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アメリカの対日輸出重視策の布石

【書籍・書評】

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2011年5月30日 掲載
●「TPP亡国論」中野剛志著(集英社 760円)
「TPPへの参加など、論外です」。そうきっぱり断言する著者。TPPに参加すれば関税が撤廃され、輸出される工業製品にとって有利なばかりか、日本オリジナルの高品質農産物にもいい。そんな議論が聞かれるが、日本の平均関税率は2.6%でアメリカより低く、農産品に限っても平均で12%は高いとはいえない。しかも穀物自給率は既にわずか。製造業も生産拠点を海外に移してしまっている。アジアの成長を取り込むなどというのも単なる美辞麗句。日米双方とも実質的な輸出先は相手しかないからだ。
 要するに関税撤廃の意味などないのだ。アメリカはリーマン・ショックの打撃を和らげるための戦略的転換として輸出重視に傾斜。TPPはその布石なのだから、参加は相手の意図すら見抜けない愚策なのである。しかし財界と大手マスコミは、反TPPは反米・反アジア主義だ、早く積極参加しなければ日本は国際ルールの外に置かれて「鎖国」になるなどと言っている。これらもバカげた妄言なのだ。本書の著者は経産省課長補佐から京都大学大学院に出向中の若手エコノミストだ。
~2011年5月30日以前の記事~

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