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 この物語はフィクションです。
 この物語の舞台はこの世界とよく似た別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家、領域その他固有名称で特定される全てのものとは、名称が同一であっても何の関係もありません。
間章・生徒会長選挙編
間章〔生徒会長選挙編〕3
 九月も月末週に入った。
 まだまだ残暑の厳しい日も多いが、めっきり秋らしい風を感じる日も少しずつ増えている。
「だからと言って、校内の雰囲気が少しも熱くならないのもまた、どうかとは思いますが」
「何のこと?」
 小首を傾げる真由美を、少しばかり目を細くして達也は見返した。
「会長選挙のことですよ」
 いよいよ明日は生徒総会、そして生徒会長選挙が行われる。
 真由美にとって、今日が生徒会長としてこの部屋で過ごす最後の日、の一日前、なのだが、少しも感傷的になっている様子は見られない。
 それと同時に、次期生徒会長の座を争う熱い論戦やアピール合戦も見られなかった。
「……まあ、高校の生徒会長選挙なんて、そんなに盛り上がるものでもないのかもしれませんが……」
 何の見返りもない、せいぜ内申書の点数が上がる程度の名誉職ならば、然して熱心になる必要はないだろう。
 しかし、と言いつつも、盛り上がらない理由が別にあることを達也は知っていた。
 立候補者が一人しかいない信任投票では、盛り上がりようがない。
 しかも、信任されない可能性はゼロに等しい。
 こうなった理由は、生徒会長の座に目の色を変える程の魅力はない、からでは、実はなかった。
 魔法科高校の生徒会長も、社会的に見れば高校の生徒自治組織のトップに過ぎない。
 権力も影響力も皆無に近い、名誉職。
 その点は理科高校や文科高校の生徒会と本質的に変わらない。
 しかし、その「名誉」のレベルが違った。
 少し考えれば分かる、当然とのことだ。
 魔法科高校は――国立魔法大学付属高校は、全国に九校しかないのだから。
 国立の高校が九校しかないのではなく、魔法の高等教育を行える高校が九校しかない。
 出来ない。
 それ以上増やそうとしても、教師の数を確保できないのである。
 一年度に九名しかいない、魔法科高校の生徒会長を務めた経歴を持つ魔法師。
 その肩書きは、魔法師の道を進む限り、生涯ついて回ると言っても過言ではない。
 非公式ながら、三等勲章に匹敵する名誉とさえ言われている。
 無論、魔法師の世界でトップに立つ人々は二等勲章、一等勲章を手にすることも例外ではないのだが、高校生の段階でこれだけの終身名誉を得られるとなれば、本来ならば目の色が変わってしかるべきなのだ。
 ――そう、本来ならば。
 実のところ、潜在的に生徒会長の座を望む生徒の数は少なくない、ではなくハッキリ言って、多い。
 では何故、立候補者が一人しかいないのか。
 そこには当然、人為的な力が働いていた。
 達也は未だに、(一見)罪の無い笑顔で小首を傾げている現(明日まで)生徒会長へ目を遣った。
 彼女は一体どういう顔で潜在的な対立候補に立候補を断念すべく「説得」して回ったのだろうか?
 もしかしてこの笑顔で丸め込んだのだろうか。
 それはそれで、まともに考え出すと怖い想像に思えた。
「ん〜、今回は残念ながらあーちゃん一人になっちゃったからねぇ……
 でも一応信任投票前の立会演説はあるんだし、明日はそれなりに盛り上がると思うけど」
 立候補者が一人では、正確に言えば「立会演説」ではないが、そんなつまらないツッコミをする趣味は、達也にも無かった。
 視線を部屋の隅に転じると、昼食もそこそこに、あずさが真剣な顔で原稿と睨めっこしながらブツブツと小声で呟いている。
