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[31001] ノアニール事件の真相(ドラクエ3)
Name: シウス◆60293ed9 ID:11df283b
Date: 2011/12/28 23:22
 どもっ、シウスです。
 ―――という書き出しを何回したのか忘れましたが、これってタイガー&バニーの予告で、虎徹が最初に口にするセリフに似てますよね。特に考えてませんでしたけど。
 
 さて、年末も近くなった今日この頃、何となくキーボードを打っているうちに、また変な小説が出来上がってしまったので、とりあえず投稿しようかと思います。
 
 
 
 
 
 この小説には、タイトルのごとくドラクエ3に登場した、『村人全員が何年も眠っていた』というあのノアニール村が登場します。
 ただし部分的にゲーム本編の設定―――ノアニール村の青年と、エルフ女王の娘との駆け落ちに関する設定を忘れたまま作ってしまったため、例えばその青年が宿屋の息子だった―――などといった設定が消えてしまっています。
 それでも良いのであればどうぞ。
 
 ―――ぶっちゃけ、かなりブッ飛んだエンディングを迎えますが。



[31001]  プロローグ
Name: シウス◆60293ed9 ID:11df283b
Date: 2011/12/28 15:06
 後に勇者が手に入れる世界地図には、全ての町や村は描かれていない。その地図が作られた時代では、まだそれほど多くの町や村が存在しなかったからだ。世界一大きな土地と軍事力を持つロマリア王国も、王都を含め100近い町や村を持っているが、その世界地図に描かれているのは最南端の『王都ロマリア』、最北端の『ノアニール村』、前者二つの中間点であるカザーブ町の3つだけだ。それ以上、ロマリア領土の南北には、町も村も無い。
 そしてカザーブ町とノアニール村の間には『町』と呼べる居住区は無いため、ロマリアの人々には、『カザーブより北は辺境』という偏見が根付いてしまっていた。
 そんなカザーブ町にある、とある貴族の館に急報が入った。
「伯爵! 伯爵ーっ!!」
「何だ? 騒々しい……」
 青年の兵士が叫びに、細身の初老の男が顔を顰める。
 普段なら一番に伯爵の機嫌を伺うはずの青年は、そんな伯爵の様子に構うことなく、
「ノアニール村の住人達が目を覚ましましたっ!!」
 青年の態度を咎める気が、一瞬にして霧散した。
「……っ!! それは真かっ!?」
 十数年前に、その村の青年がエルフ族の姫と駆け落ちし、しかもその姫は一族の秘宝までをも持ち逃げしたという事件があって以来、エルフの女王は激怒し、ノアニール村の住人全員を永遠の眠りに就く呪いをかけたという。確認のために兵士が赴き、エルフ達に確認したのだ。
 もしも呪いがかけられたのが王都ロマリアやカザーブ町ならば、ロマリアとエルフ族の間で戦争が起こってもおかしくはない事件であるが、いかんせん『よそ者嫌い』の風習の強い、ロマリア最北端の村なだけあって、その村に身内が眠っている―――という生別的なこともなく、この問題は長らく放置されていた。―――ノアニール村から徴税できないことを領主が嘆いたが。
 伯爵は問う。
「それで村の者達は何と!? 長い眠りに就く前に一体何があったのか、詳しく訊いたか!?」
 すると青年兵士は困ったような顔をして、
「それが―――全員、何も知らないんだそうです。『目が覚めたから朝が来たと思った』だそうです。確認しに行った兵士が、『何があって十数年も眠ってた?』と訊いたところ、長く眠ってたことすら気づいていなかった村人から馬鹿にされたそうです」
 伯爵の顔が、痴呆症のように呆けた顔になった。
 青年は続ける。
「それと村から七人の青年が消えているそうなんですが、彼らは『旅に出る』という書置きを残していたみたいでして、しかも全員が家族や親戚が居ない境遇だから、誰も行き先に心当たりが無いみたいでして……」
 ひとつの謎が解けると、また別の謎が浮上した。
 誰とはなしに、伯爵は呟いた。
「一体……何がどうなっているんだ……? 七人の内、一人はエルフの姫と駆け落ちしたとして、後の六人はどこへ……」
 結局、後日に兵士達がエルフの女王に確認に向かい、『なぜノアニール村の呪いを解いたのか?』の理由が判明した後になっても、その疑問が解決することはなかった。
 
