TPP参加という愚策の構図を明らかにする!
【書籍・書評】
菅首相が“開国”と称するTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加。大マスコミも「開国で成長加速か鎖国のまま凋落か」と騒ぎ立てている。
しかし、その対立構図自体が誤りであるとして緊急出版されたのが、農文協編「TPP反対の大義」(農山漁村文化協会 800円)である。学者や評論家など総勢26人の執筆陣が、世間を惑わす論調に反証している。
TPPとは、環太平洋全域にわたって関税を撤廃し、貿易自由化を目指そうという構想である。菅首相は参加表明の際に「明治維新と戦後に続く第3の開国」などと表現したが、これには現状認識の甘さがあると本書。例えば、日本農業研究所客員研究員の服部信司氏によると、日本の関税率は全品目平均で3.3%であり、実は世界で最も低いのだ。さらに、農産物関税も平均12%で、EUの20%よりも低くなっている。この状態を“鎖国に近い経済状態”とし、開国をあおるのはおかしな話である。
また、評論家の関曠野氏は“TPPに参加しなければ貿易立国の日本は国際的に取り残される”という風潮に異議を唱えている。世界銀行の統計では、日本経済の輸出依存度は16%。貿易がGDPに占める比率は世界170国中164番目で、日本は企業が国内市場だけで商売できる“ガラパゴス”が可能な国であることを、まず認識すべき、と説く。