日露戦争の日本海海戦(1905年)で活躍した戦艦「三笠」が、NHKドラマ「坂の上の雲」をきっかけに再び脚光を浴びている。復元され、神奈川県横須賀市に展示されている記念艦の入場者は、39年ぶりに年間18万人を超える勢いだ。
横須賀港近くにある三笠公園。今年最後の“開艦日”の27日、三笠の艦橋(艦長らが指揮を執る場所)の前には、記念写真の順番を待つ家族連れやカップルの列が出来ていた。足形に合わせて立つと、連合艦隊の司令長官・東郷平八郎の気分を味わえる。
神奈川県鎌倉市の小学1年、相川剣里くん(7)は「意外と小さい船なんだね」と母の美絵さん(38)と顔を見合わせた。歴史マンガで興味を持ち、日露戦争をテーマにしたドラマ「坂の上の雲」に、両親と熱中した。「三笠を見たい」とねだり、連れてきてもらった。
ロシアのバルチック艦隊を破った連合艦隊の旗艦だった三笠。1925年に保存が決まり、太平洋戦争後は大砲が撤去されるなどしたが、61年、有志の寄付で復元された。
復元当初は全国から観光客が訪れ、見学者は年間30万人に上った。その後、減少傾向が続き、ここ10年は10万人前後で推移していた。
だが、2009年に「坂の上の雲」の放送が始まると、人気は復活。今年度は12月末までに約15万人が訪れ、年間18万人を超えるのは確実という。司馬遼太郎が原作小説を新聞に連載していた72年度の水準だ。
管理する「三笠保存会」事務局長の豊崎健二さん(66)によると、20〜30代の見学者が目立つようになり、「歴女」が男性に説明するカップルが増えたのも最近の傾向という。
豊崎さんは、「日露戦争の当時も、現在も大変な時代。『このままでは日本という国がなくなる』という危機感や、『がんばろう』という思いが共感を呼んでいるのではないか」と話している。
新年は元日から見学できる。(矢吹孝文)