 
 
 
 
 
―――――――――――
 十数年前。
 二人の出逢いは、やや運命じみたものがあった。
 
 
 
 
 
 辺境の村・ノアニールに住む10歳前後くらいの少年少女が集まり、ある時に変わった事を思いついた。
「なあ、俺たちも大人の真似して、『狩り』に行ってみないか?」
 この時代の田舎者なら、ウサギや鳥、食用カエルなどは子供でも捕まえる事はできるし、それを捌いて調理できる子供も少なくはない。
 だが『狩り』となると、もっと大型の動物を相手にすることとなる。
 ある動物は食用のため、またある動物は爪や牙、分泌物を売るため、村の16歳以上の者たちは狩りに出かけることが多い。
 そんな大人たちに憧れた子供が行動を起こすということは、決して珍しいことではない。―――無論、後で親達から大目玉をくらうことになるが。
 彼らは握りやすいヒノキ棒だけを装備し、ぞろぞろと村から出て、近場にある森へと入った。
 
 
 
 
 
 そんな少年少女の中に、やや仲間外れにされがちな少年がいた。
 彼の名はソロン。ブラウンの髪と瞳が特徴の、ロマリア国の城下町から引っ越してきたよそ者である。
 仲間外れとは言っても、ここには20人近い少年少女が集まっており、全員が互いに仲良しというわけではない。あくまで村の中で同年代の子供たち全員が集まってこの人数であり、幼い頃から無意識にこの集団で鬼ごっこなどに興じることが多かっただけだ。
 だからこそソロン一人だけを除け者にせず、彼らと一緒に村の外へと出たのだ。
 村から出て、森へと入る。
 森には様々な動物が棲んでおり、村の大人たちもここで狩りをしている。
 遭難という可能性を欠片も感じていない子供たちは、どんどん森の奥へと、それこそ大人たちでさえ踏み込まないような奥地へと入っていった。
 その奥地で、誰かが言った。
「さっきから思ってたんだけど、ここって色んな果物とかあっただろ? みんなで手分けして食いまくろうぜ」
 というわけで、誰もが思い思いに別行動へと移り、ソロンは誰かとつるむこともなく、一人で森の奥へと足を運んだ。
 どれくらい歩いただろうか?
 突然、女の子の悲鳴が聞こえ、ソロンは駆け出した。
 そして森の中の開けた場所に出ると、そこには自分と同年代の、自分と同じブラウンの髪と瞳の少女(不思議なことに、耳が尖ってて長い)が地面に座り込んでいた。
 そしてその少女に襲い掛かろうとしている―――正体不明の影。
「…………え? なんで影だけが空中で動いてるの?」
 第一声は、そんな常識外れの存在に対する疑問だった。
 影の上半身は、頭部に角があることと、爪の生えた腕があるということだけが分かった。下半身はヘビの尾のように細くなっている。―――後になってから分かったことだが、目の前の影は魔王バラモスが放ったとされる魔物だった。
 少女が恐怖に怯える目で少年を振り向き、小さな声で呟いた。
 
