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きょうの社説 2011年12月30日
◎ロンドン五輪へ スポーツの力で日本に夢を
ロンドン五輪が開催される来年は、東日本大震災の復興へ踏み出す日本にとっても、新
たな活力や希望を与えてくれる年になるだろう。北陸からも石川県関係3人、富山県関係1人が五輪出場を決め、メダル獲得を目指して いる。年明け後も有力選手の“五輪切符”をかけた挑戦が続く。地元選手の注目度は高く、日本のスポーツ界を担う選手たちに大きな声援を送りたい。 ことしを振り返れば、サッカーW杯を制した「なでしこジャパン」が被災後の日本を元 気づけたように、スポーツの持つ力があらためて示された。来年の五輪でも鍛錬を重ねた各競技の選手たちが存分に実力を発揮して、勝利と記録に挑んでほしい。 石川県勢が出場するトランポリン、カヌー、競歩をはじめ、前回の北京五輪に県勢が出 場したウエイトリフティング、飛び込みなどは、石川が「王国」や「聖地」などと称され、全国的なスポーツ拠点となっている。 地域で質の高い競技環境を整え、選手の育成をリードしてきた取り組みは大きな意義が あり、五輪選手を生み出す土壌が、競技力向上とスポーツ振興につながっている。ふるさとから五輪を目指し、世界へ羽ばたく選手が一人でも多く育ってもらいたい。 スポーツに取り組み、応援する人々の力は地域に活力をもたらす。地域密着を図るプロ スポーツでは、BCリーグの石川ミリオンスターズとJFLのツエーゲン金沢、JBL2の石川ブルースパークスが新たにクラブ間連携協定を結んだ。競技の垣根を越えた活動は、新たなファン層の開拓につながるだろう。ロンドン五輪も地元選手らの奮闘によって、多くの人がさまざまな競技に関心を持ち、地域スポーツの裾野が広がる格好の機会といえる。 2020年夏季五輪の東京招致については、政府が閣議了解するなどして、国による支 援態勢が整ってきた。12年の第1次選考を経て、13年のIOC総会で開催都市が決まることになっている。ロンドン五輪の日本勢の活躍を追い風にして招致活動を盛り上げていきたい。
◎武器共同開発 高度な政治判断が必要に
政府は武器輸出三原則を緩和し、戦闘機など武器の国際共同開発に参加できる道を開い
た。武器と関連技術の輸出を原則禁じる武器輸出三原則は、憲法の平和主義の理念を体現する「国是」とされてきたが、今回の政府決定は安全保障戦略、さらに産業政策として許容されよう。武器の国際共同開発に参加するメリットは多いが、その一方で、国際的に優位にある日 本の高度技術が流出する可能性もあり、技術移転の在り方などについて、高度な政治判断を求められることになる。政府はそのことをあらためて銘記してもらいたい。 軍事の先端装備品は巨額の費用が必要なため、同盟国や友好国が共同で開発・生産する 流れが強まっている。政府が航空自衛隊の次期主力戦闘機に選定した最新鋭ステルス戦闘機F35は、米英豪など9カ国の共同開発である。 国内の防衛産業は、武器輸出三原則によって保護されてきた側面もあるが、防衛予算と 武器需要は限られ、縮小傾向にある上、先端分野の共同開発の流れからも取り残されることで、防衛産業の基盤を維持する困難さが増している。三原則に縛られることで国の安全保障が危うくなるという事態は避けなければならない。 国際共同開発の主な利点として▽同盟国・友好国との関係強化と装備品の相互運用を図 れる▽高額な開発費の分担でコストを削減し自国の技術力も高められる、などが挙げられる。 武器輸出に関する新基準は、平和国家の理念を守り、国際紛争を助長しないよう共産圏 や紛争当事国、国連武器禁輸国への輸出禁止の原則を維持する一方、日本の安全保障に資する協力国との武器共同開発を認める。目的外使用や第三国への移転を防ぐため、厳格な管理と日本側の事前同意を義務付けるとしている。この点の政治判断がまず重要になってくる。 また、共同開発となれば、参加国それぞれが自国の技術の優位性を考えて調整が困難に なる恐れも強く、ここでも政治の的確な判断力と交渉力が求められることを覚悟しなければならない。
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