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きょうのコラム「時鐘」 2011年12月31日
師走の街から流行歌が聞こえなくなって久しい。かつて街を歩けば、どの歌手のどんな曲がヒットしているかが分かった
40年も前の「夜明けのスキャット」が突然、欧米(おうべい)で大ヒットして、時の人となった歌手、由紀さおりさんもあるインタビューで似たような感想をもらしていた。街角から自分の歌が聞こえてこないので、ヒットの実感がないのだという 音楽がヘッドホンで個々の耳に入って行く時代だ。だれが何を聞いているか分からない。それでも、ヒット曲はネットに乗って広がっていく。個々の耳にしか残らない音が同じ時代を生きた共通の思い出になるのだから、年配者には戸惑いがないでもない 2011年は「絆(きずな)」という言葉を残した。大きな試練が、見知らぬ者同士の心を結んだ。ネットがそれを演出した。人間関係を希薄(きはく)にする側面が心配されたが、ネットは世代も国境も超えて共通の思い出をつくりだし、新しい絆を生み出した 今夜は「夜明けのスキャット」を聞きながら一年を終わろうと思う。災害の年を振り返り、鎮魂(ちんこん)の除夜の鐘が、希望の音色に変わる新しい朝を迎えたい。 |