ライヴレポート
2011.12.01
サンボマスター @ SHIBUYA-AX
サンボマスターのライヴは観るたびにいつも「宇宙一」のライヴだと思うけど、今日のライヴはその記憶を塗り替えるような圧倒的な凄さを放っていた。本日は『究極ベストツアー後半戦』のファイナル、SHIBUYA-AX。「SHIBUYA-AXがえらいことになってますよ。だから、俺はもうちょっとでっかいところでやればいいって言ったんだよ」と山口が始まる前につぶやいていたとおり、会場は前後左右すし詰め状態のパンパンに埋まった熱きオーディエンスで埋め尽くされ、鼻息荒く3人が鳴らすロックンロールを待っていた。チケットはもちろんソールドアウトしており、各地でチケットが全くとれない状態が続出していたようだ。
「みなさん、ツアーファイナル、ロックンロールの時間ですよ。準備いいかーーー!」と捲し立てる山口の絶叫とともに"青春狂騒曲″でライヴはスタート。ステージ上にアットランダムに並んだ数々のスポットライトが瞬く星のように光輝いて、オーディエンスの満面の笑顔を照らし出す。「おめーら、そんなもんじゃねーだろー!」という山口の強烈な煽りを受けて、フロアに歓喜の怒号が響き渡ると、"美しき人間の日々""世界をかえさせておくれよ"と3人は全力投球で魂の叫びをぶつけていった。
今年一番の寒さを真夏のような熱気で包み込んだかと思えば、ロマンス溢れる温かい空間で冬を彩る。山口が「俺だけにしか聞こえないこのロマンティックな4つ打ちが聞こえてんのか、みんなーーー!」と叫ぶと、近藤がサンプラーで鳴らした4つ打ちのビートに合わせてミラーボールが煌めき出し、"スローなディスコにしてくれ"でフロアはディスコ状態に!
サンボ流ロマンティック・ロックンロールはクリスマスを控えたこの時期に甘く切なく、そして暑苦しく響き渡るのだった。そして、「あんたがたの心の闇をぶっ潰してやるから、光を見んだよ!」と光速のスピードで突っ走っていった"光のロック"ではAX中の心の闇を閃光で照らし出していった。プレイ後に山口が「自分の声が聞こえなかったよ」と言うほど、フロアからの歌声は凄まじいものだった。ステージとフロアが互いに全力でぶつかりあっているからこそ、サンボのライヴは一瞬一瞬がこんなにも感動的なのだ。
「でっかい音出して申し訳ないですけど、次はアコースティックライヴやってもいいですか?」と山口が言うと、木内はカホーン、近藤はアコギを抱え、山口は「俺はロックンロールが好きなのでエレキです(笑)」とアコースティック編成で"ベイビー優しい夜が来て"を熱演する。続けて、"I Love You"で山口はギターを下し、スタンドマイクで伸びやかで美しい歌声を切々と響かせた。時折掠れる歌声や絶妙な間に宿った息を呑むような生々しさは圧巻だった。そんな迫真のプレイの余韻をかき消すように始まったのはDJ近藤洋一の時間!
サンプラーでリズムトラックを鳴らしながら、軽快にステップを踏んでノリノリの近藤。「何に気づいてほしいの?教えてくれ、君の口から」という山口の振りに答えた「君のキレイに気づいておくれーー!」という近藤の叫びから、"君のキレイに気づいておくれ"でリズミカルに煽動していった。
そして、今日のライヴでのハイライトと言ってもよいのがここからの時間だった。山口は「俺にできることは全国を回って福島の歌をうたうことだけだ。今日も歌っていいかい?」「何の知識もない、何の権力もない。だけど、俺はふるさとが好きだって歌いたいんだ。」「Love 東北! Love JAPAN! Love 福島! Love 君たち!」と語り叫び、"I love you & I need you ふくしま"を声にならない魂の叫びとともに全身全霊で歌い届けた。オーディエンスからの大合唱、想いの詰まった拳、「ふくしま」コール、すべての力が一つになっていく様に途轍もない力を感じた。その次に演奏されたのは、山口が「ふくしまの歌の後には歌えなかった、歌ったら亡くなった人のことを認めることになるから」と痛切に語っていた"ラブソング"だった。「亡くなってしまった人たちにまだありがとうって言ってないから、歌わなきゃいけない」と山口は言った。なんとも言えない胸の痛みがこみ上げてきて、ただただ山口の歌声と向き合うだけで精一杯だった。
