羊膜に包まれたまま産まれた「ラッキー・ベビー」、出血しないお産、赤ちゃんが自立して呼吸を始めるまで臍帯を切らずに待つ……1999年の開業以来約500件の自宅出産を介助し、妊産婦や家族の人生に変革をもたらしてきた助産院「バースハーモニー」(たまプラーザ)。“芸術的なお産”の裏に隠された秘密とは?  バースハーモニー院長で助産師の齊藤純子さんが語ります!

(取材・文/キタハラマドカ、写真・前田正秀)

 

★このインタビューの様子は、YouTubeの「バースハーモニー」チャンネルでも配信しています! リンクはこちら

http://www.youtube.com/user/birtharmony#p/a

Vol.12 "芸術的なお産"を通じた生き方伝道師......助産師の齊藤純子さんです!

2011.02.14

 

命が命をつむいでいく。

 

2009年は約80人、2010年は約50人のお産に立ち会った齊藤先生。「お産って波があってね。1日に何人も産まれる日もあれば、1カ月お産がない時もある。自宅出産の場合は不思議と土日に重なることが多いのね。赤ちゃんがお父さんのお休みの日に合わせて出てくるみたい」

 

ーーバースハーモニーでは特に、食事指導に力をいれています。

 

齊藤: いきなり意識や生き方を変えるのは難しいけれど、まずは食べるものから変えていくのが一番。命ある食べ物をいただけば体が変わり、それが心にも変化をもたらします。

バースハーモニーではマクロビオティックを基本にした食事で体を整えることを勧めています。マクロビオティックとは、玄米を始めとする穀物と野菜を中心に、未精製の食材のエネルギーを丸ごといただき、食材の持つ陰陽の性質を生かした調理法や組み合わせで心身を中庸に整えていく食事法のことです。

それを徹底しようとするあまり、つい「この食材を食べてはいけない」とストイックに食材を選びがちなのですが、本当は、じっくりと噛んで味わって美味しいと思った食材が、その時体が求めているものなのです。陰陽を対照して頭でガチガチに考えるのではなくて、まずは知識やこだわりを捨てて、自分が「美味しい」と感じる感性を信じることが大切です。

 

ーー これまでの11年間で感じてきた、お産の醍醐味とは?

 

齊藤: お産は間違いなく「女性の人生のターニングポイント」です。「また産みたい!」と思えるようなお産ができれば、どんどん子どもを産みたくなる。子どもが増えれば、これからの未来も明るくなります。子どもを産み育てる20〜40代の女性って、とてもパワーがある。社会を変えていく力があるんです。

赤ちゃんが産まれる、つまり命の誕生とはとても素晴らしい体験です。一方でお産が苦しい体験になってしまう人もいます。でも、「命を生み出す」というかけがえのない体験を100%受け入れて、みんな、前を進んでほしいと思います。何事にも遅すぎると言うことはないし、いいお産、悪いお産もありません。それぞれのライフステージで命をつなぐことを考えた時に、始まりも終わりもなく、「完璧な人生」が切り拓かれます。

 

ーー「完璧な人生」とは、どのような意味ですか?

 

齊藤: 自分を解き放つことができれば、他者にものごとをゆだねることができるようになり、自由になります。人それぞれ自分の得意不得意、個性を認め、他者とつながり助け合い補い合うことで、完全でない自分の存在に無限の可能性が広がっていきます。そこには自然とあふれ出る「愛」が根底にあります。

お産も「自力」でがんばるのではなくて、「自立」して他者にゆだねこだわりを手放すことで、「自由」になれます。すると視界がパッと広がり、「幸せなお産」になります。結果的に自宅出産ができた、できないでなく、それすら受け入れてその後の人生につなげていけるような……。助産師は、「自立」のお手伝いをちょっとだけする、そんな存在だと思っています。

 

時に何十時間も不眠不休で命の誕生と向き合わなければならない助産師の仕事はとてもハード。純子先生に健康の秘訣を聞くと、「食べ過ぎないこと」と即答。今は1日1〜2食で、1回の食事をじっくり味わいながらいただいているそう。「食べたい時は必要な時。同じくらい排泄も大切なんです。体の声、心の声に従って食べている感じかな」

 

 

取材を終えて……(一言)

キタハラの第二の人生が始まったのは、まぎれもなく出産を経てから、です。プロフィールなどに「自宅出産」を入れるのはそのため。感性が豊かになり直感でものを判断できるようになり、求めている縁が向こうからやってくるかのような、奇跡の体験が今なお続いています。自宅出産で産まれたのは、今2歳になるムスメだけでなく、もりたろうもそうである、と言えます。その経験を導いてくれたのが純子先生で、「お産を通じた人生の師」と仰いでいます(笑)。

妊娠中は厳しい食事指導を「乗り越える」ことに力んでしまっていた時期もありましたが、ブリージングセラピーで「こだわりを手放す」ことを覚えた時に、自分自身がものすごく自由になれた。

どんなお産が幸せなのかは人それぞれ。でも、お産によって人生が変わり、我が子がいとおしくてたまらないと思う親が増えると、もっと子どもを産みたくなると思うんです。愛をいっぱい受けた子どもがたくさん産まれれば、社会はよくなる! 地球の未来も明るくなる!! だから私はこれからも、自分の「幸せなお産」の経験をどんどん発信していきたいと思っています。

 

 

 

齊藤純子(さいとう・じゅんこ)

たまプラーザで自宅出産を専門に介助する助産院「バースハーモニー」院長。日本医科大学付属第一・第二病院勤務を経て、横浜市青葉区役所、その他クリニック、助産院勤務、専業主婦を経て1999年「バースハーモニー」開業。自宅出産の介助実績は約500件。妊婦健診では頭蓋仙骨療法や光線治療、リフレクソロジーを取り入れ妊婦とじっくり関わりを持つほか、食事、生活、運動等一人ひとりに合わせた保健指導を行う。月1回リマクッキングスクール校長の松本光司先生によるマクロビオティック食養料理教室を開催するほか、BLBヒーリング前田正秀氏による呼吸教室、きづきかん井上聖然先生による個人整体、ヨコハマヒーリングデンタルの小泉克巳歯科医師による歯の噛み合わせ治療等、総合的に自然治癒力を高める各種教室を開催。

バースハーモニーのホームページでは、夫の齊藤雅一氏による「自然出産」の美しさを感じる写真が多数掲載されている。

http://www.birth-harmony.com/

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