 携帯端末のディスプレイではなく紙の原稿を出力して読み込んでいるあたり、確かに彼女は相当気合が入っているようだ。
 ちなみに「賞品」の飛行デバイスは、彼女が立候補を届け出た時点で既に渡してある。
 彼女のようなタイプは成功報酬で引っ張るよりも、報酬の先渡しでプレッシャーを与える方がテンションが長続きすると考えた結果だ。
 そしてその目論見通り、あずさは変な義務感の虜になって、対立候補もいないのに「頑張らなきゃ、頑張らなきゃ」と自分に鞭打ってここまで来ている。
 多分、演説が終わるまでこのテンションは維持されるだろう。
 こちらの方は、心配無用であるようだった。
「どちらかと言えば、問題は生徒総会の方でしょう」
 彼の心の声が聞こえた訳でもないだろうが、達也がまさに考えていたのと同じ事を鈴音が口にした。
 鈴音は卓上端末のディスプレイを先程から眺めている。(彼女は本日、昼食抜きのようだ)
 眼球が上下しているから、文書をスクロールして読んでいるのか、あるいは同じ文書を読み直してチェックしているのだろう。
「春の臨時集会であれだけ大見得を切ったからな。今更引っ込みはつかんだろう」
 弁当箱を閉じながら、摩利がそう指摘すると、
「引っ込めるつもりなんて全く無いけどね」
 同じく、後片付けをしながら真由美が答えた。
「もしかしたら暴走する方も出て来るのではないかと懸念していたのですが、杞憂だったようですね」
 全員にお茶を配りながら、深雪が冗談めかした笑顔でそう言うと、今度は
「闇討ちか? まあ我が校の生徒に、この女に挑むような身の程知らずはいないだろうさ」
 摩利が合いの手を入れる。
「うわっ、失礼しちゃうわ。女の子相手に、酷いと思わない?」
 達也に話を振った真由美の顔には、明らかに冗談だと分かる笑みが浮かんでいる。
 自分相手に魔法戦を挑むような相手はいない、少なくともそのような実力者なら闇討ちなどという卑劣な真似はしないと、真由美も確信しているのだろう。
「そうですね……用心に越したことは無いと思いますよ」
 しかし達也の回答は、彼女の想定と少し方向性が異なっていた。
「えっ?」
「会長は女の子、しかも美少女ですからね」
「そ、そう?」
 真由美は年上の余裕を装って受け流そうとしたが、余り上手く行っているとは言えなかった。
 目に動揺が表れている。
 一方、深雪はムッとした顔をしながらも、何故兄がいきなりそんなことを言い出したのか、不審に思っているという側面の方が強く窺われた。
「急にどうしたんだ、そんなことを言って?」
 不審に感じているのは深雪一人ではなかった。
 よりストレートに疑問をぶつけたのは摩利だった。
「急でしたか?
 一部の生徒が会長の提案をつぶそうと根回ししていて、それがほとんど功を奏していないという事情を踏まえてのお話だと思っていたのですが」
「……確かにそういう噂も耳にしているが……」
 摩利が困惑気味に回答したように、反対派は達也から見ても上手に立ち回っている。
 彼が摩利よりも確度の高い情報を掴んでいるのは、某職員によるまともな手段でない情報収集のおかげだった。
「反対派にとっても、残された日は今日と明日しかありませんからね。
 会長……
 今日は、一人にならない方がいいでしょう」
「アハハ、やだな、達也くん。チョッと大袈裟じゃない?」
 真由美は達也の発言を冗談として、軽く笑って済ませようとした。が、余り上手く行かなかった。
「何か掴んでいるのか……?」
 冗談にしようとした真由美に乗ってこなかった達也へ、眉を顰めて摩利が訊ねた。
「残念ながら。
 何か分かっているなら、寧ろ安心できるのですが」
「少し考え過ぎではありませんか?」
「ハハッ、そうですね」
 鈴音に杞憂ではとの指摘を受け、達也も軽く笑って頷いた。
 だが、それがポーズに過ぎないことは、誰の目にも明らかだった。

