話題

文字サイズ変更

なみえ焼そば:B-1グランプリ4位の味で年越し

「なみえ焼そば」を作る芹川輝男さん=福島県二本松市で、西本勝撮影
「なみえ焼そば」を作る芹川輝男さん=福島県二本松市で、西本勝撮影

 いつもの「年越し焼きそば」で古里を思って--。B級ご当地グルメとして有名な福島県浪江町の「なみえ焼そば」をこの年の瀬、福島第1原発事故で町から避難した住民たちに食べさせようと、二本松市の食堂「杉乃家」が奮闘している。店主の芹川輝男さん(62)も浪江町から避難した一人。「事故でばらばらになってしまった町のみんなを勇気づけたい」と腕によりをかける。

 豚バラ肉やモヤシ、太麺が中華鍋の中で音を立ててはぜる。1日180食を提供するという杉乃家の店内には、ソースの香ばしいにおいが漂っている。近くの仮設住宅に住む昔なじみの小峰敏滋さん(61)は「やはり浪江人だから、しばらくたつと味が恋しくなる」と、月に数回は食べに来るという。

 店主の芹川さんは、浪江町役場近くで36年間営んできた店を震災と原発事故で失った。家族で着の身着のまま福島県内の避難所を転々とするうち、二本松市の友人に店の再開を勧められた。「10年たって戻っても72歳よ。手持ち無沙汰なら、やってみたら?」。最後は妻春子さん(61)の言葉に背を押され、7月、JR二本松駅前に新しい店を構えた。愛着のある店名はそのままにした。

 「なみえ焼そば」は古くから地元で愛され、B級ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」で今年4位となり、全国に知られた。だが既に、原発事故で町は全域が警戒区域か計画的避難区域となり、焼きそばを出す20店の店主も散り散りになっていた。

 6月、芹川さんは警戒区域内にあるかつての店に一時帰宅した際、焼きそばを盛るのに使っていた地元の伝統工芸「大堀相馬焼」の皿を見つけて持ち帰った。「あれほどの揺れで無事だったのだから縁起がいい」。今はレジの横にお守りのようにして置き、一日も早い町への帰還を祈る。

 浪江町時代は「年越し焼きそば」目当ての客のために、毎年元日の未明まで店を開いていた。今年は約100食を用意して31日夕方まで店を開け、持ち帰りの注文にも応じるつもりだ。

 「今年は言葉で言えない1年だった。一緒に暮らしてきた娘や孫は埼玉へ去り、つらい。それでも、自分が店をやることで『私も頑張ろう』と町の仲間が思ってくれたらうれしい」。芹川さんはそう話した。【澤本麻里子】

毎日新聞 2011年12月30日 20時38分(最終更新 12月30日 23時19分)

PR情報

スポンサーサイト検索

話題 アーカイブ一覧

 
Follow Me!

おすすめ情報

注目ブランド

特集企画

東京モーターショー 注目のクルマ

クルマの最先端が集結

東海大学:山下副学長「柔道家として教育を語る」

学生時代の思い出から今の日本の課題まで

縦横に語ってもらった。

毎日jp共同企画