり部活に勤しんだりする。

「マリー、一緒に帰ろう。」

「綾香、敦志は部活に入っておらぬのか?

いくらお主が良くても、先輩後輩が困るだろ。」

忘れてた。それもそうだよね。あたしは近くの人に聞いてみる。

「ねえ秋穂君、敦志って何部だっけ?」

「たしか野球部でピッチャーやってるけど。」

「レギュラーなの?」

「僕も野球部だから知ってるけど・・・多分二番手、

エースは2年3組の蟹田 泉(かにた いずみ)だよ」

じゃあ今日ぐらい出なくていいよね。

「お、お主。いきなり私の腕を掴むな。」

「いいの、このまま帰ろう。マリー。」

こうしてあたし達は腕枕の状態で一緒に帰ることになった。






そのころ野球部では。

「え?安堂帰っちゃったの?」

一年生ながら名キャッチャーの城戸 武(きど たけし)が豪腕キャプテンの蟹田にこう伝える。

「“かくかくしかじか”は先輩も聞いているでしょ。

同じクラスの戸叶さんがつれて帰っちゃったみたいですよ。

変身した姿のまま。」

「・・・・見たかったのにな。彼女。」

「・・・はい。正直言いますと僕も。」



そして安堂家の前。

「じゃあここでお別れだの。綾香」

「うん・・・」

「私が敦志殿に戻るにはゲームを終了させなきゃならぬだろう。」

「あ、その件についてはご心配なく。

舞があのまま家にチェス盤を持って帰っているから。

電話一本で元に戻れるわよ。だから・・・」

「何かな?」

「敦志の家で一緒に遊ぼ!!」

「あ・・ああ。」

敦志の家に入るとおばさんが出迎えてくれた。

「あら綾香ちゃんいらっしゃい。

敦志はまだ帰ってないわよ。隣にいる子はお友達?」

「は・・はじめまして。」

マリーがぺこりと頭を下げる。

「はい、実は“かくかくしかじか”・・・」

「そうなの、おばさん所はね。敦志一人でしょ、

ずっと娘が生まれないかって思ってたの。

そして今日遂にその夢が実現したわ。

ありがとう、綾香ちゃん。」

こんなに受けるとは正直思ってなかった。

普通なら大騒ぎのはずだ。

「服のことについては心配要らないからね。

今度の日曜日一緒にショッピングに行きましょうね。」

マリーは状況が把握できないままこう言った。

「母上・・・誘ってくれてありがとうの。」



あたしは敦志の部屋でマリー姫と2時間名一杯遊んだ。

彼女はめっぽう強い。

チェスは5分で勝負がついてしまったし、



「綾香、敦志のことなのだがな。」

急にあたしの顔が曇った。あいつなんか

「昼休みに謝ろうとしておったようだぞ。」

「え・・・」

「体育の種村 純(たねむら じゅん)先生がいっておった。」

「・・・・」

「今からでも遅くは無い、いますぐにでも大丈夫だ。」

「やめて!!敦志のことはもういいの!!」

あたしは後ろからマリーの肩に抱き付く。いい香りがする。

「お主・・・」

「今はもうあなたのほうが好きなの・・・ずっとこのままでいて。」

「綾香・・・」

マリーはどう答えていいか分からなかった。

無理も無い、普通に話しているとはいえ覚醒してから2日も経っていないのだから。






俺は、夜7時にベッドの上で目覚めた。

畜生、どんどん記憶の無い時間が多くなってくる。




俺のクラスではなぜかチェスがブームになっていた。

「チェックメイト〜。」

「チェックメイト」

「ちぇっくめいと」

今までチェスのルールを知らなかった誰もかもが俺に勝負を挑んで、勝っていく。

なぜだ?なぜみんなこんなに強いんだ?そしてなぜ俺はこんなに弱いんだ?



俺は時間を見つけては戸叶にあの事を謝ろうと思ったのだがその前に意識が無くなる。

戸叶とも仲直りできてない。チェスもろくに勝てない。

このままじゃ俺・・・どうなるんだ?







ごめんね、敦志。キングからの秘密を黙ってて。

でも話しちゃうと、敦志はきっと半径1m内でチェスをするの嫌がるじゃない。

だからLHRで“この事は敦志に話しちゃいけない”って事になったの。

傍からすると、いじめになるかもしれないけど、

この事に反対する人はいなかったわ。

だって、みんな美少女マリーに釘付けなんだもん。



あたしもね。





つづく



あとがキング


「“おもちばこ”はいるか!」

「ずっとここにいますよ、キング様」

「お前、なんで私を出さないんだ。

第1話では主役を張っていたのに。」

「いや・・・あなた主役じゃないし。」

「それに“あとがキング”なんて洒落にもならんタイトルをつけおって。」

「それしか浮かばなかったんだからしょうがないじゃないですか。」

「それにどうして我輩のようなメルヘンチックでイケメンがいるのに。

魔女とか魔法使いが出てもいいではないか。」

「いや・・・それだと“被る”じゃないですか。」

「くそう!!だから我輩が主役の所を軌道修正してこんな変な話を・・」

「だからあなたは最初から主役じゃないし、変な話ってなんですか!!」

「あと最後に質問なんだが、この話にはやけに人の名前が出てくるな。なんでだ?」

「後の話に出てくる人もいますが、

ちょい役でも名前が無かったら可哀想じゃないですか。」

「そうか・・・」

キングはただ唸っていた。






あとがき

どうもです、2回目です、おもちばこです。

新コーナーも含めて無事に書く事が出来ました

敦志君野球やってたんですね。ふふふ、

敦志君これから先どうなるんでしょう。ふふふ、


次回は「きらいなもの→バレンタインデー」です。

それではまた次回。ごきげんよう!!



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