◇◆◇◆◇◆◇

「達也くん」
 昼休みも残り僅かとなり、教室へ戻ろうとしていた達也は、生徒会室を出てすぐの廊下で摩利に呼び止められた。
 達也と深雪が同時に振り向くと、どういう訳か摩利が軽く苦笑いを浮かべた。
 大方「仲の良い兄妹だ」とか考えたのだろうが、これこそ一々気にしていては限が無いことだ。
「何でしょうか?」
 達也はさっさと用事を済ませるべく、摩利に続きを促した。
「少し相談したいことがあるんだ。
 本部へ来てくれないか」
 彼女が「本部」と言う場合、訊き返すまでも無くそれは風紀委員会本部のことだ。
「今からですか?」
「手間は取らせない。
 ああ、そうだ。出来れば司波にも同席してもらえないだろうか」
 達也と深雪は意外感に打たれて顔を見合わせた。
 摩利が深雪に「用がある」とか「相談がある」とか言うのは、兄妹が記憶している限り初めてのことだった。
「深雪、時間は大丈夫か?」
「はい。四時限目は一般なので、多少遅れても問題はありません」
 一般とは「一般科目」の略。数学や語学などの、魔法学・魔法実技以外の科目のことで、端末を使った個別学習で行われる。
 ほぼ自習に等しいので、多少時間に遅れても、確かに問題は無い。
「お兄様はよろしいのですか?」
 達也の方は「能力測定」と呼ばれる実技の小テストだ。
 一科生の場合は教師が測定器を操作する(当然、アドバイスも行われる)が、二科生は生徒各自が勝手に測定器を操作して、時間内に合格点を出せば履修と認められる。
「――大丈夫です」
 深雪に頷き、摩利に承諾の回答を返すと、摩利は「すまんな」と言って二人を追い越し、階段へと足を進めた。
 委員会本部へ行くには、生徒会室を通った方が近いにも関らず。