しかし、その心の痛みはサンボマスターの3人がすべて食い尽くしてくれた。「悲しい歌をうたってる場合じゃないんだよ。悲しい歌の後は楽しい歌をうたって、笑うんだよ!」と再び笑顔を取り戻した"歌声よおこれ"、AXに集結した全員で希望の鐘を鳴らした"あの鐘を鳴らすのはあなた"と、何があっても負けない不屈のロックンロール精神をサンボマスターは貫き通した。そして、いよいよクライマックス。「さて、みなさんお待たせしました!今年一番の宇宙一、よろしくご唱和ください!」という山口の絶叫とともに"世界はそれを愛と呼ぶんだぜ"へ突入!もうどこまでも行けそうな気分になって歌い叫び飛び跳ねるオーディエンス。満面の笑みですべてを出し切る3人。「この2時間を奇跡的な夜だと思ってる。この2時間を嘘じゃねえと思ってる!」と山口は叫び、"できっこないを やらなくちゃ"でロックンロールの無限の力を私たちに見せてくれた。本当に最高の2時間だった。
アンコールでは「相当忘れられない思い出だよね」と山口自身も思わず口にしていて、今日のライヴの凄さを物語っていた。そして、1曲目に用意してくれたのは今日のために披露しようと頑張って練習したというRCサクセションの"トランジスタ・ラジオ"のカバー。これには会場も大興奮状態で「♪シャラララ」の大合唱が沸き起こった。最後は"希望の道""あなたといきたい"の2曲で締めくくられ、山口は「やっぱり最後に俺たちが言いたいのは、この渋谷は宇宙一のライヴだったぜ!」と言い放ち、ぐしゃぐしゃの笑顔と全てを出し切った心地よい疲労感を残して3人はステージを後にした。
来年4月には『蕎麦屋の親父に聞きました!「サンボマスターの新曲はまだですか?」「さっき出た所です」ツアー2012!」と題したツアーも決定している。常に「宇宙一」を更新していく勢いで突き進んでいくサンボマスター。これからもずっとついていきたい、そう思える最高に泣けて、笑えて、元気が漲った夜だった。(阿部英理子)
セットリスト
1.青春狂騒曲
2.美しき人間の日々
3.世界をかえさせておくれよ
4.スローなディスコにしてくれ
5.きみはともしび
6.全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
7.光のロック
8.ベイビー優しい夜が来て
9.I Love You
10.君のキレイに気づいておくれ
11.君を守って 君を愛して
12.月に咲く花のようになるの
13.I love you & I need you ふくしま
14.ラブソング
15.歌声よおこれ
16.あの鐘を鳴らすのはあなた
17.そのぬくもりに用がある
18.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
19.できっこないを やらなくちゃ
アンコール
1.トランジスタ・ラジオ(RCサクセション カバー)
2.希望の道
3.あなたといきたい
サンボマスターのライヴは観るたびにいつも「宇宙一」のライヴだと思うけど、今日のライヴはその記憶を塗り替えるような圧倒的な凄さを放っていた。本日は『究極ベストツアー後半戦』のファイナル、SHIBUYA-AX。「SHIBUYA-AXがえらいことになってますよ。だから、俺はもうちょっとでっかいところでやればいいって言ったんだよ」と山口が始まる前につぶやいていたとおり、会場は前後左右すし詰め状態のパンパンに埋まった熱きオーディエンスで埋め尽くされ、鼻息荒く3人が鳴らすロックンロールを待っていた。チケットはもちろんソールドアウトしており、各地でチケットが全くとれない状態が続出していたようだ。
「みなさん、ツアーファイナル、ロックンロールの時間ですよ。準備いいかーーー!」と捲し立てる山口の絶叫とともに"青春狂騒曲″でライヴはスタート。ステージ上にアットランダムに並んだ数々のスポットライトが瞬く星のように光輝いて、オーディエンスの満面の笑顔を照らし出す。「おめーら、そんなもんじゃねーだろー!」という山口の強烈な煽りを受けて、フロアに歓喜の怒号が響き渡ると、"美しき人間の日々""世界をかえさせておくれよ"と3人は全力投球で魂の叫びをぶつけていった。
今年一番の寒さを真夏のような熱気で包み込んだかと思えば、ロマンス溢れる温かい空間で冬を彩る。山口が「俺だけにしか聞こえないこのロマンティックな4つ打ちが聞こえてんのか、みんなーーー!」と叫ぶと、近藤がサンプラーで鳴らした4つ打ちのビートに合わせてミラーボールが煌めき出し、"スローなディスコにしてくれ"でフロアはディスコ状態に!