「……た、助けて……」
 
 この一言で、雷に打たれたような衝撃を感じた。
 生まれてからずっと、両親以外の人間から頼られたことがないソロンの頭の中で、何かが弾けた。
 気が付いたら雄叫びを上げて、自分の身長ほどのヒノキ棒で刺突を放っていた。
 棒は、まるで空気を切るように、一切の手応えが無いまま影の中を通り抜けた。
 ソロンの頭の片隅で、『もしかしたら効かないのか?』という疑問が生まれると同時、影が身もだえした。すぐさま少女が叫ぶ。
「大丈夫! ちゃんと効いてるから! その影は魔法だけじゃなく、普通に叩いてもやっつけられるらしいの! 強ければ強いほど、叩く数が多ければ多いほど、ダメージがあるってお母様が言ってた!!」
 すぐさま距離を取って影と対峙し、右手の指だけでヒノキ棒を8の字に振り回し、回転させたまま背中で左手に持ち替え、再び指だけで8の字を描く。次に両手で握って頭上で回転させ、そしてようやく構え、影に向かって言い放つ。
「……来いよ。ヒノキ棒の正しい使い方ってのを教えてやる」
 影が反応するまでに、ソロンは突進し、ヒノキ棒の両端を交互に叩きつけ、あるいは突く。―――世間よく『ヒノキ棒で剣の練習』と言ったりするが、これは棍術の打法と槍術の突きを組み合わせた戦法である。
 戦い方―――いくつもの武器の扱い方や格闘術を、かつてロマリア城の近衛兵を務めていた両親(父だけでなく母も)から学んでいたため、子供ながらもそれなりには戦えるのだ。
 影は身悶えしながらも、ソロンに腕を叩きつけてきた。
 どうせすり抜ける―――と油断した瞬間には、彼の体がとっさに受け止めたヒノキ棒ごと殴り飛ばされ、木の幹に叩きつけられる。
 少女が再び悲鳴を上げるが、彼は立った。普通の子供ならこの辺りで心が折れるところだが、ソロンは違った。むしろ僅かではあるが、可能性を見出した。折れたのは、半分の長さになってしまったヒノキ棒だけである。
「痛ってて……でも死んだ父ちゃんのゲンコツほどじゃないな……」
 ニヤリと笑みを浮かべる。初めて見る“魔物”ではあるが、驚かせるのは体の構造と存在そのものだけで、思ったほど恐ろしい敵ではない。
 それを眺めていた少女は、そんな少年の力強い笑みに触発され、抜けていた腰に力を入れて立ち上がった。
 そして両手の平を前方へ突き出し、意識を集中する。その間、影は少女に背を向けたまま、ソロンに向かって拳を放ちつづけていた。それらを巧に避けながら、ソロンは二本になったヒノキ棒を二刀流で、打撃を放ちつづけている。恐らく影は、少女のしていることに気付いていないだろう。
 やがて少女の手に直径20センチくらいの火球が生まれると同時、少女とソロンの視線が絡み合った。互いにさっきと同じニヤリとした笑みを浮かべる。
「はあぁっ……!!」
 少女が可愛らしい気合の声と共に、火球を放った。
 影が振り返ると同時、火球は影の胸に当たり、そしてすり抜ける。それがソロンに当たると思ったのか、少女が顔を青ざめさせるが、ソロンは二本の棒をクロスさせ、火球を受け止めた。
 火球は受け止めた空中(影の胸の内部で)でしばらく棒とせめぎ合い、やがて木の棒の上の部分に燃え移った。棒が松明へと化す。
 今一度、ソロンは松明を二刀流で嵐のように叩きつけた。
 最初は腕を振り回して抵抗していた影も、だんだんと弱った動きになり、最後には風船の空気が抜けたかのように萎んで消滅した。
 
 
 
 
 