◇◆◇◆◇◆◇

 半年前に比べると別人の様に、ならぬ別室の様に整理整頓された部屋で、半年前には無かった応接セットに、摩利と兄妹は向かい合わせで腰を下ろした。(ちなみにこの応接セットは部屋が物で埋まっていた為に倉庫行きとなっていた訊問、もとい、事情聴取席だったりする)
「――さて、君達兄妹のことだ。多分、予想できてると思うが」
 摩利の勿体を付けた前置きに、達也は「おやっ?」と思った。
 微妙な緊張が彼女から伝わって来るのだ。
 まさか、深雪がいるから、という理由でもあるまい。
 生徒会室では毎日のように顔を合わせている間柄だ。言葉を交わす機会は何故か少ないとはいえ、上級生の摩利の方が今更緊張しなければならない理由は無い。
「……相談したいのは、真由美のことだ。
 実はあたしも、さっき達也君が指摘したのと同じ懸念を抱いている」
「生徒会役員一科生限定の廃止案反対派の件ですか?」
 摩利が緊張している理由が見えぬまま、達也は相槌を打った。
「そうだ。
 ……あたしも、反対派が大人し過ぎる、と思う。
 春の集会では雰囲気に呑まれたのか、表立った反対者は見られなかったが、真由美の提案に心情的な反発を覚えているヤツは決して少なくない……はずだ。
 同じ一校生同士、こういう事は考えたくないんだが、平和的な裏工作が上手く行かずに、暴力的な裏工作に走るヤツが出て来るんじゃないか、ということは十分警戒しなければならないと思う」
「あり得る話ですね」
 そう考える事に躊躇も嫌悪も持たない達也は、暗い表情の摩利に向かい、あっさりと頷いた。
「真由美は――人が好いと言うかお嬢様育ちと言うか、そういう『人の悪意』に疎いところがある。窮鼠猫を噛む、という心情も、アイツには理解できないだろう」
 ふむ、と達也は心中、頷いた。
 摩利はどうやら、照れているのではないだろうか。
 この二人の憎まれ口の応酬は仲が良い証拠、というのは傍から見ていれば明々白々だから、摩利が真由美の心配をするのは達也からしてみれば「当たり前」のことなのだが、摩利はそう思っていないらしい。
「さっきも……達也くんの警告を、余り真面目に受け取っていなかったようだしな……
 真由美には『マルチスコープ』の特殊スキルがあるから、周囲を警戒していればアイツに闇討ちを喰らわせられるヤツなぞいないだろうが、あの能力はアクティブスキャンでパッシブな感知能力ではないから、警戒心が欠けていては宝の持ち腐れだ」
「……はあ」
 さて、それで摩利は、自分たちに何をさせたいのだろう、と達也は思った。
「あっ、と……すまん。埒の無い話になっているな……
 それで、だ。
 君たち二人に頼みたいのは……今日は真由美と一緒に下校してもらえないだろうか」
「――会長を家まで送って行け、ということですか?」
「いや、別に家まで送らなくても――いや、出来れば、そうしてもらえるとありがたい。
 学校にいる間は心配ない、と思う。教室では大勢の取り巻きに囲まれているし、生徒会室には市原も服部もいる。
 一番気になるのは下校時なんだ。
 あの女は何故か、学校の外で取り巻きを近づけようとしない」
「十師族の直系だからじゃないですか?」
 達也が何気なく挿んだ相槌に、摩利は「今まで考えたことが無かった」と表情で語った。
「……そういうものなのか?」
「さあ? 俺は十師族じゃないんで、単なる想像ですけど」
「いや、それが当たりかもしれんな……
 ……ともかく、真由美は大体一人で下校する。
 事故に見せかけるにしても、校内より簡単だ。
 こういう時期でなければ服部に声を掛けるんだが、アイツは生徒会が終わった後、部活連の方で色々と準備があるようだし……そういう事情で、達也くん、君に頼みたい。
 最強の対抗魔法『術式解体』を持つ君なら、どんな闇討ちを仕掛けられても大丈夫だろう?」
「お任せ下さい。兄でしたら間違いありません」
 深雪が妙に張り切った合いの手を入れた為に、「何故ご自分が一緒に下校しないんですか?」という意地の悪い達也の質問は不発に終わった。
 その代わり、と言っては何だが、達也はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべて摩利を見詰めた。
「な、何だ? 何か言いたいことがあるのか」
「いえ、別に」
「他意は無いぞ。
 今アイツに怪我をされると、色々と都合が悪いし、自分でもそれが分かっているクセに危なっかしいというか……
 別にあたしは、アイツのことを心配しているとかではなくてだな」
 言い訳に一所懸命な摩利を見て、「何というツンデレ」と達也が思った――かどうかは、定かでない。