サンボ流ロマンティック・ロックンロールはクリスマスを控えたこの時期に甘く切なく、そして暑苦しく響き渡るのだった。そして、「あんたがたの心の闇をぶっ潰してやるから、光を見んだよ!」と光速のスピードで突っ走っていった"光のロック"ではAX中の心の闇を閃光で照らし出していった。プレイ後に山口が「自分の声が聞こえなかったよ」と言うほど、フロアからの歌声は凄まじいものだった。ステージとフロアが互いに全力でぶつかりあっているからこそ、サンボのライヴは一瞬一瞬がこんなにも感動的なのだ。
「でっかい音出して申し訳ないですけど、次はアコースティックライヴやってもいいですか?」と山口が言うと、木内はカホーン、近藤はアコギを抱え、山口は「俺はロックンロールが好きなのでエレキです(笑)」とアコースティック編成で"ベイビー優しい夜が来て"を熱演する。続けて、"I Love You"で山口はギターを下し、スタンドマイクで伸びやかで美しい歌声を切々と響かせた。時折掠れる歌声や絶妙な間に宿った息を呑むような生々しさは圧巻だった。そんな迫真のプレイの余韻をかき消すように始まったのはDJ近藤洋一の時間!
サンプラーでリズムトラックを鳴らしながら、軽快にステップを踏んでノリノリの近藤。「何に気づいてほしいの?教えてくれ、君の口から」という山口の振りに答えた「君のキレイに気づいておくれーー!」という近藤の叫びから、"君のキレイに気づいておくれ"でリズミカルに煽動していった。
そして、今日のライヴでのハイライトと言ってもよいのがここからの時間だった。山口は「俺にできることは全国を回って福島の歌をうたうことだけだ。今日も歌っていいかい?」「何の知識もない、何の権力もない。だけど、俺はふるさとが好きだって歌いたいんだ。」「Love 東北! Love JAPAN! Love 福島! Love 君たち!」と語り叫び、"I love you & I need you ふくしま"を声にならない魂の叫びとともに全身全霊で歌い届けた。オーディエンスからの大合唱、想いの詰まった拳、「ふくしま」コール、すべての力が一つになっていく様に途轍もない力を感じた。その次に演奏されたのは、山口が「ふくしまの歌の後には歌えなかった、歌ったら亡くなった人のことを認めることになるから」と痛切に語っていた"ラブソング"だった。「亡くなってしまった人たちにまだありがとうって言ってないから、歌わなきゃいけない」と山口は言った。なんとも言えない胸の痛みがこみ上げてきて、ただただ山口の歌声と向き合うだけで精一杯だった。
しかし、その心の痛みはサンボマスターの3人がすべて食い尽くしてくれた。「悲しい歌をうたってる場合じゃないんだよ。悲しい歌の後は楽しい歌をうたって、笑うんだよ!」と再び笑顔を取り戻した"歌声よおこれ"、AXに集結した全員で希望の鐘を鳴らした"あの鐘を鳴らすのはあなた"と、何があっても負けない不屈のロックンロール精神をサンボマスターは貫き通した。そして、いよいよクライマックス。「さて、みなさんお待たせしました!今年一番の宇宙一、よろしくご唱和ください!」という山口の絶叫とともに"世界はそれを愛と呼ぶんだぜ"へ突入!もうどこまでも行けそうな気分になって歌い叫び飛び跳ねるオーディエンス。満面の笑みですべてを出し切る3人。「この2時間を奇跡的な夜だと思ってる。この2時間を嘘じゃねえと思ってる!」と山口は叫び、"できっこないを やらなくちゃ"でロックンロールの無限の力を私たちに見せてくれた。本当に最高の2時間だった。
アンコールでは「相当忘れられない思い出だよね」と山口自身も思わず口にしていて、今日のライヴの凄さを物語っていた。そして、1曲目に用意してくれたのは今日のために披露しようと頑張って練習したというRCサクセションの"トランジスタ・ラジオ"のカバー。これには会場も大興奮状態で「♪シャラララ」の大合唱が沸き起こった。最後は"希望の道""あなたといきたい"の2曲で締めくくられ、山口は「やっぱり最後に俺たちが言いたいのは、この渋谷は宇宙一のライヴだったぜ!」と言い放ち、ぐしゃぐしゃの笑顔と全てを出し切った心地よい疲労感を残して3人はステージを後にした。
来年4月には『蕎麦屋の親父に聞きました!「サンボマスターの新曲はまだですか?」「さっき出た所です」ツアー2012!」と題したツアーも決定している。常に「宇宙一」を更新していく勢いで突き進んでいくサンボマスター。これからもずっとついていきたい、そう思える最高に泣けて、笑えて、元気が漲った夜だった。(阿部英理子)
セットリスト
1.青春狂騒曲
2.美しき人間の日々
3.世界をかえさせておくれよ
4.スローなディスコにしてくれ
5.きみはともしび
6.全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
7.光のロック
8.ベイビー優しい夜が来て
9.I Love You
10.君のキレイに気づいておくれ
11.君を守って 君を愛して
12.月に咲く花のようになるの
13.I love you & I need you ふくしま
14.ラブソング
15.歌声よおこれ
16.あの鐘を鳴らすのはあなた
17.そのぬくもりに用がある
18.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
19.できっこないを やらなくちゃ
アンコール
1.トランジスタ・ラジオ(RCサクセション カバー)
2.希望の道
3.あなたといきたい
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