職務質問中に抵抗した中国人男性に発砲し死なせたとして、特別公務員暴行陵虐致死罪に問われた栃木県警巡査部長、平田学被告(35)の付審判の控訴審判決で、東京高裁は27日、無罪(求刑・懲役4年)とした1審・宇都宮地裁判決(2月)を支持し、検察官役の指定弁護士の控訴を棄却した。小倉正三裁判長は「発砲は生命身体を守るためのやむを得ない行為」と述べた。
指定弁護士は「男性から積極的攻撃はなく、威嚇射撃も検討していない」と主張。しかし、小倉裁判長は男性の行為について▽拳銃を奪おうとした▽平田被告を引き倒した▽繰り返し発砲を警告されても近くにあった石(灯籠どうろう)の一部を振り上げた--と認定。「発砲は正当防衛に該当し、警察官職務執行法が定める武器使用の要件を満たしている」と結論付けた。
判決によると、平田被告は巡査だった06年6月、栃木市西方町の路上で元研修生の羅成さん(当時38歳)を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕しようとした際、激しく抵抗されたため拳銃を発射、腹部に命中させて死亡させた。
判決について、県警の阿部暢夫首席監察官は「適切な判断がなされたと受け止めている」、指定弁護士は「上告するか否か慎重に検討したい」とコメントした。
事件を巡っては、遺族が県に損害賠償を求めて提訴。2審・東京高裁は4月、「警棒による制圧や威嚇射撃を試みておらず発砲は違法」として、県に約1000万円の支払いを命じ、県側が上告している。【和田武士】
毎日新聞 2011年12月27日 21時26分(最終更新 12月27日 21時50分)