◇◆◇◆◇◆◇

「――ご苦労様。これで明日の準備は万全ね?」
「はい。資料は全て整いました」
「会場のチェックも完了しています。
 ……会長、誠に心苦しいのですが……」
「ハイ、はんぞーくん、ご苦労様。
 こっちはもう上がっても構わないわよ」
「すみません、会長……」
「いいって。
 あーちゃんも明日に備えて、もう上がりにしなさい」
 心苦しそうに、それ以上に心残りな感じで部活連棟へ向かう服部に続いて、慌しく荷物を纏めて慌しく「失礼します」と挨拶をしたたあずさが、生徒会室を後にした。
「深雪さんも、今日はもういいわよ」
 二年生二人が帰っても(正確には、帰ったのはあずさだけだが)、何故か席を立とうとしない深雪にも、真由美は同じように声を掛けた、が、
「よろしければ、もう少しこちらで待たせて頂きたいのですが」
 深雪からは珍しい答えが返ってきた。
「達也くん?」
「ええ。
 電波の届かない所にいるみたいで、連絡がつかないものですから」
「電波の届かない所、って……」
「もしかしたら、地下資料庫ではありませんか?」
 首を捻った真由美に鈴音が耳打ちすると(と言っても、深雪にも聞こえる程度の声量だったが)、真由美は「ああ」という顔で頷いた。
「あの秘境ね……一旦あそこに篭ったら、確かに連絡つかなくなるわよねぇ……
 いいわよ。私はもう少し片付けてから帰るつもりだし。
 あっ、リンちゃんはもう帰っちゃって。今日は外せない用事があるのでしょう?」
「……ええ。すみません、会長」
「大丈夫。その分、明日働いてもらうから」
 真由美の、思いやりがあるのか無いのか、疑ってみたくなるような答えに微かな笑みを溢して、鈴音は無言で一礼した。
 二人きりになった生徒会室で、深雪と真由美は黙々とデスクに向かう。
 暫しの後、ちょうど真由美が大きく伸びをしたところで、関係者の(つまり入退室管理システムにIDカードが登録されている者の)入室を告げる電子音が鳴った。
 深雪が立ち上がって目を向ける。
「待たせたね」
 彼女の予想に違わず、入ってきたのは達也だった。
「いえ、そのようなことは」
 嬉しそうに、小走りで駆け寄った深雪を見て、真由美は少し呆れ気味の笑みを浮かべた。
「今更だけど……本当に仲が良いのね、貴方たち」
「おや、会長。お一人ですか?」
「スルーされちゃったか……別に良いけど。
 ええ、今日はもう、深雪さんと二人よ」
 真由美も今更、達也のふてぶてしさにペースを乱したりはしない。
 いつもの調子でサラッと切り替えた。
「手伝いましょうか?」
「あら、珍しい」
 しかし次の一言には、結構本気で驚いたようだ。
「雪でも降るんじゃないかしら」
「俺には無理ですが……妹には造作も無いことですよ。
 深雪、会長が雪をご所望だそうだ」
「承りました。
 それでは、如何ほどに致しましょうか、お兄様?」
「そうだなぁ……十センチも積もれば十分じゃないか?」
「待った! スト〜ップ! 雪なんて降らせなくて良いから!」
 最初は冗談だと思って放置していた真由美だったが、二人の表情が余りにも大真面目なので「万が一」という焦慮に駆られて、大慌てで止めに入った。
「まったく……おちおち冗談も言えないわ」
「当然冗談だったんですが?」
 にこりともニヤリとも笑わず釈明した達也へ、真由美は精一杯の不信感を込めた眼差しを向けた。が、全く効果が無いのを見て「やれやれ」とばかり肩を竦めた。
 彼女も随分、達也のスタイルに慣れたようだ。――お互い様、ではあるが。
「冗談はさておき」
 真由美がジロリと達也を()め上げたが、達也は当然のようにスルーした。
「そろそろ暗くなってきますし、作業が残っているならお手伝いしますが」
 カレンダーは既に秋分を過ぎている。「そろそろ暗くなる」というのは誇張でもなんでもなかった。
 とりあえず(?)達也が善意で言っているらしいと理解して(もしかしたら「誤解して」かもしれないが)、真由美も表情を和らげた。
「ん……私も、もう帰ることにするからいいわ。気を遣ってくれてアリガトね」
「そうですか」
「では会長、駅までご一緒しませんか?」
 達也があっさり引き下がった、と思ったら、今度は深雪のアプローチ。
 珍しいこともあるものね、と思いながらも、真由美の顔は自然に綻んでいた。
「みんなと一緒じゃないの?」
「こんな時間ですからね。
 『地下』の探索に時間が掛かることは最初から分かっていましたし、あいつらには先に帰ってもらいました」
「……そういえば資料庫で何を探していたの?」
「『賢者の石』に関する古式魔法の文献を探していました。データベース化された文献の中には目ぼしい物が無かったものですから」
「……随分マニアック、いえ、専門的な調べ物ね」
「才能の不足を道具で補えないか、と思いまして」
「そ、そう……?」
 思い掛けなく深刻な動機に、真由美は怯んでしまった。
「……って、『術式解体』を使える魔法師が何言ってんだか。
 あの魔法が使えるだけでも、警察とか国防軍とかあちこちから引っ張りダコでしょ」
 だがすぐに憮然とした表情で頬を膨らませた。
 達也が自分の魔法の才能に対して屈折した思いを抱えているのは確かだ、と真由美は知っている。だがそれは、一般的な「劣等感」とは少し趣を異にするもので、「劣等生」というレッテルによって色々と機会(チャンス)を制限される社会制度にうんざりしているだけだ、ということも知っている。
 それをついつい忘れて、彼に当たり前の同情をしてしまった自分が、何だか手玉に取られたような気がして真由美は少しばかり腹立たしかった。
 国際基準に基づく魔法師ランクは高位を望めないかもしれないが、社会的な(職業的な)需要を考えれば、特定分野に傑出した技能を持つ彼のような人材の方が引く手数多(あまた)なのだ。
「達也くんさ、あんまり自分のことを『劣等生』だって強調しない方が良いと思うよ。
 キミは単なる成績優秀者なんて目じゃない実績を残しているんだから……
 そんな調子だと、一科生からも二科生からも、両方から嫉妬されちゃうことにもなりかねないわよ」
「強調しているつもりは無いんですが……」
 達也としては、自分から「劣等生」と名乗るような自虐趣味を持ち合わせているつもりも発揮しているつもりも全く無かった。今も調べ物の理由を(間接的に)訊かれたから答えただけだ。――もっとも、「賢者の石」について調べている本当の理由は「ブースター」絡みであって才能不足云々は真意を隠すためのもっともらしい偽りなのだが。
 それはともかくとして、自分から「劣等生」だと強調しているつもりは、達也には無い。
 だが、
「……いえ、気をつけます」
 結局彼は、こう答えた。
 真由美が心配してくれているのだ、と解らない達也ではなかった。

