東日本大震災で発生した宮城・岩手両県のがれきの広域処理問題で、受け入れを決定済みか検討中の市町村や一部事務組合が2日現在で54にとどまり、4月時点と比べて10分の1に激減したことが、環境省の調査でわかった。2013年度末までにがれき処理を終える国の目標達成は厳しい情勢になった。
岩手・宮城両県の災害がれきは推計で計2千万トンを超える。宮城県石巻市では通常の年の100年分以上を抱え込むなど、自ら処分できる量を大幅に超える。
広域処理について4月には、全国42都道府県の572市町村・一部事務組合が協力を表明。東京都は今月から岩手県宮古市のがれき受け入れを始めた。環境省は「がれき処理の目標達成は可能」としていた。
だがその後、首都圏のごみ焼却灰から高濃度放射性セシウムが検出され、受け入れについて消極姿勢に転じる自治体が相次いだ。
環境省は、被災3県と沖縄県を除く43都道府県に改めて受け入れ意向を確認した。同省は「自治体にクレームが殺到してしまう」として個別の都道府県名を公表していないが、2日現在で37都府県から回答があった。その結果、受け入れ決定済み、あるいは検討中と答えたのは、11都府県の54市町村・一部事務組合だけだった。
朝日新聞の取材では、主要都市でも、受け入れ意向を撤回する自治体が相次いでいる。
4月には29の自治体などが協力姿勢を示した愛知県。今回の調査では前向きな回答はなかった。大村秀章知事は先月の会見で、放射性セシウムの濃度基準に言及し、「(1キロあたり)8千ベクレルまでは問題ない、と言われても、県民が『はい』と言うのは難しい」と述べ、きめ細かい安全基準の設定や情報を示すよう求めた。
阪神大震災を体験した神戸市も対応を変えた。「今は検討できる状況にない。被災地のがれきというだけで不安がる人もいる中、明確な安全基準がない」。京都市では、災害がれき受け入れについて約900件の声が寄せられ、大半が反対だった。担当者は「安全確保のマニュアルもない。自治体任せにされても困る」と話す。
岩手県釜石市のがれき処理の支援のため職員を派遣している北九州市も「市民に安全と説明できる基準がない」と指摘する。
環境省は広域処理計画を進める方針を変えていない。住民説明会に同省の担当者を派遣するなどして、自治体の理解を求めたい考えだ。同省は「安全基準について誤解もあるので、丁寧に説明したい」と話す。(岩井建樹)