野田佳彦首相は29日の民主党税調などの合同総会で、国会議員の定数削減について、野党の合意が得られなくても来年の通常国会に法案を提出する意向を表明した。国家公務員給与削減や独立行政法人改革などの行政改革についても「やり抜きたい」と強調。「身を切る覚悟」を示すことで民主党内の消費増税反対派の理解を得る狙いとともに、自民、公明両党をけん制する思惑もあるとみられる。
「政権をいただいてから4カ月近く、丁寧な国会運営を心がけてきた。来年は正念場の年。『君子豹変(ひょうへん)す』という立場で行革にも臨んでいく決意だ」
首相は総会でこうあいさつし、秋の臨時国会でとった与野党協調路線との決別を宣言した。税と社会保障の一体改革へ向けた政府・与党の素案を野党に提示しても、自公側が協議に応じる見通しは立っていない。首相は与野党の合意がなくても来年3月に消費増税法案を提出する方針。議員定数や公務員給与の削減と併せて野党に賛成を迫り、否決されれば、消費増税と行革を争点に衆院解散・総選挙に踏み切る可能性をちらつかせた形だ。
ただ、民主党内では小沢一郎元代表が消費増税反対を表明し、小沢グループを中心に離党組が新党を結成する動きが表面化。首相は「極めて残念」としながらも「避けては通れないこのテーマを我々が背負い込んで結論を出そう」と呼びかけた。しかし、さらに離党者が続く可能性があり、政権の足元が揺らぐ中で消費増税法案の提出にこぎつけられるかは不透明だ。【笈田直樹】
野田佳彦首相が29日の民主党税調などの総会であいさつした要旨は次の通り。
<政治改革>
本来ならば(衆院の)1票の格差を是正し、定数を削減する成案を先の臨時国会の間に野党も巻き込んで得ていなければいけなかった。次の通常国会では(野党より)先に法案を提出し、成立を期すように樽床伸二幹事長代行には指示したい。民主党は政治家の集団ではない。政治改革家の集団であることを力強く国民に示そう。
<行政改革>
公務員給与削減法案も残念ながら先の国会では実現できなかった。政党間の協議で固まるよう全力を尽くすが、政治改革と同じように我々がボールを投げなければいけない。独立行政法人改革、公益法人改革、特別会計改革もやり抜きたい。
政権をいただいてから4カ月近く、丁寧な国会運営を心がけてきた。来年は正念場の年。我々が掲げて来た政策を思い切って悔いのないように打ち出し、全力を尽くして成立を期す。「君子豹変(ひょうへん)す」という立場で行革にも臨んでいく決意だ。
<経済・金融>
日本再生戦略の基本方針に基づき、あらゆる分野に方策を打ち出していく。デフレ脱却のためには定期的に日銀総裁と議論したい。
<消費増税>
一番苦しく、一番逃げてはいけないテーマは社会保障と税の一体改革だ。「苦しいから次の政権に任せよう。消費税は上げなければいけないが、いつかやればいい」という議論が続いてきたが、もうその猶予はない。欧州危機のことをことさら誇大に言うつもりはないが、(日本売りという)想定外ではない大きな危機が来るかもしれない。危機管理の意味からもやり抜かなければいけない。
政治家としての集大成の気持ちで訴えている。残念ながら同志の中から離党者も出たが、この国の将来のためにこのテーマを我々が背負い込んで結論を出そう。少なくとも税率と上げる時期を決めることをもって初めて素案になり得る。素案を作って野党と協議する。今度は野党が苦しい番かもしれない。その上で大綱を作り、年度内に法案を提出する。このプロセスを揺るぎなくたどっていかなければならない。
毎日新聞 2011年12月29日 21時35分(最終更新 12月29日 23時50分)