◇◆◇◆◇◆◇

 校門から駅へ、普段はレオやエリカたちと連れ立って帰る一本道を、真由美と兄妹の三人で歩く。
 深雪が少し緊張気味なのは、まあ理解できるとして、真由美まで緊張気味なのは微笑ましいと言うべきだろうか。
 鞄を身体の前に両手で持ち、目を伏せ気味にして黙りこくったまま歩く姿は「何処のお嬢様?」と訊きたくなる趣があった。――実際に真由美はお嬢様なのだが。
 達也も自分から話題を提供するほうではない。特に「他愛も無いお喋り」は苦手分野だ。加えて今は、反対派の襲撃を警戒中。
 三人はほとんど会話の無いまま、駅までの道程の七割を消化しようとしていた。
「……ねえ、達也くん」
「何でしょう」
 そういう状態だったから、真由美にいきなり話し掛けられた時には、何事かと達也も少し身構えてしまった。
「本当は私が帰るのを、二人で待っていてくれたんじゃないの?」
 しかし、身構えていても、この指摘には驚かされてしまった。
 咄嗟に応えを返せない達也に頓着せず、独り言のように、真由美は言葉を続けた。
「摩利に何か言われたんじゃない?
 反対派が襲ってくるかもしれないから、家まで送ってやってくれ、とか」
「……よくお分かりですね、会長」
 正直に答えたのは、達也ではなく、深雪だった。
 的のど真ん中を射抜いた推測に誤魔化し切れないと悟り、せめて「達也が白状したのではない」というアリバイ作り(?)で口を挿んだのだった。
「大丈夫よ」
 真由美は深雪に向かって、クスリと笑って見せた。
「貴方達から真相を聞き出したなんて、摩利には言わないから」
 何から何まですっかり見透かされて、深雪は恥ずかしげに俯いた。
「しかし何故、そんな事を?」
「家までついて来る必要は無い、って分かってもらう為よ。
 あっ、勘違いしないでね。
 迷惑、とかじゃないから」
 達也は無言で頷いて、続きを促した。
「大方、私が一人で登下校しているのを無用心だ、って摩利は言ったんじゃない?
 でも私がみんなと一緒に帰らないのは、もしもの時に巻き込まない為の用心なのよ」
「それは……今回に限らず、ということですか?」
「ええ。
 自分で言うのもなんだけど、私って『お嬢様』だから営利目的とか政治目的とかで狙われやすいのよね」
 お嬢様、という言葉には自慢げな響きが欠片も無く、ただ自嘲的な色合いだけが込められていた。
「七草家は十師族結成当時から一度も枠外に落ちたことの無い名門ですから」
 言外に「仕方がありません」と達也に言われ、真由美は苦い微笑を浮かべた。
「……まっ、そーゆーこと。
 だから私は常に用心を怠らないよう教育されているし、何時でも魔法を発動できるように準備しているの」
 左手を挙げ、袖をずらして顕わにした真由美のCADは、休止モードではなく待機モードになっていた。
「それにボディガードもついているし」
「えっ、そうなんですか?」
 深雪がキョロキョロと左右を見回したが、彼女にはボディガードらしき人影を見つけられなかった。
「……駅で待たせているのよ。
 通学路でボディガードを引き連れているのは、流石に恥ずかしいから」
「ああ、だから『家までついて来る必要は無い』なんですね……駅に着いたら、ボディガードが控えているから」
「そのとおり、よ」
「しかし何故、そんな事を教えてくれるんですか?」
 詮の無い問いと分かっていたが、達也は好奇心を抑え切れなかった。
 今の話が本当なら(嘘をつく理由は見当たらないが)、摩利も知らない個人的な事情であるはずだ。
「ウ〜ン……達也くんと、深雪さんと、二人と一緒に帰りたかったから、かな?」
 しかし、少しはにかんで答える真由美の表情を見て、達也は「拙ったかな……」という予感を覚えた。
「わたしもですか?」
 兄と予感を共有せず、小首を傾げた深雪に、真由美は「姉」のような笑みを向けた。
「ええ。
 ――去年の秋に生徒会長になって、最初の半年もそれなりに充実していたけど、この半年は私にとって本当に充実した時間だったから」
 そして達也へ眼差しを移す。
「そして、それはきっと、二人のお陰だから」
「……過大評価だと思いますが」
 達也が無表情に反論すると、真由美は余裕タップリの笑顔でクスッと笑った。
「最近分かって来たんだけど……
 達也くんって、照れ屋さんよね」
 能面のような硬い無表情で絶句した達也を見て、真由美は「堪え切れない」とばかりコロコロと笑い出した。
「そ、そーゆーところは歳相応なのかな?
 時々十歳くらい年齢を誤魔化してるんじゃないかって感じることもあったんだけど」
 真由美以外の知り合いにも、似たような年齢詐称疑惑を度々投げ掛けられている達也は、憮然とした顔で黙り込むことしか出来なかった。
 涙が滲んでいた――笑い過ぎで、だ――目を人差し指で拭い、真由美は兄妹に晴々とした顔を向けた。
「……あーちゃんも、はんぞーくんも、とっても良い子達だけど、貴方達兄妹はきっと、私の高校時代一番の思い出になる素敵な後輩だから」
 飛び切りの笑顔で微笑まれて、深雪も絶句してしまうことになった。
 耳まで赤くなっているところが、兄とは異なっていたが。