「本当にありがとうございました。お陰で助かりました」
 少女が礼儀正しく、深々と頭を下げた。
 今まで両親以外から礼を言われた事の無いソロンは、戸惑い半分ながらも、胸の中に暖かいものを感じ、照れ笑いを浮かべる。
「えっと……君の耳、なんで長いの?」
 とりあえず最初に感じた疑問を投げかけてみる。
 すると少女はあっさりと答えた。
「ああ。私、エルフなんです。見るのは初めてですか? 私も人間を見るのは初めてですけど、噂に聞いてたほど野蛮には見えませんね」
 やや失礼な物言いではあるが、ソロン自身が失礼な物言いに慣れていたため、特に気にならなかった。
 ただ気になっていたことがあったので、とりあえず訊いてみる。
「エルフって……母ちゃんが言ってたけど、人間の2倍は長生きするって本当なの?」
 すると少女は驚いた顔になり、
「え? じゃあ人間は長生きしても60歳までしか生きられないんですか?」
「いや、長生きすれば、何とか100歳までは生きられるけど?」
「こっちは120歳までです。……長生きできればの話ですが」
 どうやら長生きの噂は、いつの間にか雪だるま式に大きく膨れ上がっていたみたいである。
 ソロンは軽く笑って言った。
「俺、ソロンっていうんだ。君は?」
「アンジェリナです。皆からは『アン』って呼ばれてますので、気軽にアンって呼んでください」
「じゃあアン、さっきの影は何なの? ひょっとして、あれが世間一般に言う『お化け』なの?」
 するとアンジェリナは俯き、静かに言った。
「あれは……魔物です。悪魔の王―――魔王が世界中に放ったとされる魔物。……あれでも最弱だってお母様は言ってましたけど、中には単身で城を落とせるような怪物も何体かは放たれているみたいなんです」
「……マジで?」
 さっきまでの影が『最弱』というのは、まだ受け入れられる。何しろ子供である自分ですら勝てたのだ。そういうところのソロンの理解力は、子供ながら優れていた。
 彼を驚かせたのは、この世に魔王―――いや、悪魔という存在と、城を落とすほどの怪物が実在するという点だ。
 一応は世界中に広がっている宗教では、神だけでなく、幽霊や精霊、天使や悪魔などが存在すると教えられてきた。
 だがそれらの存在は神と同じく、人間の目には見えないものであり、彼らが起こす奇跡や災厄にしても、物理的な怪奇現象ではなく、自然な流れで戦争が起こったり、あるいは戦争が終わったり、はたまた病気に罹ったり治ったりというものだと思っていた。よもやさっきの影のような、自然界の動物とはあからさまに異なる怪物として現れるなど、思ってもみなかったのだ。
 アンジェリナは続ける。
「ただお母様が言うには、あと十数年すれば、魔王を倒す勇者がこの世界に現れるみたいなんです。それも人間の。だからそれまで出来るだけ村の外へは出ないようにしようって……」
「………で、外に出たらアレに襲われたと?」
「し……仕方ないじゃないですか! 私だって、お外で遊びたかったんだもん!」
 突然の逆ギレをさらりと流し、ソロンは言った。
「それともう一つ気になってたんだけどさ、さっきの火の球を飛ばすの、あれって魔法なの?」
 アンジェリナは小首を傾げる。
「魔法って……人間だって使えるんでしょ? 何を今さら……」
「いや、人間だって誰もが扱えるわけじゃない。限られた才能と、それなりの教育を受けた人間じゃないの使えないんだ。その……もし良かったら俺にも魔法を教えてくれないかな? 正直、憧れてるんだ……」
 真剣な表情で、初めて人に頼み事をするソロンに、アンジェリナはパチクリと瞬きし、続いて悪戯な笑みを浮かべた。
「別に良いけど、ひとつだけ条件があります」
「条件? 一体何を……」
「さっきのソロン、凄く格好良かったです。ただ棒切れを振り回すにしても、何かこう……普通に振り回すのとは少し違うような感じでした」
「ああ、それは親から剣術と格闘術を習ってたからね。だから俺は、同年代の人間と比べると、少しだけケンカに自信があるんだ」
 こんなふうに自分のことを得意げに話したのは初めてだった。
 アンジェリナが言う。
「なるほど……あれが剣術とか格闘術というものなんですね。お母様が野蛮だから習わなくて良いと言ってましたけど、私は好きです。だから私にもそれを教えてください。そうすれば私も魔法を教えて差し上げます」
「え? そんなのでいいの?」
「そんなのとは何ですか。とても素晴らしいじゃないですか。ただ自衛のために魔法だけの練習をひたすらこなすより、私は身体を動かすほうが好きなんです」
「あ、そう……じゃあ、これからは僕が君の師匠であって、同時に弟子になるんだね」
「まぁ! 面白い表現ですこと」
 
 
 
 
 
 そして数年の時が流れた。


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