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きょうの社説 2011年12月31日
◎出先機関改革 ハローワーク試行を一歩に
政府の地域主権戦略会議は、国の出先機関改革として、地方整備局、経済産業局、地方
環境事務所の3機関を地方移管の対象とし、ハローワーク(公共職業安定所)については、特区制度を活用して東日本、西日本で1カ所ずつ試行することを決めた。民主党政権は出先機関の原則廃止を閣議決定したが、今年は東日本大震災があり、議論 は大幅に遅れた。そればかりか、省庁や与党の一部で「大震災で出先機関が機能した」として、改革にブレーキをかける動きもみえる。戦略会議が具体的な移管対象に踏み込んだのは、暗礁に乗り上げていた改革を動かす一歩になる。 国の仕事の受け皿となる地方組織づくりはなお時間がかかり、ここは一気に進めるより 、できる分野、準備が整った地域から実行に移すのが現実的である。その点では、来年に試行するハローワークの移管は、改革の行方を占う試金石といえる。 ハローワークに関しては、「ハローワーク特区」(仮称)を東西でつくり、その取り組 みを検証したうえで全国へ拡大する青写真が描かれている。すでに石川、富山県など41都道府県が、各管内で1カ所程度のハローワークを先行移管させる案を提出済みである。 受給者が206万人と過去最多を更新した生活保護制度の改革でも、働ける世代の就職 支援が大きなテーマであり、雇用と福祉の一体化は当然の流れである。さらに、産業政策、教育との連携など、自治体が雇用行政を担う利点はいくつもある。 出先機関改革の本旨は、住民に身近な行政はできる限り、地方自治体に委ねることにあ る。これまで地方分権論議は、国と地方の権限争奪の印象も与えていたが、雇用、就職支援という暮らしに身近な分野で目に見える実績を示せば、分権に対する住民の理解も広がっていくだろう。 一方、地方整備局など3機関の移譲については、業務受け入れを希望する関西、九州を 想定し、広域行政組織の具体的な仕組みなどが検討される。それらの制度設計をにらみながら、来年は北陸としても広域体制の在り方を見定めていく大事な年となる。
◎今年も伊達直人 寄付定着の兆しうれしい
クリスマスに合わせて、今年も石川、富山県内の児童養護施設などに対し、匿名の人物
からのプレゼントが相次いだ。群馬県中央児童相談所にランドセルが贈られたことが話題になったのを機に、同様の善意が瞬く間に全国的に広がった、あの「伊達直人」現象から約1年。今年の出来事が、両県で「寄付文化」が根付き始めていることの表れなのだとしたら、うれしい。金沢市の児童養護施設「聖霊愛児園」に、「伊達直人」から届けられたのは、絵本やバ ドミントン用具などだった。高岡市の児童養護施設「高岡愛育園」には、「寒ぶりを愛する男」と名乗る男性から「ひみ寒ぶり」の差し入れがあり、鮮魚店で魚をさばいてもらうための費用として現金1万円も添えられていたという。子どもたちに喜んでもらおうと、それぞれが知恵を絞った様子がうかがえ、心が温まる。 願わくは、こうした行為がもっと日常的な習慣になってほしいものだ。「自分にできる こと」を考え、身の丈にあった善意を普段から積み重ねていく。これからもそんな人が少しずつでも着実に増えていくことを期待したい。 今年は、「寄付文化」を考える上でもう一つ大きな出来事があった。言うまでもなく、 東日本大震災である。日赤が受け付けた義援金は、27日現在で3050億1357万円に上っており、「できること」を実行に移した人がいかに多かったかを、何よりも雄弁に物語っている。募金と合わせて、精いっぱいの救援物資を被災地へ送ったというケースも珍しくないだろう。 未曽有の大災害で受けた悲しみや痛みは、金銭や物資だけで癒やされはしないだろうが 、国内外から寄せられたたくさんの善意に勇気づけられ、再び立ち上がろうと意欲をかきたたせている被災者も少なからずいるはずである。この体験を、「寄付文化」の成熟につなげていきたい。もちろん、まだまだ物心両面の支えを必要としている被災者もおり、新たな年を迎えても息長く応援を続けることも大切だ。
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