◇◆◇◆◇◆◇

 司波家は、と言っても父親は後妻の家に入り浸りだから(愛人ではなく正式に籍を入れているのだから一緒に暮らせば良さそうなものなのだが)、実質的に達也と深雪の、兄妹の家は、個人の住宅としてはかなり大きな方だ。
 ただそれでも、御殿のような北山邸や七草邸(達也も深雪も、どちらもまだ実際に見たことは無い)に比べれば「個人住宅」のレベルでしかない。
 もっとも、ただの個人住宅とも言えない。
 地下には、大学の研究室レベルの魔法工学研究施設が埋まっている。(と表現すると何やら秘密基地っぽいが、単に一階と同じ床面積の地下室を丸々ラボに改造しただけだ)
 その地下研究室からリビングに上がって来た達也は、珍しく疲れた様子で、ソファに深々と身体を埋めた。
 親指と中指で両のこめかみを強く揉んで、一回、二回と頭を振る。
 そのまま天井へ目を向けて、思考の制御を手放す。
 湧き上がってきた雑念は、今日の夕方の記憶。
 真由美を駅まで送って行って、彼女から紹介されたボディガードのこと。
 真由美の護衛は、意外のことに男性だった。
 年頃の女の子の護衛だから女性のボディガードに違いないと思い込んでいた達也は、正直、かなり驚いた。
 確かに五十代も半ばを過ぎている老紳士なら、世間体を心配する必要は無いのかもしれないが。
 その初老の紳士の印象は、ボディガードと言うよりは執事、執事と言うよりは「爺や」だった。
 ただ背筋はピンと伸びており、身体も細身ながら引き締まっていて、十分「現役」であることは一目見ただけで解った。
 その特徴的な身のこなしは、礼儀正しさのオブラートに包まれていたが、軍務経験者、しかもかなりの長期間に亘って軍に籍を置き、制服組としてそれなりの地位にあったことを窺わせた。
 ただ、それ自体は珍しいことでもない。
 前世紀に劣らぬ戦乱の時代を経験した二十一世紀末、軍隊経験者だからといって差別するような愚か者は自分の方が社会から排除される。
 元軍人の魔法師がその経験と技能を活かして良家のボディガードに収まったとしても、気になるような点は何処にも無い。
 達也の意識に引っかかっているのは、そのボディガードの名前、正確には、苗字だった。
「お兄様、まだお休みにならないのですか?」
 声を辿って目を向けると、リビングの入り口にピンクのパジャマを着た深雪が立っていた。
「深雪の方こそ、まだ起きていたのかい?
 明日……いや、もう今日か。司会もしなければならないんだろ?」
 深雪は今日の立会演説会の進行役を務めることになっている。これは例年、一年生の生徒会役員に与えられる仕事だ。
「少し喉が渇いてしまって……」
 だから早く寝なさい、と言外に叱られた、と感じた深雪は、恐る恐る言い訳めいた台詞を口にして、上目遣いに達也の顔色を窺った。
「それじゃあ仕方ないね」
 何処までも妹に甘い達也は、苦笑い気味に笑って頷いた。
 途端にパアッと顔を輝かせて、小走りに近いスピードで、深雪が達也の隣にやって来た。
 目で問いかける妹に、目で頷く兄。
 深雪は嬉しそうに笑って、達也の隣に座った。
 そろそろ朝晩は冷え込む時期だが、深雪のパジャマはまだ涼しげな夏用だ。半袖七分丈で、薄い生地は薄っすらと身体の線を浮かび上がらせている。
 夜更けに男と二人きりでいる格好ではなかったが、達也は敢えて何も言わなかった。
「何を考えていらしたのですか?」
 じゃれ付くように顔を寄せて、深雪がそう訊ねて来た。
 この無邪気な笑顔には些か不似合いな重さの話題だという自覚はあったが、少なからず疲れていた所為で、達也はつい、正直に答えてしまった。
「うん……七草先輩のボディガードのことなんだけど、一寸気になってね……」
 達也がしまった、と思うより早く、深雪の顔からスッと笑みが消えた。
「名倉さん、というお名前でしたね」
 真由美はあの老紳士を「名倉三郎」と紹介した。
「お兄様がお気になさるということは、もしや……『数字落ち(エクストラ)』なのですか……?」
 一言で考えていたことを見抜かれてしまって、達也は苦笑いを浮かべた。
 深雪がその可能性を考えていなかったのなら、気づかせなくてもよかったことだ。
 だが気づいてしまった以上、曖昧なままにしておく訳には行かないだろう、と達也は思った。
「まさか、と思うんだけどね……十師族が、跡取りではないにしても直系の子供の護衛を任せる遣い手だ。
 俺達のように仮の姓が与えられているのでないとしたら、『数字落ち』の可能性は否定できないと思う」
「四葉以外に仮の苗字を名乗らせるしきたりがある家は、無かったと思いますが……」
「それも分からない。
 四葉のしきたりを他家が知らないのと同じように、他の九家、十八家を含めれば二十七家に、四葉の知らない風習を持つ家があるかもしれない」
「しかし……それこそ叔母上ならともかく、何事にも体面を重んじる七草が、長女の護衛という本家にごく近いところで『数字落ち』を雇い入れるでしょうか?」
「体面を重んじる七草だからこそ、差別的な処遇をしないという建前論を重んじるのかもしれないよ」
「……なるほど……そういう考え方もあるのですね……」
 数字落ち――エクストラ・ナンバーズ、略して「エクストラ」とも呼ばれる、「数字」を剥奪された魔法師の一族。
 剥奪の理由は、時に反逆の罪、時に重大な任務失敗、時に「無能」の故。
 かつて、魔法師が兵器であり実験体(サンプル)であった頃、「成功例」としてナンバーを与えられた魔法師が、「成功例」に相応しい成果を上げられなかった為に捺された烙印、それが「数字落ち」だ。
 今では「数字落ち」という名称自体、公式に使用することは禁止されている。「数字落ち」であることを理由に差別的取扱いをすることは、魔法師のコミュニティにおいて重大な非違行為とされている。
 しかし魔法科高校で二科生に対する差別がこれまで根絶されずに続いて来たように、それをもっと拡大、深刻化した形で、「数字落ち」に対する差別は隠然と魔法師の社会に居座り続けている。
 達也たちの世代であれば、自分の家系が「数字落ち」であることを知らない者の方が、多分、多いだろう。親が隠してしまうからだ。
 それ程根深く、彼らを「失敗作」「欠陥品」と見做す偏見は、魔法師の無意識に刷り込まれている。
 だから、名倉が「七倉」から落ちた家系の出身であったとしたなら、その彼を娘のボディガードに採用した七草家当主の意図が達也は気になるのだった。

◇◆◇◆◇◆◇

 時間はやや前後する。
 日付が変わるまでまだ三時間ばかり残した時刻、掛け値無しに「大邸宅」と表現して差し支えの無い七草本宅の、庶民感覚から少しばかりかけ離れた豪華な浴室の豪華な浴槽にゆったりと身を沈めて、真由美はお湯の中の自分の身体を見下ろし軽く溜息をついた。

――貧弱なプロポーションだとは思わない。
――身長は結局、中学三年で止まってしまったが、妹たちも同じように小柄なので、これは遺伝的なものと諦めるしかない。

 チャプン、と音を立てて、真由美は片腕と片脚をお湯の外に伸ばしてみた。

――背が低い割には手足が長いとブティックでもエステサロンでもよく言われる。

 腕と脚を湯舟に戻して、そっと乳房に手を当てる。

――胸も身長の割りに大きいと言われるし、ウエストはどんな服でも苦労したことは無い。
――割とイケてる、と自分では思う。
――でも、「彼女」を前にすると、どんなに意識すまいと思っても、自信が揺らいでしまう。
――彼女に会うまで、あんな美少女は見たことが無かった。
――腕も脚も、不健康に見えないギリギリのバランスで、すんなりと長く細い。
――ウエストは折れそうに細く締まり、胸と腰周りは既に十分女らしい曲線を描いている。
――何より、ビックリするほど精確に、彼女の身体は左右が対称だ。そもそも内臓の配置が左右非対称なのだから、人体が完全に左右対称になるなど、外見上もあり得ないのに。
――その所為か彼女は、生身の人間と思えない時もある。
――女の自分でも見惚れてしまうのだ。
――彼女を妹に持つ男の子は、他の女の子が色褪せて見えるのではないか、と思えてしまう。
――その、彼女の兄は。

 真由美はまたしても、意識しないままに溜息をついた。

――彼は、本当に彼女と血のつながりがあるのかと疑ってしまうくらい、平凡な外見をしている。
――悪くは無い。
――だが精々、「まあまあね」程度。
――しかしその中身は、平凡には程遠い。
――優秀、と言うより、規格外。
――今の魔法師評価基準は、手間と時間をタップリ掛けて、世界から集められた学者が知恵を絞りあって作り上げたもの。
――彼の存在は、そのシステムに喧嘩を売っている。
――国際評価基準では、どんなに高く見積もってもCランク。
――それなのに、自分たちの前で積み上げる実績は、Aランク魔法師を凌駕するもの。
――職員室が頭を悩ますはずだ。
――何十年も続いた制度を根本的に組み替えて、「魔法科」と「魔法工学科」を新設しようというプランも、かなり現実味を帯びていると聞く。

 真由美は苦笑いを浮かべて首を横に振った。

――それでも、彼の存在には対応しきれない。
――知能と知識が優れているだけならば、ここまで混乱させられることは無いのだから。
――高校一年生にして、使い手がほとんどいない最強の対抗魔法を使いこなし。
――クリティカルなはずの魔法を身に受けて、平然と戦闘を続行する。
――テロリストを潰したのも、事実上、彼一人の力だとも聞いている。
――「魔法力」と「魔法戦闘力」のアンバランス。
――いや、知識だけでも、単なるカリキュラム変更で対応できるかどうか。
――今日、名倉に引き会わせたのは、彼には黙っていたが、一種のテストだった。
――「ナクラ」という名前とその外見から、気付くかどうかのテスト。
――彼に名倉を紹介した時、一瞬、ほんの一瞬だけ、彼の目に動揺が走ったのを、全注意力を傾けていたお陰で見逃さなかった。
――彼は「ナクラ」の意味に気付いていた。
――その意味するところは、自分や十文字と同じくらい、現代魔法の「闇」に通じているということ。
――彼はただの魔法師ではない。
――名も無き家系の魔法師ではない。
――「シバ」達也。司波。シ波。四波。
――もしかしたら、彼もまた、「数字落ち」なのかもしれない……

 のぼせかけた頭で、真由美はそう考えた。
 お、終わらなかった……orz
 申し訳ありません。
 プロットのミスで間章全三話予定が全四話になってしまいました。
 「生徒会長選挙編」は来週までお付き合い下さい。
 また、頂戴したご感想は明日より順次お返事させていただきたいと思いますので、まことに勝手ですが少々お待ち下さい。


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